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恋の始め方間違えました。

森野きの子

65

「つーかさ。真壁さんに織部の様子を見てきてくれって頼まれたんだけど、なんで? お前ら付き合ってねえの?」

「付き合えるわけないでしょ。落ちぶれて惰性で水商売してるような女だよ」

「うん。でも、それもわかってわざわざ探し当てて会いに来たんだよな? あの人」

「そうだよ。すごいよね」

「で、やったんだろ?」

「ま、まあ……。うん……」

「すげぇな。織部。」

「いや、すごいのは真壁さんだよ?」

「いやいや。そうじゃねーよ。でも、まあ、五年だもんな。そりゃ考え方も変わるよな。」

「なにが」

「あんなにベタ惚れしてた男をヤリ捨てするんだもんな。恐れ入ったわ。ほんっと変わるもんだなぁ」

 予想しなかった言葉に衝撃を受けた。益子は笑っている。

「ヤリ捨て……って」

「あの頃の織部からじゃ想像もつかねーな。一回喰ったら満足したのか? それとも幻滅しての結果いま? それとも、復讐? まあ、吹っ切れた?」

 栓の抜かれたビールとグラスが二つ食卓に置かれて、益子は両方に注ぎ、一つを私の前に置いた。

「なにいってんの? ふざけてんの? バカにしてんの?」

「は? なに切れてんの?」

「あんたがヤリ捨てとかひどい言い方するからじゃない」

「え。違うの? 自分から動かず、来た相手の好意に乗っかって美味しいとこだけ頂いてさよならしたんじゃねーの? 自分を捨てた男に復讐? やるじゃん、織部。策士だな。なんならもっと金引き出してやればよかったのに、いくらでも出すだろ」

「黙って。なんなの、あんた。」

「ビンタくらい飛んでくるかと思ったけど、冷静だな」

「していいならするけど?」

 益子は軽く笑い飛ばして、首をかしげた。

「一通り食ってからにして」

 私のグラスに自分のグラスを軽くぶつける。私は腹立ち紛れにグラスを空にした。焼きたての餃子が運ばれてきたので、瓶ビールを追加した。

「お。いくねぇ」

「ムカついてきたから炭酸飲みたい。なんなの、あんた。本当に。こっちの気も知らないくせに」

 言わなくてもお代わりが注がれる。

「知らねーよ。知らねーから吐け。ゲロの始末は慣れてる」

「営業部長様も大変ね」

「労ってくれんの?」

「おちょくってんのよ」

「どこがだよ」

 苦笑しながら、自分のグラスにも注ぎ足し、一気に呷る。

「いやマジでさ、俺、自分が言うとは思わなかった台詞があんだけど。」

「なに?」

 餃子を口にいれたので短く応える。

「あの頃はよかった」

 あまりのベタな台詞に餃子を噴きそうになった。益子も自分で言っておきながらゲラゲラ笑っている。

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