羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい

13章:不安と喧嘩と仲直り(5)

 先輩はいつだって優しくて、時々意地悪だ。

(『普通』って言葉、逆手に取らないでよ!)

「うぅううううう!」
「こら、唇噛まない」
「だって」
「うん」

 本当は謝るのは私の方なのに……。

「ごめんなさい、酷い事言った」
「……なにが?」
「普通じゃないって……先輩のこと」

 ひどい言葉を言っても、先輩相手だからって甘えてたのかもしれない。
 後悔する私に、先輩は笑った。

「まぁ、みゆへの愛情の重さは人一倍だし、ちょっとおかしいのは自覚してるよ」

 そして続ける。
「でも、これが俺の『普通』なんだ」
「……」

「みゆのこと独占したい、みゆのこと全部愛したい、みゆとずっと一緒にいたい」

 先輩はまっすぐ私を見て、目を細める。

「みゆはどう思ってる?」

 私は意を決すると、先輩の目を見つめ返した。


「私も先輩といたい」
「うん」

「……それに、普通に仲直りのキスもしたい」


 そう言うと、先輩は少し驚いた顔をした後、すごく嬉しそうに笑った。
 そしてその日は、抱き合えない代わりに、何度も何度もキスを交わした夜になった。

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