羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
4章:あの事件ととんでもない告白(3)
次の月曜日、「あれから羽柴先生もすぐに帰ったけど、別に何もなかったわよね?」と宮坂さんに詰められた。しかし、私は内心しっかり焦りながらも、何とか誤魔化した。
実際一緒に帰ったわけではないのも良かったと思う。
ため息をついていると、部長がやってきて、
「羽柴先生はモテるよねぇ」
と笑った。そして続ける。「でも大丈夫だよ、きっと」
「どういう意味ですか……?」
聞き返そうと思ったらそれから急に仕事が忙しくなって、聞くことができないうちに一日が終わった。
なんだか疲れた。そういえば、どうやってあのカードキー返そうか……。
またこちらから連絡するのもシャクだし。もういっそ捨ててしまおうか。でも悪用されてもなぁ……。そんなことを考えながら、会社のビルを出ると、
「あ、みゆ」
と先輩が手を振っている。
私は自慢の足で先輩の元まで速攻で走り、
「なにやってんですか! こんなとこで!」
と木の陰まで先輩を連れ込んで、小声で叫んだ。「それに、そもそも、勝手にカードキー、カバンに入れないでください! 迷惑です!」
私が怒っているというのに、先輩は飄々とした様子で、
「じゃ、それ受け取るからさ。ついでにご飯食べてかない?」
「おなか減ってません!」
(ってそれ、何のついでなの 受け取るだけのついでなんてある )
そう思ったところで、私のお腹が見事に、ぐぅぅぅううう、と返事をしたのだった。
部活やってたから、今でも人よりお腹のヘリは早いのよぅ!
私が泣きそうな顔になると、先輩は楽しそうに笑う。
「ははは、素直なお腹だなぁ」
「ぐぬぅ……!」
「そうだ、この近くに新しくできたイタリアンの店、知ってる?」
そう言われて、私は首をぶんぶんと横に振った。そこは確か、うちの女性社員もみんな行きたがっていたお店だ。
「あそこは……だめ」
「どうして?」
「どうしてもダメ!」
「……あ、じゃあ、時々出てる屋台は?」
「屋台?」
「うん。ラーメンの屋台だよ。俺のマンションの裏手だし、出店時間もまちまちで、ほとんど知られてないんだ。おいしいのにさ」
先輩は笑う。
お腹がまた、ぐぅぅぅううううううう! とまた遠慮なく返事した。私はお腹を押さえると、
「うううう、行きます。食べたら帰ります……」
と返す。そんな私を見て、先輩はまた楽しそうに笑っていた。
「おいしい!」
ラーメンを一口食べて、開口一番出た言葉がこれだった。
もうこれしか出ない。それくらい美味しい。
夜の屋台のラーメンって、興味はあったが食べたことなかった。でも、こんなにおいしいなんて今まで来なくて損してたかも……。
私は目を輝かせて、次から次へと食べ進めていた。
先輩は楽しそうに私を見ると、
「うん、ここのラーメンうまいんだよね。時々無性に食べたくなるの」
と言う。
すると、そこの大将が、
「今日彼女連れなんだ?」
と先輩に言う。私は思わず
「彼女じゃないです」
とキツめに返してしまった。
なのに先輩は、
「そうなればいいんですけどね。なかなか素直に振り向いてもらえなくて」
と勝手に答える。
む、と先輩を睨むと、先輩は熱っぽい目で私を見る。私は驚いて、パッと目をそらすと、先輩は私の頬に触れた。その指先の熱に、私の身体はビクン、と跳ねる。
「みゆ、ここにスープ、ついてるよ?」
「……」
先輩はそれを指で取って、ぺろりと舐めた。なんてナチュラルに! あれからもきっと、モテ続けてきた人生なんでしょうね! 女性もきっと選び放題だったんでしょうね……! 私はまったく誰ともご縁がありませんでしたが!
思わずむぅっと膨れて、また食べ進める。
大将が、仲いいねぇ、と笑った。仲良くないです、と私が言うと、先輩はそれを聞いて困ったように笑っていた。
屋台を後にして先輩が歩き出す。私は足を止めると、先輩の背中に向かって、
「そもそも、どういうつもりなんですか? 私、先輩にあんなひどい事したのに……」
と意を決して言った。
「ひどい?」
先輩はきょとんと私の方を見る。「ひどい事なんて思ってないよ? あれ自体は、俺が悪かったし……。まぁ……俺はあれからちょっと困ったことになったけど」
「それが『ひどい事』じゃないんですか」
私が言うと、先輩は、たぶんみゆじゃ想像すらできないことだと思うよ、と苦笑した。
実際一緒に帰ったわけではないのも良かったと思う。
ため息をついていると、部長がやってきて、
「羽柴先生はモテるよねぇ」
と笑った。そして続ける。「でも大丈夫だよ、きっと」
「どういう意味ですか……?」
聞き返そうと思ったらそれから急に仕事が忙しくなって、聞くことができないうちに一日が終わった。
なんだか疲れた。そういえば、どうやってあのカードキー返そうか……。
またこちらから連絡するのもシャクだし。もういっそ捨ててしまおうか。でも悪用されてもなぁ……。そんなことを考えながら、会社のビルを出ると、
「あ、みゆ」
と先輩が手を振っている。
私は自慢の足で先輩の元まで速攻で走り、
「なにやってんですか! こんなとこで!」
と木の陰まで先輩を連れ込んで、小声で叫んだ。「それに、そもそも、勝手にカードキー、カバンに入れないでください! 迷惑です!」
私が怒っているというのに、先輩は飄々とした様子で、
「じゃ、それ受け取るからさ。ついでにご飯食べてかない?」
「おなか減ってません!」
(ってそれ、何のついでなの 受け取るだけのついでなんてある )
そう思ったところで、私のお腹が見事に、ぐぅぅぅううう、と返事をしたのだった。
部活やってたから、今でも人よりお腹のヘリは早いのよぅ!
私が泣きそうな顔になると、先輩は楽しそうに笑う。
「ははは、素直なお腹だなぁ」
「ぐぬぅ……!」
「そうだ、この近くに新しくできたイタリアンの店、知ってる?」
そう言われて、私は首をぶんぶんと横に振った。そこは確か、うちの女性社員もみんな行きたがっていたお店だ。
「あそこは……だめ」
「どうして?」
「どうしてもダメ!」
「……あ、じゃあ、時々出てる屋台は?」
「屋台?」
「うん。ラーメンの屋台だよ。俺のマンションの裏手だし、出店時間もまちまちで、ほとんど知られてないんだ。おいしいのにさ」
先輩は笑う。
お腹がまた、ぐぅぅぅううううううう! とまた遠慮なく返事した。私はお腹を押さえると、
「うううう、行きます。食べたら帰ります……」
と返す。そんな私を見て、先輩はまた楽しそうに笑っていた。
「おいしい!」
ラーメンを一口食べて、開口一番出た言葉がこれだった。
もうこれしか出ない。それくらい美味しい。
夜の屋台のラーメンって、興味はあったが食べたことなかった。でも、こんなにおいしいなんて今まで来なくて損してたかも……。
私は目を輝かせて、次から次へと食べ進めていた。
先輩は楽しそうに私を見ると、
「うん、ここのラーメンうまいんだよね。時々無性に食べたくなるの」
と言う。
すると、そこの大将が、
「今日彼女連れなんだ?」
と先輩に言う。私は思わず
「彼女じゃないです」
とキツめに返してしまった。
なのに先輩は、
「そうなればいいんですけどね。なかなか素直に振り向いてもらえなくて」
と勝手に答える。
む、と先輩を睨むと、先輩は熱っぽい目で私を見る。私は驚いて、パッと目をそらすと、先輩は私の頬に触れた。その指先の熱に、私の身体はビクン、と跳ねる。
「みゆ、ここにスープ、ついてるよ?」
「……」
先輩はそれを指で取って、ぺろりと舐めた。なんてナチュラルに! あれからもきっと、モテ続けてきた人生なんでしょうね! 女性もきっと選び放題だったんでしょうね……! 私はまったく誰ともご縁がありませんでしたが!
思わずむぅっと膨れて、また食べ進める。
大将が、仲いいねぇ、と笑った。仲良くないです、と私が言うと、先輩はそれを聞いて困ったように笑っていた。
屋台を後にして先輩が歩き出す。私は足を止めると、先輩の背中に向かって、
「そもそも、どういうつもりなんですか? 私、先輩にあんなひどい事したのに……」
と意を決して言った。
「ひどい?」
先輩はきょとんと私の方を見る。「ひどい事なんて思ってないよ? あれ自体は、俺が悪かったし……。まぁ……俺はあれからちょっと困ったことになったけど」
「それが『ひどい事』じゃないんですか」
私が言うと、先輩は、たぶんみゆじゃ想像すらできないことだと思うよ、と苦笑した。
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