羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい

3章:重過ぎるプレゼントと二度目のキス(5)

 泣きそうになって、でも、絶対目の前の相手はそのまま帰してくれそうにも思えなくて……私は勢いよく縦に首を振る。

「もう帰りたいだけですから……! 一回だけで……」

 言いかけた時、唇が触れる。そのまま何度も角度を変えてキスを交わして、でも先輩の唇は離れなくて、口内をからめとられると、先輩はそのまま歯列をなぞる。

「んんっ……!」

 一瞬唇が離れて、
「キスだけでヤバイな」
 先輩がつぶやく。

(やばいのはこっちですが……!)

 生理的な涙か、心理的な涙か……分からないものが頬に伝う。先輩はそれも舐めとって、妖艶に微笑むと、またキスをした。ちゅ、ちゅ、と何度もキスをされて、やっと唇が離れたと思ったらまた口内にするりと舌を差し込まれて激しいキスを何度も繰り返す。


 一回って言ったのに! 先輩の嘘吐き!
 やっぱり、私は先輩なんて嫌いだ。今、それがはっきりわかった!


 唇の端から飲み切れなくなった唾液が伝って、それも先輩は舐めとると、私を抱きしめ、私の頭を優しく撫でる。先ほどのキスの激しさとは違う、その柔らかな温かさに、なんだかまた泣きそうになる。

「先輩、これ以上は、もうだめ……。もうわかった。私、もう先輩とこういうこと、したくない。先輩のこと嫌い、大嫌い!」
「うん」

 先輩は私と額を合わせるとクスリと楽しそうに笑って、

「でも、みゆ?」
と私の頬を優しく撫でる。「さっきから俺の服をずっと掴んだままだよ?」


 え、そんなわけない、と思って自分の手の先を見ると、私の手は、先輩のスーツの背中部分を強く、強く、握りしめていた。


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