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恋の始め方間違えました。

森野きの子

66

「だってさー。人の百倍仕事するのに無駄な干渉してこねー上司と、紅一点で仕事バリバリこなして、気の合う同期がいてさ、三つ巴でガンガン契約取って、お互い成績上げまくってんのに、負の感情なしでやっていけてさー、社内でも一目置かれて気持ちよかったじゃん。向かうところ敵なしで。なのに、真壁さんがいなくなった途端、全部崩れてさ、織部に対する周りの奴らの掌返しもすごかったよな。で、俺一人残って、織部も辛かっただろうけど、俺もキツかったんだぜ。仕事できねーくせに文句ばっか垂れる無能と俺の業績横取りするだけの阿呆上司しかいねーの。ほんと、地獄だったわ」

「……ごめん。謝っても、済むことじゃないけど、私、自分のことばかり……、ごめん。」

 益子が、ふっと笑った。

「クソちょろいな。織部」

「な、なによ。益子のディスって上げようとする優しさなんかお見通しなんだからね! 私にも反省させてよ」

「痛み分けでいいんじゃね?」

「益子も真壁さんも優しすぎるんじゃない?」

「そりゃ、男だからな。涙とパンツ見せられたらそりゃもう、すーぐ許すよ」

 と、食卓の下を覗きこむ。

「薄手の黒ストッキングってエロいよな。許してほしけりゃちょっと太ももで顔挟んでくんねえ?」

「一発でいいから殴らせて」

「え? 一発でいいからヤらせて? 猛獣じゃないですか織部さんヤダー。」

 丸めたおしぼりを投げつけると、笑いながら呆気なくキャッチされた。

「キャッチすんなー!」

「元バスケ部ナメんなよ」

「そこは野球部じゃないの?」

「坊主なんか絶対やだ」

「女子受けツーブロックパーマだもんね。もー。すぐモテ意識するんだからー」

「私、この髪型にするようになって女子大生の彼女が出来ました。去年のクリスマスまでの半年でしたけど。」

「あらあらまんまとカモにされちゃって」

「まあ。半年間ムスコがお世話になったんでね。お歳暮くらいね」

「げっす! サイテー!」

 ラーメンが来たのでくだらない会話を中断して食べることに集中した。

 外に出ると、夜の冷気が火照った頬を撫でる。久しぶりに好き勝手に喋れたおかげで疲れも酔いも心地いい。また飲もうと約束して連絡先を交換した。タクシーを拾って、私の家まで回ってくれた。

「真壁さんとはより戻さねーの?」

「戻せるわけないでしょ」

「今度は織部から行けば問題ない」

「無理だって」

「なんでよ」

「色々あるの」

「よし。吐け」

「ちょっと、若いツバメが」

「はぁぁあ? マジかよ」

「そっちとはプラトニックな関係よ? 電話番号も知らない。けど、辛いとき彼の存在に救われたの。なのに、真壁さんがフラッと現れたらもうそっちのけ。忠犬メス公まっしぐら」

「言い方。つーか、なにが問題なわけ? 結婚してるわけでもねーのに」

「気持ちの問題。なんでそんなに益子が食い下がってくるわけ?」

「俺があの時無駄に介入したせいで、織部たちの仲を壊したんじゃないか」

「まさか、あんたそれずっと思ってたの?」

「織部だって思わなかったか?」

「益子は応援してくれたじゃない。私がちゃんと伝えなかったからだよ。」

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