羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい

3章:重過ぎるプレゼントと二度目のキス(4)

「それよりみゆさ、あの時のキスが初めてだって言ってたよね?」
「は? そうですけどなにか?」

 突然何の話を始めたんだ。
 そう思って眉を寄せた時、突然腕を持たれ、玄関横の壁際に追いやられる。

 顔の横に手を置かれ、え、と思った次の瞬間には、先輩の顔が目の前にあった。

「こんな軽々しく男の家に入ってしまうのに、良くこれまで無事でいられたよね」
「何、言って……ひゃっ……!」

 先輩の唇が耳朶を這う。と思ったら、そのまま甘噛みされた。

「なにするんですか!」
「キスしてもいい? そのままみゆの口の中、全部舐めたい」

(突然の変態発言 )


「はぁ  ななななにいって……! だめに決まってるでしょう 」
「この前のキス、俺は何度も思い出してたよ。思い出しただけでたまらなかった」

 先輩の笑う息が耳にかかる。私はその瞬間、あのキスを思い出す。
 全部奪うような、そんなキスだった。

「みゆの中、気持ちよかった」

(言い方―――――――!)

 私が真っ赤になっていると、先輩は続ける。



「あのエレベータで強引にキスしてくれた日、やっぱりみゆしかいないって確信した。だからもうみゆと結婚するしかないって思って指輪を買ったんだ」
「勝手に確信して、こんなもの勝手に買わないでください! ……ひゃっ!」

 羽柴先輩の手が私の頬に触れそうになった瞬間止まって、突然私の唇をなぞる。驚いて固まっていると、

「ねぇ、みゆ。お願い。俺の愛を受け取ってくれないかな」


 お酒のせいもあるのか先輩の目は熱っぽくて、私はその目に絆されそうで、目をそらす。すると、先輩はまたエレベータの時のように私の顔を無理やり自分の方に向けた。

「目をそらさないで」
「……」
「ねぇ、この部屋に入った時、少しも、この可能性を考えてなかった? みゆには『未必の故意』があったと思ったんだけど」
「……そんなわけない」

 私は首を横に振る。でも、先輩の目は、全部お見通しとばかりにこちらを見ていた。

 ちがうちがうちがう!私がキスを思い出していたのは、先輩がヘンなことしたからで、
 先輩を思い出したのは、あの事があったから先輩に会うのが怖かったからで……!

 先輩の手が私の手を握る。する、と指を這わされると、ぎゅう、と熱を持った指が手に絡みついてきた。


「みゆ。もう一度だけ、キスさせて」
「なんで……」
「みゆだって、自分の気持ち、確かめたいでしょ。本当は自分がどう思ってるか」


 もうやだ、もうやだ。こんなの、やだ!
 私は先輩を睨みつける。しかし、先輩は、私の目を捉えて、そして優しく目を細めた。

 なんで、この人はいつも……。


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