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恋の始め方間違えました。

森野きの子

70

 着信音に急かされ、バッグから携帯電話を出して、耳に当てる。

「はい。もしもし」

「どこにいる?」

「えっ。真壁さん!?」

 心臓爆発したかと思った。声もうらがえっちゃったし、恥ずかしい。それにちょっと混乱してる。どうして、真壁さんから電話が?

「そうだよ。なんだお前。俺の番号登録すらしてくれていないのか」

「違います。番号確認せずに出ちゃったんです。というより、かかってくるなんて思いもしなかったので」

「なんでだ?」

「なんでって、ごっこ遊びはたくさんだっておっしゃってたじゃないですか」

「俺は遊びじゃないし、一度断られたくらいで折れるような精神でもない」

「それは、五年前に見習うべきでした」

「いや、あの時ならこうはいかなかった。すぐに海外に飛ばされたしな。」

 あれ? 益子が言ってたメンタルくそやばって、そっち? 

「そんなことより、益子から聞いた。今夜で辞めるんだってな。思っていた以上に行動が早い。さすがだな」

「どうせ私はあなたの忠犬ですから」

「口だけだとわかっていても嬉しいよ。」

 自ら言っといて恥ずかしいけど、たぶん、これ喜んでないし、笑ってすらいない。

「同伴するって約束してただろ? どこか行こう」

「今、駅ナカのコーヒースタンドでサンドイッチとコーヒーのお昼御飯中なんです」

「断られているのか?」

「私が断るとお思いですか? できればすぐにでもお会いしたいです」

 受話器越しの静寂に不安が過る。

「私が……勝手なことを申し上げているのは、重々承知の上です」

「……すぐ行くよ。」

 きゅんと、全身が反応する。

「でも、駄目なんです。」

「なんでだよ」

「食事制限のダイエットなどされたことありますか?」

「我慢するくらいなら動けばいいだろ」

 あの体にプロテインとスムージーじゃ、割に合わないんじゃないかしら。接待で美味しいものを食べているとしても。

「お話になりません」

「なんだそれ」

「ストイックな真壁さんと違って私は意思が弱いので、今、お会いしたくないんです」

「俺のどこがストイックだ? 弱くていいじゃないか。部屋なら用意――」

「わああ。全然よくないです」

「知らない仲でもないのに。もうやることやっといて今更なにをごちゃごちゃ云うんだって思ってるけど、まあ。織部は俺に誠意を見せてるつもりなんだろうし、好きにさせておこうとも思っている。けど、もう離れる気はない。どうせお前は困っても連絡してこないだろうし、通報されるまでは俺から粘るよ」

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