名無しの(仮)ヒーロー
労多くして功少なし 5
喜多方から磐梯山方面に車で20分ほど行った山の中の宿に着いた。
まわりに人家などなく山の中にポツンと一軒家的な感じ。
でも作りは新しく構えも立派で、隠れ家的宿といったところ。
案内された部屋は、離れになっていて、和洋室のベッドルームと10畳の和室が二つ、それに広いリビングルームのお部屋まである。
「すごーい。贅沢なお部屋」
「夏希ちゃん、見て! 露天風呂が付いている」
リビングルームの障子を開け放つと広い縁側というか、ウッドデッキがあってそこには4.5人は入れそうな大きな露天風呂が付いていた。
「うわっー。凄いね」
こんな贅沢なお部屋一体いくらするんだろう……。
下世話な考えだが、根っからの庶民なのですっごい気になった。
すると、同じく根っからの庶民の紗月が将嗣に
「このお部屋一泊のお値段は?」と聞いた。
うんうん、気になるよね。
「まあまあ、今回は、お姫様三人もエスコートするからね。お姫様方が気に入って良かったよ」
将嗣は笑ってごまかした。これは、かなりのお値段とみた!
贅沢なお部屋でありがたく1泊目を無事終える事が出来た。
旅行2日目、今日は将嗣の実家に伺う日だ。
朝、早くから目が覚めてリビングから縁側に出て、冷たい晩秋の山の風景を堪能している。まだ、少し紅葉が残っていて所々、赤や黄色に染まった木々が鮮やかな彩りを見せていた。
ほぅと吐いた息は白く、空気は澄んでいる。
せっかくだからと露天風呂に足だけ浸けて一人露天風呂を楽しんでいた。
カラカラと窓が開く音がして、視線を送ると将嗣が「おはよう」と声を掛けてきた。
「おはよう」
「よく眠れた?」
「うん、バッチリ。将嗣も足だけでも入ったら? あったかいよ」
「ん、そうだな」
将嗣は私の横に座って足を浸けるとお湯が小さなさざ波を作り、そのお湯の波形を眺めてた。
「なあ、夏希、……今、幸せか? 」
「うん、幸せだよ」
「そうか……」
将嗣は、それ以上の事は何も言わず、二人で並んだまま、風に揺れる木々の音や鳥のさえずり、お湯の流れる音を聞いていた。
部屋の中から美優の泣き声が聞こえ、
「あ、美優が起きたみたい。行かなきゃ」
と慌てて、お湯から足を出しタオルで拭いて部屋に向かう。
将嗣も一緒にお湯から上がり部屋に入った。
「あ、パパとママが来たよ」
紗月が美優を抱っこして、話しかけると美優がキョロキョロとして、私を見つけ泣き止み、「まま」と指差す、「ふふっ、ウソ泣きして」とほっぺたをツンツンとつつくと美優は嬉しそうに笑った。
「美優ちゃん、パパだよ。パパって言わないかなぁ?」
将嗣が声を掛け手を伸ばすと美優も将嗣に手を伸ばす。
将嗣に抱っこされた美優はとても楽しそうだった。
でも、美優てば、『パパ』って言ってあげないんだなぁ。まっ、いっか。
お部屋食の朝ごはんの膳が運ばれて来て旅館ならではの豪華な朝ごはん。
おひつに入ったご飯の他に御粥も付いていて、美優の離乳食にもなって助かる。一応、レトルトの離乳食は持ってきたけれど、出来るなら美味しい物を食べさせてあげたかった。
小鉢に入ったひじきの煮物やお吸い物を少しだけ分けて食べさせる。
「へー。結構色んなもの食べれるんだな」
将嗣は感心したように美優を見ていた。
「子供の成長は、早いよね。ついこの間生まれたと思ったらあと少しで1歳だし、この前、少し歩いたんだよ」
「そうだよね。産まれた時、おさるさんみたいで、小っちゃかったもんね」
紗月が言うと
「そうか、おさるさんみたいで小さかったのか……。これからドンドン大きくなるな、彼氏とか連れて来たらショックだよ」
「えー、まだまだ、先の話だよ。今から心配してどうすんの? 」
「わかんないよ。子供の成長は早いからな」
と将嗣は、真顔で言う。
口には出さないけれど、将嗣が美優と会ったのは9~10ヶ月健診で区役所に行った時が初めてで、その前の美優を写真でしか知らない。きっと見たかったんだろうなと思った。
まわりに人家などなく山の中にポツンと一軒家的な感じ。
でも作りは新しく構えも立派で、隠れ家的宿といったところ。
案内された部屋は、離れになっていて、和洋室のベッドルームと10畳の和室が二つ、それに広いリビングルームのお部屋まである。
「すごーい。贅沢なお部屋」
「夏希ちゃん、見て! 露天風呂が付いている」
リビングルームの障子を開け放つと広い縁側というか、ウッドデッキがあってそこには4.5人は入れそうな大きな露天風呂が付いていた。
「うわっー。凄いね」
こんな贅沢なお部屋一体いくらするんだろう……。
下世話な考えだが、根っからの庶民なのですっごい気になった。
すると、同じく根っからの庶民の紗月が将嗣に
「このお部屋一泊のお値段は?」と聞いた。
うんうん、気になるよね。
「まあまあ、今回は、お姫様三人もエスコートするからね。お姫様方が気に入って良かったよ」
将嗣は笑ってごまかした。これは、かなりのお値段とみた!
贅沢なお部屋でありがたく1泊目を無事終える事が出来た。
旅行2日目、今日は将嗣の実家に伺う日だ。
朝、早くから目が覚めてリビングから縁側に出て、冷たい晩秋の山の風景を堪能している。まだ、少し紅葉が残っていて所々、赤や黄色に染まった木々が鮮やかな彩りを見せていた。
ほぅと吐いた息は白く、空気は澄んでいる。
せっかくだからと露天風呂に足だけ浸けて一人露天風呂を楽しんでいた。
カラカラと窓が開く音がして、視線を送ると将嗣が「おはよう」と声を掛けてきた。
「おはよう」
「よく眠れた?」
「うん、バッチリ。将嗣も足だけでも入ったら? あったかいよ」
「ん、そうだな」
将嗣は私の横に座って足を浸けるとお湯が小さなさざ波を作り、そのお湯の波形を眺めてた。
「なあ、夏希、……今、幸せか? 」
「うん、幸せだよ」
「そうか……」
将嗣は、それ以上の事は何も言わず、二人で並んだまま、風に揺れる木々の音や鳥のさえずり、お湯の流れる音を聞いていた。
部屋の中から美優の泣き声が聞こえ、
「あ、美優が起きたみたい。行かなきゃ」
と慌てて、お湯から足を出しタオルで拭いて部屋に向かう。
将嗣も一緒にお湯から上がり部屋に入った。
「あ、パパとママが来たよ」
紗月が美優を抱っこして、話しかけると美優がキョロキョロとして、私を見つけ泣き止み、「まま」と指差す、「ふふっ、ウソ泣きして」とほっぺたをツンツンとつつくと美優は嬉しそうに笑った。
「美優ちゃん、パパだよ。パパって言わないかなぁ?」
将嗣が声を掛け手を伸ばすと美優も将嗣に手を伸ばす。
将嗣に抱っこされた美優はとても楽しそうだった。
でも、美優てば、『パパ』って言ってあげないんだなぁ。まっ、いっか。
お部屋食の朝ごはんの膳が運ばれて来て旅館ならではの豪華な朝ごはん。
おひつに入ったご飯の他に御粥も付いていて、美優の離乳食にもなって助かる。一応、レトルトの離乳食は持ってきたけれど、出来るなら美味しい物を食べさせてあげたかった。
小鉢に入ったひじきの煮物やお吸い物を少しだけ分けて食べさせる。
「へー。結構色んなもの食べれるんだな」
将嗣は感心したように美優を見ていた。
「子供の成長は、早いよね。ついこの間生まれたと思ったらあと少しで1歳だし、この前、少し歩いたんだよ」
「そうだよね。産まれた時、おさるさんみたいで、小っちゃかったもんね」
紗月が言うと
「そうか、おさるさんみたいで小さかったのか……。これからドンドン大きくなるな、彼氏とか連れて来たらショックだよ」
「えー、まだまだ、先の話だよ。今から心配してどうすんの? 」
「わかんないよ。子供の成長は早いからな」
と将嗣は、真顔で言う。
口には出さないけれど、将嗣が美優と会ったのは9~10ヶ月健診で区役所に行った時が初めてで、その前の美優を写真でしか知らない。きっと見たかったんだろうなと思った。
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