羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
2章:平穏でない日々と告白(3)
その日、夕方になるころには私は疲れ切っていた。
(なんで羽柴先輩のことで私がこんなにドキドキしなきゃいけないのよ……)
心の中で悪態をついて、 お手洗いに行くために廊下を歩いていると、
「みゆ」
という、明らかに聞き覚えてのある声が聞こえて、思わず振り返る。
そこにいたのは羽柴先輩。羽柴先輩は目を細めてこちらを見ている。私の胸は突然の出来事に極限まで大きく鳴りだした。
「せんぱ……羽柴先生」
「なに、それ。すごく他人行儀な呼び方だね」
「他人ですけど!」
っていうか、もともと先輩としか呼んだことはない。どちらが他人行儀かなんて比べてもわからない。思わず叫んで、周りを見渡すと、素早く近くにあった給湯室に先輩を押し込んだ。
「私と先輩が知り合いだって、みんなには言わないでください。部長も配慮してくれてて」
「なんで?」
羽柴先輩は心底不思議そうに首を傾げた。
「先輩が相変わらずおモテになるからですよっ」
「関係ないでしょ」
「私には関係あるんです!」
私は小声で精いっぱい叫んで続ける。「とにかくあのことはもう償いました。だから私と先輩は、もうただの先輩後輩の関係です。それをわざわざ他人にまでひけらかす理由もないですよね」
「ふうん、そういうこと言うんだ。キスまでした仲なのに」
「だからそれはあの時のこと償え、って先輩が言ったからしたんですよね! 仕方なく!」
「全然良くなかった? あれから思い出しもしなかったんだ?」
そう言われて一瞬言葉に詰まる。
素直に、何度も思い出していました、とは言えない。
「いいとか悪いとか判断できるはずないでしょう。私、あんなことしたの、先輩がはじめてだったのに」
怒って言うと、先輩は少し驚いた顔をした後、嬉しそうに顔を綻ばせる。
(何、笑ってんのよ!)
私が先輩を睨むと、先輩は私の髪を突然優しく撫でる。
「分かったよ。今すごく嬉しいから、みゆが俺とのこと知られたくないなら、そうしてあげる」
「先輩わかってくれたんで……」
言いかけた時、先輩はぴしゃりと続けた。
「でもそれは貸し、一つ。覚えておいて」
「貸しって……」
「なんの得もなく、そんな意味のない事、俺がする理由がある?」
「先輩だって、私と変な噂が立つのは……別に得することもないでしょう!」
私は思わず先輩を睨んだ。すると先輩は驚いた表情で私を見る。
「何言ってるの?」
そして、続けた。「俺は、みゆにしか興味がない。会社中……日本中全員に公言したいくらいだよ。みゆにしか、『そういう気』が湧かないって」
「……な……!」
この人は何を言いだしたんだ! 日本中に公言って……まさかしないだろうけど、ほんとにやめてください!
私が固まっていると、先輩は私の唇を撫でる。そのしぐさに身体が跳ねた。
「あの時のキスで、もう一度確信した。やっぱり俺は、みゆしかダメみたい。みゆ、ありがとう」
意味が……意味が分からない……。
私が泣きそうな顔で先輩を見ると、先輩は楽しそうに笑っていた。
(なんで羽柴先輩のことで私がこんなにドキドキしなきゃいけないのよ……)
心の中で悪態をついて、 お手洗いに行くために廊下を歩いていると、
「みゆ」
という、明らかに聞き覚えてのある声が聞こえて、思わず振り返る。
そこにいたのは羽柴先輩。羽柴先輩は目を細めてこちらを見ている。私の胸は突然の出来事に極限まで大きく鳴りだした。
「せんぱ……羽柴先生」
「なに、それ。すごく他人行儀な呼び方だね」
「他人ですけど!」
っていうか、もともと先輩としか呼んだことはない。どちらが他人行儀かなんて比べてもわからない。思わず叫んで、周りを見渡すと、素早く近くにあった給湯室に先輩を押し込んだ。
「私と先輩が知り合いだって、みんなには言わないでください。部長も配慮してくれてて」
「なんで?」
羽柴先輩は心底不思議そうに首を傾げた。
「先輩が相変わらずおモテになるからですよっ」
「関係ないでしょ」
「私には関係あるんです!」
私は小声で精いっぱい叫んで続ける。「とにかくあのことはもう償いました。だから私と先輩は、もうただの先輩後輩の関係です。それをわざわざ他人にまでひけらかす理由もないですよね」
「ふうん、そういうこと言うんだ。キスまでした仲なのに」
「だからそれはあの時のこと償え、って先輩が言ったからしたんですよね! 仕方なく!」
「全然良くなかった? あれから思い出しもしなかったんだ?」
そう言われて一瞬言葉に詰まる。
素直に、何度も思い出していました、とは言えない。
「いいとか悪いとか判断できるはずないでしょう。私、あんなことしたの、先輩がはじめてだったのに」
怒って言うと、先輩は少し驚いた顔をした後、嬉しそうに顔を綻ばせる。
(何、笑ってんのよ!)
私が先輩を睨むと、先輩は私の髪を突然優しく撫でる。
「分かったよ。今すごく嬉しいから、みゆが俺とのこと知られたくないなら、そうしてあげる」
「先輩わかってくれたんで……」
言いかけた時、先輩はぴしゃりと続けた。
「でもそれは貸し、一つ。覚えておいて」
「貸しって……」
「なんの得もなく、そんな意味のない事、俺がする理由がある?」
「先輩だって、私と変な噂が立つのは……別に得することもないでしょう!」
私は思わず先輩を睨んだ。すると先輩は驚いた表情で私を見る。
「何言ってるの?」
そして、続けた。「俺は、みゆにしか興味がない。会社中……日本中全員に公言したいくらいだよ。みゆにしか、『そういう気』が湧かないって」
「……な……!」
この人は何を言いだしたんだ! 日本中に公言って……まさかしないだろうけど、ほんとにやめてください!
私が固まっていると、先輩は私の唇を撫でる。そのしぐさに身体が跳ねた。
「あの時のキスで、もう一度確信した。やっぱり俺は、みゆしかダメみたい。みゆ、ありがとう」
意味が……意味が分からない……。
私が泣きそうな顔で先輩を見ると、先輩は楽しそうに笑っていた。
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