羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
7章:誓言(2)
目が覚めたのは、早朝だった。
隣に寝ていたのはもちろん羽柴先輩。
羽柴先輩の顔を見ると、昨夜のことを思い起こして泣きそうになる。
羽柴先輩、確か、ずっとしてないって言ってたよね。しかもこれまで12年間不能だったって……。
それならきっと、久しぶりだし、きっと気軽な、肩慣らしのような、そんな一夜だと勝手に思ってたけど、そんなのとは全然違うって思った。
先輩は今まで見たことないような男の人の顔で、やけに心臓がバクバクしたし、自分の意思とは別に身体が勝手に反応した。先輩の背中に何度も爪を立ててしまって、先輩はそんなことすら嬉しそうに笑って、それからまた同じように何度も何度も、私の身体に自分を覚えこませるみたいに愛し合った。
まさか自分があんな風になるなんて想像もしてなかった。
もうだめだ……。
これからまさかあんなこと何回もするなんて絶対無理。ちょっとでも思い出すだけで恥ずかしすぎて無理。
それに一夜だけでも数えきれないほどしているのに、結婚でもしようものなら、これがどれだけのペースで、どれくらいの年月続くのだろう。たぶん恥ずかしくて心臓が三日も持たない。確実に死ぬ。
そして確実なことはもう一つ、先輩とこういう事するのを含めて、平穏な、平和な日常から一番離れたところに連れていかれるような気がするのだ。
私は熱くなる顔を叩き、決心してシーツを自分の身体にぐるぐると巻き付けると、ベッドを這いだす。
もう恥ずかしくて、羽柴先輩と顔なんて合わせられない。
―――逃げよう。
とにかく先輩の家のカードキーを素早く置いて、着替えて、ここから出て、
それからゆっくり考えたいのだ。自分の今後について……。
私はそう思うと歩き出した。まっすぐ歩けない自分の身体にいちいち恥ずかしくなる。
自分のカバンを探し、見つけるとカバンの中からカードキーを取り出した。よし、あとは、これを置いて、着替えて、帰るだけだ。
そっとリビングの端にあるチェストの上に置こうとしたとき、
「みゆ、何してるの?」
と声が聞こえて、びくりと体を震わして見上げると、隣に羽柴先輩立っていた。
ズモモモ、という効果音が聞こえそうなほど、紫色のオーラを放って。
(なんだか怒っていらっしゃる……? 何で )
「え、えぇ……っと、先輩?」
「まさか俺に気づかれないようにカードキー置いて帰ろうとか、考えてないよね?」
「いや、まさか」
そう言ったけど、声が裏返った。
それに先輩の眉が不機嫌そうに動く。
「ふうん」
もう何もかもがいたたまれないので、助けてください。と言いそうになる。そのとき、ひょいとそのまま抱き上げられ、ベッドに強制送還された。泣きそうになって羽柴先輩を見上げると、先輩は困ったように息を吐いて、
「まだきちんと歩けない癖に。あとで家まで送るからちゃんとここにいて」
と言う。目の前に裸の先輩の身体があって、またそれも恥ずかしさを増長させるので、私は目をそらす。明るいから余計に目に毒だ。
「でも、もう外は明るいし」
「うん? 朝だから明るいの当然だよね?」
「着替えるから。着替えるまでこっち見ないでください」
「もう見たよ、全部」
「っ! それでも見ないで!」
私が言うと、羽柴先輩は、まったくもう、と私の頭を軽く叩いた。
うぇええええん! もう見ないで、昨日の夜の出来事もオールデリートして!
恥ずかしすぎて、ほんといたたまれない。いますぐ逃げたい。そんな衝動が頭をめぐる。
なのに羽柴先輩は絶対に逃さないと言うように私を抱きしめると、
「できるだけセーブしたつもりだったけど、ごめんね」
と耳元でささやいた。
だめだ、ここにいたら、色々と爆発する。
心臓とか、脳とか、顔とか、そういう何かしらが木っ端みじんになりそうだ。
私は先輩の身体をぐっと押すと、
「も、も、も、もう帰ります。お父さんも心配するし!」
と叫ぶ。でも先輩は抱きしめることを全く辞めてくれない。
そのままクスクス笑って、
「それは大丈夫、連絡した」
と言う。
「えぇ……いつの間に」
「みゆが途中で疲れて休憩したいって寝たでしょ。その間に、水とか朝食とか、追加のあれとか、買いに行ったときついでに電話しておいた」
「今、その買い物したものの解説いります 」
顔を真っ赤にして叫ぶと、先輩は楽しそうに笑った。
くそう、いじめっ子か。
泣きそうになっていると、先輩はしみじみと、
「すごいよねぇ、12年分の気持ちって。あんなに貪欲になるなんて思いもしなかった。学生時代もこんなことなかったのに。なんだか自分でも感動しちゃった」
「……」
(私はまた何の告白を聞かされているのだろう……)
隣に寝ていたのはもちろん羽柴先輩。
羽柴先輩の顔を見ると、昨夜のことを思い起こして泣きそうになる。
羽柴先輩、確か、ずっとしてないって言ってたよね。しかもこれまで12年間不能だったって……。
それならきっと、久しぶりだし、きっと気軽な、肩慣らしのような、そんな一夜だと勝手に思ってたけど、そんなのとは全然違うって思った。
先輩は今まで見たことないような男の人の顔で、やけに心臓がバクバクしたし、自分の意思とは別に身体が勝手に反応した。先輩の背中に何度も爪を立ててしまって、先輩はそんなことすら嬉しそうに笑って、それからまた同じように何度も何度も、私の身体に自分を覚えこませるみたいに愛し合った。
まさか自分があんな風になるなんて想像もしてなかった。
もうだめだ……。
これからまさかあんなこと何回もするなんて絶対無理。ちょっとでも思い出すだけで恥ずかしすぎて無理。
それに一夜だけでも数えきれないほどしているのに、結婚でもしようものなら、これがどれだけのペースで、どれくらいの年月続くのだろう。たぶん恥ずかしくて心臓が三日も持たない。確実に死ぬ。
そして確実なことはもう一つ、先輩とこういう事するのを含めて、平穏な、平和な日常から一番離れたところに連れていかれるような気がするのだ。
私は熱くなる顔を叩き、決心してシーツを自分の身体にぐるぐると巻き付けると、ベッドを這いだす。
もう恥ずかしくて、羽柴先輩と顔なんて合わせられない。
―――逃げよう。
とにかく先輩の家のカードキーを素早く置いて、着替えて、ここから出て、
それからゆっくり考えたいのだ。自分の今後について……。
私はそう思うと歩き出した。まっすぐ歩けない自分の身体にいちいち恥ずかしくなる。
自分のカバンを探し、見つけるとカバンの中からカードキーを取り出した。よし、あとは、これを置いて、着替えて、帰るだけだ。
そっとリビングの端にあるチェストの上に置こうとしたとき、
「みゆ、何してるの?」
と声が聞こえて、びくりと体を震わして見上げると、隣に羽柴先輩立っていた。
ズモモモ、という効果音が聞こえそうなほど、紫色のオーラを放って。
(なんだか怒っていらっしゃる……? 何で )
「え、えぇ……っと、先輩?」
「まさか俺に気づかれないようにカードキー置いて帰ろうとか、考えてないよね?」
「いや、まさか」
そう言ったけど、声が裏返った。
それに先輩の眉が不機嫌そうに動く。
「ふうん」
もう何もかもがいたたまれないので、助けてください。と言いそうになる。そのとき、ひょいとそのまま抱き上げられ、ベッドに強制送還された。泣きそうになって羽柴先輩を見上げると、先輩は困ったように息を吐いて、
「まだきちんと歩けない癖に。あとで家まで送るからちゃんとここにいて」
と言う。目の前に裸の先輩の身体があって、またそれも恥ずかしさを増長させるので、私は目をそらす。明るいから余計に目に毒だ。
「でも、もう外は明るいし」
「うん? 朝だから明るいの当然だよね?」
「着替えるから。着替えるまでこっち見ないでください」
「もう見たよ、全部」
「っ! それでも見ないで!」
私が言うと、羽柴先輩は、まったくもう、と私の頭を軽く叩いた。
うぇええええん! もう見ないで、昨日の夜の出来事もオールデリートして!
恥ずかしすぎて、ほんといたたまれない。いますぐ逃げたい。そんな衝動が頭をめぐる。
なのに羽柴先輩は絶対に逃さないと言うように私を抱きしめると、
「できるだけセーブしたつもりだったけど、ごめんね」
と耳元でささやいた。
だめだ、ここにいたら、色々と爆発する。
心臓とか、脳とか、顔とか、そういう何かしらが木っ端みじんになりそうだ。
私は先輩の身体をぐっと押すと、
「も、も、も、もう帰ります。お父さんも心配するし!」
と叫ぶ。でも先輩は抱きしめることを全く辞めてくれない。
そのままクスクス笑って、
「それは大丈夫、連絡した」
と言う。
「えぇ……いつの間に」
「みゆが途中で疲れて休憩したいって寝たでしょ。その間に、水とか朝食とか、追加のあれとか、買いに行ったときついでに電話しておいた」
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顔を真っ赤にして叫ぶと、先輩は楽しそうに笑った。
くそう、いじめっ子か。
泣きそうになっていると、先輩はしみじみと、
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