羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
10章:変化(4)
次の日の朝、目が覚めると、先輩が目の前にいた。一瞬夢かと思ったけど、ご本人らしい。
「昨日どうして来てくれなかったの」
「どうしてって」
本当は行った。でもそう言えなかった。そして唇を噛んで続ける。
「別に行くとは誰も言ってませんけど」
「まぁ確かにそれはそうだけど」
そう言った先輩の顔をじっと見る。
昨日、春野さんと何かあっただろうか? まさか、と思うものの、なんだか気になっている自分も恥ずかしくて嫌だった。
「みゆ? どうしたの?」
「ごめんなさい、今日仕事はやいんだった。もう行かなきゃ。着替えるから出て行ってください」
そう言って先輩を部屋から押し出す。
準備をして部屋から出ると、先輩はまだそこにいた。
「送る」
「いらないです」
「でも……」
「いらない!」
思わず恥ずかしいくらい叫んでいた。
なにこれ。自分で気持ちのコントロールが効かない。訳が分からない。泣きそうになった。
その時、先輩が私の手を掴む。
そして父に、すみません行ってきます、と言うと、自分の車の助手席のドアを開けて、私を押し込むようにそこに乗せた。
そして、有無を言わさない声で、
「ほら、シートベルトもして」
「ちょ、なんなんですか! いつもひくくせに!」
そう、いつも私が嫌って言ったとき、先輩は引いてくれていた。
こういう場面で強引にこんなことされたことない。だから私は完全に戸惑っていた。
静かに車を発進させた先輩と私の会話は、なかった。
二人とも黙りこくる。
会社が近づいてきた道沿いで、
「俺はね、もうみゆとのタイミングは間違いたくないんだ」
と先輩ははっきりと言った。
でも、私はどんどん近づいてくる会社を前に焦っていた。これ以上近づいたら、会社の人に見られるかもしれない。
「もうこのあたりで下ろしてください!」
叫んだ私の声に、車は道端で止まった。私は心底ほっとした。
ちょっと人通りの多い道だが仕方ない。出ようとすると、車は鍵が開かず、出られなくなっていた。
文句を言おうと先輩を見ると、先輩は私の耳元に唇をよせて、
「言ったよね。俺は、みゆのことは絶対に離さない。それでも、もし、みゆが俺から離れようとするなら、みゆの意見なんて全部無視して、結婚も、子どもも、こっちのペースで無理やり進めるよ」
とはっきりと低い声で告げた。どきりと心臓の音が鳴る。
(先輩、なんか怒ってる……?)
「何言って……」
「自分でも分かってる。みゆのことになると、俺はまた周りとか、そういうの全部どうでもよくなっちゃうんだよ」
その声に泣きそうになった。そんなこと言われても困る。
固まっていると、先輩はそのまま私を抱きしめる。そして耳元で笑った。
「ここでこんなことしたら、みんなに見えるかもね」
「離してください! それ、困りますから!」
「うん。みゆは困るだろうね」
そして、
「こんな独占欲しかない男で、ごめん」
とつぶやくと、人通りの多い朝の通勤路の横の車内で、私の唇を無理やりに奪った。そして、唇をこじ開けると、口内に舌を這わせる。
「んんっ……!」
思わず先輩の身体を押す。でも全然先輩は離してくれることはなかった。
朝に、さらに人通りの多い道の近くでそんなことされたこともなくて、慌てて泣いて暴れた私の腕を、先輩は無理やり掴んで押さえつけると、また何度も無理矢理に濃厚なキスを交わした。
「昨日どうして来てくれなかったの」
「どうしてって」
本当は行った。でもそう言えなかった。そして唇を噛んで続ける。
「別に行くとは誰も言ってませんけど」
「まぁ確かにそれはそうだけど」
そう言った先輩の顔をじっと見る。
昨日、春野さんと何かあっただろうか? まさか、と思うものの、なんだか気になっている自分も恥ずかしくて嫌だった。
「みゆ? どうしたの?」
「ごめんなさい、今日仕事はやいんだった。もう行かなきゃ。着替えるから出て行ってください」
そう言って先輩を部屋から押し出す。
準備をして部屋から出ると、先輩はまだそこにいた。
「送る」
「いらないです」
「でも……」
「いらない!」
思わず恥ずかしいくらい叫んでいた。
なにこれ。自分で気持ちのコントロールが効かない。訳が分からない。泣きそうになった。
その時、先輩が私の手を掴む。
そして父に、すみません行ってきます、と言うと、自分の車の助手席のドアを開けて、私を押し込むようにそこに乗せた。
そして、有無を言わさない声で、
「ほら、シートベルトもして」
「ちょ、なんなんですか! いつもひくくせに!」
そう、いつも私が嫌って言ったとき、先輩は引いてくれていた。
こういう場面で強引にこんなことされたことない。だから私は完全に戸惑っていた。
静かに車を発進させた先輩と私の会話は、なかった。
二人とも黙りこくる。
会社が近づいてきた道沿いで、
「俺はね、もうみゆとのタイミングは間違いたくないんだ」
と先輩ははっきりと言った。
でも、私はどんどん近づいてくる会社を前に焦っていた。これ以上近づいたら、会社の人に見られるかもしれない。
「もうこのあたりで下ろしてください!」
叫んだ私の声に、車は道端で止まった。私は心底ほっとした。
ちょっと人通りの多い道だが仕方ない。出ようとすると、車は鍵が開かず、出られなくなっていた。
文句を言おうと先輩を見ると、先輩は私の耳元に唇をよせて、
「言ったよね。俺は、みゆのことは絶対に離さない。それでも、もし、みゆが俺から離れようとするなら、みゆの意見なんて全部無視して、結婚も、子どもも、こっちのペースで無理やり進めるよ」
とはっきりと低い声で告げた。どきりと心臓の音が鳴る。
(先輩、なんか怒ってる……?)
「何言って……」
「自分でも分かってる。みゆのことになると、俺はまた周りとか、そういうの全部どうでもよくなっちゃうんだよ」
その声に泣きそうになった。そんなこと言われても困る。
固まっていると、先輩はそのまま私を抱きしめる。そして耳元で笑った。
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「うん。みゆは困るだろうね」
そして、
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思わず先輩の身体を押す。でも全然先輩は離してくれることはなかった。
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