羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
17章:注がれる愛が重すぎる(4)
自分の決意に後悔し始めそうな私に、
「とりあえず今日早急に婚姻届けを出そう」
と先輩は言う。
「……ええっと?」
「証人欄ももう記入してもらってるから」
ベッドサイドのチェストから取り出した婚姻届けには、もうちゃっかり先輩の名前だけでなく、先輩のお父さんと私のお父さんの名前まで証人欄に署名されていた。
「いつの間に……」
(これいつ用意してたの )
焦る私に、
「ちょうどよかったねぇ。今から出しに行こう」
と先輩が笑う。
「え? 今日土曜だから役所って開いてないんじゃ」
「婚姻届けは出せるんだよ? 時間外窓口あるし」
「そ、そうなんですか……知りませんでした」
私が言うと、先輩はふふ、と笑って、私をテーブルまで運び、ペンを渡した。
「私の印鑑は」
「もう借りてきてる」
「……いつの間に」
「弁護士って言うのは、前もってちゃんと準備しておくものなんだよ。機会を逃さないように」
あんな告白をした手前、やっぱり無理です、とも言えず。
実際そんな空気には先輩がしてくれなくて、私は、ゆっくり婚姻届けに署名をした。
「うん、間違いないね。よし、今から出しに行こう」
「えーっと」
「はい、行くよ」
先輩の勢いに押されて役所に行くと、本当に「時間外受付窓口」というものがあって、そこにいた職員さんに本当に提出できた。その職員さんは私たちを見ると、おめでとうございます、と微笑んでくれて、私はその人の笑顔と言葉に、本当に結婚したのだと実感した。
そしてそのまま流れるように、また先輩の家に押し戻された。
先輩は家に帰るなり、私の額に当たり前のようにキスを落とす。
それに私もくすぐったくて笑ってしまった。
「これからずっと一緒にいられるね」
「そうですね」
ふふ、と笑うと、先輩も楽しそうに笑ってくれる。
やっぱりその笑顔好きだなぁと思ったとき。
「最初から5日間ずっと一緒にいられるしねぇ」
と先輩は言った。
「5日……?」
「今日からGW、5連休」
「……ソウイエバソウダッタ」
すっかり忘れていたけど、世間はGWだ。
私はなんとなく嫌な予感がして、
「えーっと、いったん帰って。GW明けに結婚生活はじめませんか?」
と言うと、先輩は不機嫌そうに眉を寄せて、
「まさか」
と言い放った。
「うっ……」
「俺が、こんなチャンスに引く男だと思う?」
「お、思いません……」
泣きそうになった私に、
「そういえばみゆ、俺の愛が重くても諦めるって言ってくれたんだよね」
と先輩は微笑んだ。
それはまるで悪魔のような笑みで、私は背中からゾワゾワと寒気が走っていた。
あれ、なんでだろう。
新婚って本当はもっと嬉しいものなんじゃ……。そんな疑問が頭の中を駆け巡る。
すると先輩は私の身体をぎゅうと抱きしめると、
「あのね、みゆ。みゆに言っておきたいことがあるんだ」
と優しい声で言った。
(デジャブ?)
「えっと、そのフレーズ、前も聞いたことあります。もうないでしょ! さすがにないでしょ!」
先輩の告白の多くは、ロクなものではない。
私がこれまで聞いた告白は、飛び蹴りから12年間不能だったことと、鳳家の次男だったことだ。まぁ、あれ以上に驚くことなんてないんだろうけど。
すると先輩は、言おうか悩んでたんだけど、と呟き、心底申し訳なさそうに、
「実は俺ね、性欲がめっぽう強いほうみたいなんだ」
と言った。
(セイヨクガメッポウツヨイ……?)
「……もうその先は聞きたくないんですけど」
「みゆにしか反応しないのに、みゆは大変だろうと思って、これまではできる限り抑えてきてたんだよ」
「抑えてた? あれで?」
えっと、ちょっと待って。整理させて。それに驚いたわ!
たしか、私、先輩のせいで3日ほとんど眠れなかったことがあるはず。
「でもね、もう結婚したし、ちゃんと知ってもらおうと思って」
「……ちゃんとって……」
「みゆ言ってくれたよね? 俺とずっと一緒にいたいって」
「そう言う意味ではないんですけど」
「大丈夫。みゆのことも、子どものことも、一生大事にするから」
「……子どもって……! んんんんっ!」
当たり前みたいに、ベッドに押し倒されて、口の中に先輩の舌が入り込む。顔が熱くなって泣きそうになって、息が苦しくなってもやめてくれない先輩に怒って胸を押しても、その手を取られてベッドに縫い付けられて、形勢は悪くなる一方だった。
そのまま歯列も口内も全部舐めとり、唇を離してあふれる唾液をも舐めとったあと、先輩は息を漏らす。
「やっぱりみゆの中、気持ちいい……」
(言い方――――――――!)
泣きそうになる私をみて妖艶に笑った先輩は、確かにそれまで以上に濃密でやたらねちっこい5日間を私にプレゼントしたのだった。
愛してる、と何度もささやいて注がれる先輩の愛は重すぎて……
私は結婚初日からこの結婚を後悔し始めていた。
「とりあえず今日早急に婚姻届けを出そう」
と先輩は言う。
「……ええっと?」
「証人欄ももう記入してもらってるから」
ベッドサイドのチェストから取り出した婚姻届けには、もうちゃっかり先輩の名前だけでなく、先輩のお父さんと私のお父さんの名前まで証人欄に署名されていた。
「いつの間に……」
(これいつ用意してたの )
焦る私に、
「ちょうどよかったねぇ。今から出しに行こう」
と先輩が笑う。
「え? 今日土曜だから役所って開いてないんじゃ」
「婚姻届けは出せるんだよ? 時間外窓口あるし」
「そ、そうなんですか……知りませんでした」
私が言うと、先輩はふふ、と笑って、私をテーブルまで運び、ペンを渡した。
「私の印鑑は」
「もう借りてきてる」
「……いつの間に」
「弁護士って言うのは、前もってちゃんと準備しておくものなんだよ。機会を逃さないように」
あんな告白をした手前、やっぱり無理です、とも言えず。
実際そんな空気には先輩がしてくれなくて、私は、ゆっくり婚姻届けに署名をした。
「うん、間違いないね。よし、今から出しに行こう」
「えーっと」
「はい、行くよ」
先輩の勢いに押されて役所に行くと、本当に「時間外受付窓口」というものがあって、そこにいた職員さんに本当に提出できた。その職員さんは私たちを見ると、おめでとうございます、と微笑んでくれて、私はその人の笑顔と言葉に、本当に結婚したのだと実感した。
そしてそのまま流れるように、また先輩の家に押し戻された。
先輩は家に帰るなり、私の額に当たり前のようにキスを落とす。
それに私もくすぐったくて笑ってしまった。
「これからずっと一緒にいられるね」
「そうですね」
ふふ、と笑うと、先輩も楽しそうに笑ってくれる。
やっぱりその笑顔好きだなぁと思ったとき。
「最初から5日間ずっと一緒にいられるしねぇ」
と先輩は言った。
「5日……?」
「今日からGW、5連休」
「……ソウイエバソウダッタ」
すっかり忘れていたけど、世間はGWだ。
私はなんとなく嫌な予感がして、
「えーっと、いったん帰って。GW明けに結婚生活はじめませんか?」
と言うと、先輩は不機嫌そうに眉を寄せて、
「まさか」
と言い放った。
「うっ……」
「俺が、こんなチャンスに引く男だと思う?」
「お、思いません……」
泣きそうになった私に、
「そういえばみゆ、俺の愛が重くても諦めるって言ってくれたんだよね」
と先輩は微笑んだ。
それはまるで悪魔のような笑みで、私は背中からゾワゾワと寒気が走っていた。
あれ、なんでだろう。
新婚って本当はもっと嬉しいものなんじゃ……。そんな疑問が頭の中を駆け巡る。
すると先輩は私の身体をぎゅうと抱きしめると、
「あのね、みゆ。みゆに言っておきたいことがあるんだ」
と優しい声で言った。
(デジャブ?)
「えっと、そのフレーズ、前も聞いたことあります。もうないでしょ! さすがにないでしょ!」
先輩の告白の多くは、ロクなものではない。
私がこれまで聞いた告白は、飛び蹴りから12年間不能だったことと、鳳家の次男だったことだ。まぁ、あれ以上に驚くことなんてないんだろうけど。
すると先輩は、言おうか悩んでたんだけど、と呟き、心底申し訳なさそうに、
「実は俺ね、性欲がめっぽう強いほうみたいなんだ」
と言った。
(セイヨクガメッポウツヨイ……?)
「……もうその先は聞きたくないんですけど」
「みゆにしか反応しないのに、みゆは大変だろうと思って、これまではできる限り抑えてきてたんだよ」
「抑えてた? あれで?」
えっと、ちょっと待って。整理させて。それに驚いたわ!
たしか、私、先輩のせいで3日ほとんど眠れなかったことがあるはず。
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「……ちゃんとって……」
「みゆ言ってくれたよね? 俺とずっと一緒にいたいって」
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「大丈夫。みゆのことも、子どものことも、一生大事にするから」
「……子どもって……! んんんんっ!」
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