恋の始め方間違えました。
75
「どうした?」
と、真壁さんが自分の頬を指してみせた。
「キャットファイトを少々」
「勝ったのか?」
「痛み分けです」
「織部らしい」
「何にしますか?」
「凛花さんのお好きに」
「では、当店のナンバーワン嬢もご一緒してよろしいでしょうか?」
「益子、任せた」
「承知しました。ナンバーワンってどっち? あの性悪?」
「性悪なんていませんよ。恋に悩める女の子はちょっと暴走しやすいんです。」
「なんだそれ。まあ、織部がいいならいいけど」
「責められる立場の真っ当な女じゃないし」
「二股女だもんな」
「やめて。図星を抉らないで」
「真壁さん、これでいいんですか?」
「ちょっと始め方を間違えただけだろ。大事なのは結果だ」
「かっこいい事言ってますけど、謂わば間男でしょ、あなた」
「やめて。真壁さんは悪くない」
「いや、別に悪くても構わない。訴えられようと別にいい。むしろ俺から言わせれば、あっちの方が間男だ。まあ、勝手に勘違いして五年間も不在だった俺が悪いんだ。織部の傷ついた心の癒しだったんだから感謝しなくちゃな」
「どっちもメンタルくそやば」
ちょっと失礼しますね、と席を立ち、桧山くんにユカリちゃんを呼んでもらうように軽く耳打ちする。
ユカリちゃんに代わって乃愛ちゃんがテーブルに着き、ユカリちゃんがこっちへ来た。
「やっぱ来たじゃん。凛花さん」
「好きなもの頼んでいいって」
「イエーイ。アタシもドンペリ飲みたーい。ピンクのヤツ」
ユカリちゃんが桧山くんに注文する。席に戻ると、ユカリちゃんは益子の隣に座った。
「もー。ユカリが案内してたのに、凛花さんのとこ行っちゃったから寂しかったんだよー?」
「えー。マジで? ごめんねー? ってか今日ユカリちゃんが俺の相手してくれんの?」
「違うよー。益子さんがぁ、ユカリの相手してくれるんでしょお?」
「またまた上手いね」
「えー。だってそうじゃん。ユカリは構ってほしいのに、意地悪言わないで」
じゃれる仔猫みたいにユカリちゃんは上目遣い気味に益子に絡んでいる。すごい。なんか、ユカリちゃんが益子のこと好きみたいに見える。
「凛花さん。見すぎ。俺をほっとくなよ」
「あっ。すみません」
用意された二本のうち一本のシャンパンに伸ばした手を制された。
「いい」
グラスを持たされ、薄紅色の液体が注がれる。真壁さんはそのまま自分の分も注いで、軽くぶつけた。そしてお互い一気に空にしてしまう。
「冷やさなくていいのか?」
新しい冷たいおしぼりを私に差し出す。
「当然の報いだと受け入れてますから大丈夫です」
「そうか。じゃあ、俺もツバメから一発くらいもらうか」
「それは、ないと思いますが」
「まあな」
「はい」
真壁さんが声をひそめた。
「実は、藤和に戻った時に益子から一発もらったんだ」
「え。」
「それで織部を追おうと決めた」
「そうなんですか」
チラッと益子の方を見る。ユカリちゃんと楽しんでいるけど、きっと、益子のことだからこっちに気を使ってくれているんだろうな。
「この後はどうするんだ?」
「後、とは?」
「そうだな。まずは今夜かな」
私は彼の肩に手を置き、そっと耳打ちする。
「一旦、お帰りになって、その後私の部屋に来てください。電話します」
不意をつかれたように、真壁さんが隙だらけの顔を見せた。
と、真壁さんが自分の頬を指してみせた。
「キャットファイトを少々」
「勝ったのか?」
「痛み分けです」
「織部らしい」
「何にしますか?」
「凛花さんのお好きに」
「では、当店のナンバーワン嬢もご一緒してよろしいでしょうか?」
「益子、任せた」
「承知しました。ナンバーワンってどっち? あの性悪?」
「性悪なんていませんよ。恋に悩める女の子はちょっと暴走しやすいんです。」
「なんだそれ。まあ、織部がいいならいいけど」
「責められる立場の真っ当な女じゃないし」
「二股女だもんな」
「やめて。図星を抉らないで」
「真壁さん、これでいいんですか?」
「ちょっと始め方を間違えただけだろ。大事なのは結果だ」
「かっこいい事言ってますけど、謂わば間男でしょ、あなた」
「やめて。真壁さんは悪くない」
「いや、別に悪くても構わない。訴えられようと別にいい。むしろ俺から言わせれば、あっちの方が間男だ。まあ、勝手に勘違いして五年間も不在だった俺が悪いんだ。織部の傷ついた心の癒しだったんだから感謝しなくちゃな」
「どっちもメンタルくそやば」
ちょっと失礼しますね、と席を立ち、桧山くんにユカリちゃんを呼んでもらうように軽く耳打ちする。
ユカリちゃんに代わって乃愛ちゃんがテーブルに着き、ユカリちゃんがこっちへ来た。
「やっぱ来たじゃん。凛花さん」
「好きなもの頼んでいいって」
「イエーイ。アタシもドンペリ飲みたーい。ピンクのヤツ」
ユカリちゃんが桧山くんに注文する。席に戻ると、ユカリちゃんは益子の隣に座った。
「もー。ユカリが案内してたのに、凛花さんのとこ行っちゃったから寂しかったんだよー?」
「えー。マジで? ごめんねー? ってか今日ユカリちゃんが俺の相手してくれんの?」
「違うよー。益子さんがぁ、ユカリの相手してくれるんでしょお?」
「またまた上手いね」
「えー。だってそうじゃん。ユカリは構ってほしいのに、意地悪言わないで」
じゃれる仔猫みたいにユカリちゃんは上目遣い気味に益子に絡んでいる。すごい。なんか、ユカリちゃんが益子のこと好きみたいに見える。
「凛花さん。見すぎ。俺をほっとくなよ」
「あっ。すみません」
用意された二本のうち一本のシャンパンに伸ばした手を制された。
「いい」
グラスを持たされ、薄紅色の液体が注がれる。真壁さんはそのまま自分の分も注いで、軽くぶつけた。そしてお互い一気に空にしてしまう。
「冷やさなくていいのか?」
新しい冷たいおしぼりを私に差し出す。
「当然の報いだと受け入れてますから大丈夫です」
「そうか。じゃあ、俺もツバメから一発くらいもらうか」
「それは、ないと思いますが」
「まあな」
「はい」
真壁さんが声をひそめた。
「実は、藤和に戻った時に益子から一発もらったんだ」
「え。」
「それで織部を追おうと決めた」
「そうなんですか」
チラッと益子の方を見る。ユカリちゃんと楽しんでいるけど、きっと、益子のことだからこっちに気を使ってくれているんだろうな。
「この後はどうするんだ?」
「後、とは?」
「そうだな。まずは今夜かな」
私は彼の肩に手を置き、そっと耳打ちする。
「一旦、お帰りになって、その後私の部屋に来てください。電話します」
不意をつかれたように、真壁さんが隙だらけの顔を見せた。
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