羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
13章:不安と喧嘩と仲直り(1)
社長室から逃げた先の廊下で呆然としていると、副社長があちらから秘書の女性とともに歩いてきた。
「……柊さん?」
泣き顔の私の顔を見て、副社長が足を止め、その顔色が一瞬で変わる。
そして私の腕を掴むと、
「もしかして、僕のこと、何か聞いた?」
と私の耳元で言った。思わず自分の顔が青くなるのがわかった。
そんな私を見た副社長は、
「ごめん、ちょっとだけ二人にして」
と秘書に告げると、そのまま私を副社長室に押し込むように入れた。
部屋に入ると、副社長が申し訳なさそうに眉を下げ、頭をまっすぐと下に下げる。
「ごめん、僕のせいだ」
「イヤ、それは違います!」
それは絶対に違う。社長が言ったことがホントだったとして、副社長が謝ることじゃない。なのに副社長は心底申し訳なさそうに頭を下げたままだった。
「お願いですから顔を上げてください」
私が言うと、副社長は、でも、と呟き、
「僕もね、あれだけずっと健人が好きだった人と結ばれて、もし子どもができて、その子が僕の跡を継いでくれるなら、僕に子どもができなくても良いかなぁって思っちゃったんだ」
とはっきりと言う。
私はあまり副社長のこと知っているわけじゃないけど、前に話した時とか、先輩の話とかも合わせても、副社長は悪い人には思えない。むしろ……絶対にいい人だ。
私もできることなら、この人の力になれればいいのに、とは思う。でも子どものことは……今言われてもどうすることもしてあげられないのだ。
そんな私に、副社長はもう一度頭を下げると、
「これって、柊さんにとっては失礼な話だったよね……。本当にごめん。申し訳ない」
と言って続けた。「僕が言うのもなんだけど、そういうの全部抜きにしてさ……。健人とずっと一緒にいたいかどうかで、最後は決めたらいいんだよ」
と優しい声で言う。
「そんなこと言われても……」
「健人のことは、好き?」
そう問われて、どきりとした。
でも、その答えはもう決まってた。いつの間にか、それだけは迷いようもない事実になってる。
「好きです」
そう言い切った私を見て、副社長は目を細めると、よかった、と笑う。
「健人はね。『キミといる未来』以外の可能性を、1㎜も考えてもいないんだよ」
せめてだれかが大反対してくれたらちょっとはこの勢いが止まれるかもしれないのに……。でも、それは誰もしてくれない。うちの父ですら、まったくだめだ。
なんだか、急ピッチで周りを固められていき、結婚を推し進められていくようで……私は不安になってきていた。
みんなが祝福していて、あとは私が頷くだけなんて……。
なんでこうも舞台がきっちりと用意されているのだろう……。
と思っても、その原因はどう考えても、私なんかに固執する先輩のせいなんだろうけど……。
次の日の夜、先輩が戻ってきて会える日だったけど、私はなんとも複雑な気持ちだった。
先輩と顔を合わせて、自分がどう思うか、想像もできなかった。
「……柊さん?」
泣き顔の私の顔を見て、副社長が足を止め、その顔色が一瞬で変わる。
そして私の腕を掴むと、
「もしかして、僕のこと、何か聞いた?」
と私の耳元で言った。思わず自分の顔が青くなるのがわかった。
そんな私を見た副社長は、
「ごめん、ちょっとだけ二人にして」
と秘書に告げると、そのまま私を副社長室に押し込むように入れた。
部屋に入ると、副社長が申し訳なさそうに眉を下げ、頭をまっすぐと下に下げる。
「ごめん、僕のせいだ」
「イヤ、それは違います!」
それは絶対に違う。社長が言ったことがホントだったとして、副社長が謝ることじゃない。なのに副社長は心底申し訳なさそうに頭を下げたままだった。
「お願いですから顔を上げてください」
私が言うと、副社長は、でも、と呟き、
「僕もね、あれだけずっと健人が好きだった人と結ばれて、もし子どもができて、その子が僕の跡を継いでくれるなら、僕に子どもができなくても良いかなぁって思っちゃったんだ」
とはっきりと言う。
私はあまり副社長のこと知っているわけじゃないけど、前に話した時とか、先輩の話とかも合わせても、副社長は悪い人には思えない。むしろ……絶対にいい人だ。
私もできることなら、この人の力になれればいいのに、とは思う。でも子どものことは……今言われてもどうすることもしてあげられないのだ。
そんな私に、副社長はもう一度頭を下げると、
「これって、柊さんにとっては失礼な話だったよね……。本当にごめん。申し訳ない」
と言って続けた。「僕が言うのもなんだけど、そういうの全部抜きにしてさ……。健人とずっと一緒にいたいかどうかで、最後は決めたらいいんだよ」
と優しい声で言う。
「そんなこと言われても……」
「健人のことは、好き?」
そう問われて、どきりとした。
でも、その答えはもう決まってた。いつの間にか、それだけは迷いようもない事実になってる。
「好きです」
そう言い切った私を見て、副社長は目を細めると、よかった、と笑う。
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せめてだれかが大反対してくれたらちょっとはこの勢いが止まれるかもしれないのに……。でも、それは誰もしてくれない。うちの父ですら、まったくだめだ。
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と思っても、その原因はどう考えても、私なんかに固執する先輩のせいなんだろうけど……。
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先輩と顔を合わせて、自分がどう思うか、想像もできなかった。
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