恋の始め方間違えました。
57
「お。起きてたんだ。悪い。鍵借りた。コンビニ行ってたんだ」
私のプレゼントした服を着て、髪を下ろしたラフな真壁さんの色気がやばい。眩しい。そんなこと考えている場合じゃない。
「すみません! 片付けなんかさせてしまって!」
「なに言ってんだよ。こっちが邪魔させてもらってんだから、これくらい。それより、大丈夫か? 辛くないか?」
「真壁さんのほうこそ眠れました?」
「ああ。おかげでかなり濃厚な睡眠だったよ。目覚めはよかったが、体はものすごく怠いから午前中は会社に行くのをやめたんだ。夕方からは人と会う約束があるけれどな。服ならこれがあるし、一度部屋に戻るから心配ない。スーツはここに虫除けとしてぶらさげとけよ」
「虫除けって」
「じゃあ、記念」
「記念品に男性用スーツ一式ですか?」
「邪魔なら捨てればいい」
「勿体ないので眺めて暮らします」
まだもう少し一緒にいられると思うと、ちょっとにやけてしまった。
「ホットコーヒー買ってきたけど、飲む?」
「ありがとうございます。いただきます」
紙のスタンドに固定されたカップを一つもらう。
「昨夜の頼みを聞いてくれるか?」
「頼み……?」
「お前の言葉を信じたい」
「ああ……。はい。もちろんです」
「じゃあ、今の仕事を辞めて、昼の仕事に就いてくれ」
「善処します」
「じゃあ、これは資金な。150あるけど、税務署の心配はしなくていい」
冗談と一緒に昨日渡したショコラティエの箱と、もう一つ、コンビニATMの封筒を目の前に置かれる。
「真壁さん」
うんざりして彼を睨むと、真剣な目で私を見返した。
「俺は本気で言ってる。お前にあんなところにいてほしくない。一刻も早く辞めろ。俺の我が儘だ。当面の生活費を出すくらい当然だろ。足りなくなったら連絡しろ」
「嫌です」
「お前が意地を張るなら俺も張る。これは置いていく。とにかくあの店は、すぐに、辞めろ」
ハッと思い出す。
「ああっ! そういえば!」
「なんだ?」
「昨夜、マネージャーに電話するって言ってしてなかった!」
「怠慢だな。凛花さん」
「返す言葉もございません」
慌ててバッグから携帯電話を取り出してメールを確認すると、マネージャーから返信メールが来ていた。
了解。電話はいらない。ゆっくり休め。ペナルティに一万引いとくけど、一昨日の売上は過去最高だから、今月の給料は期待できるぞ、と珍しく優しい内容だった。もう、あんなフィーバーは二度とないとも知らずに。
私のプレゼントした服を着て、髪を下ろしたラフな真壁さんの色気がやばい。眩しい。そんなこと考えている場合じゃない。
「すみません! 片付けなんかさせてしまって!」
「なに言ってんだよ。こっちが邪魔させてもらってんだから、これくらい。それより、大丈夫か? 辛くないか?」
「真壁さんのほうこそ眠れました?」
「ああ。おかげでかなり濃厚な睡眠だったよ。目覚めはよかったが、体はものすごく怠いから午前中は会社に行くのをやめたんだ。夕方からは人と会う約束があるけれどな。服ならこれがあるし、一度部屋に戻るから心配ない。スーツはここに虫除けとしてぶらさげとけよ」
「虫除けって」
「じゃあ、記念」
「記念品に男性用スーツ一式ですか?」
「邪魔なら捨てればいい」
「勿体ないので眺めて暮らします」
まだもう少し一緒にいられると思うと、ちょっとにやけてしまった。
「ホットコーヒー買ってきたけど、飲む?」
「ありがとうございます。いただきます」
紙のスタンドに固定されたカップを一つもらう。
「昨夜の頼みを聞いてくれるか?」
「頼み……?」
「お前の言葉を信じたい」
「ああ……。はい。もちろんです」
「じゃあ、今の仕事を辞めて、昼の仕事に就いてくれ」
「善処します」
「じゃあ、これは資金な。150あるけど、税務署の心配はしなくていい」
冗談と一緒に昨日渡したショコラティエの箱と、もう一つ、コンビニATMの封筒を目の前に置かれる。
「真壁さん」
うんざりして彼を睨むと、真剣な目で私を見返した。
「俺は本気で言ってる。お前にあんなところにいてほしくない。一刻も早く辞めろ。俺の我が儘だ。当面の生活費を出すくらい当然だろ。足りなくなったら連絡しろ」
「嫌です」
「お前が意地を張るなら俺も張る。これは置いていく。とにかくあの店は、すぐに、辞めろ」
ハッと思い出す。
「ああっ! そういえば!」
「なんだ?」
「昨夜、マネージャーに電話するって言ってしてなかった!」
「怠慢だな。凛花さん」
「返す言葉もございません」
慌ててバッグから携帯電話を取り出してメールを確認すると、マネージャーから返信メールが来ていた。
了解。電話はいらない。ゆっくり休め。ペナルティに一万引いとくけど、一昨日の売上は過去最高だから、今月の給料は期待できるぞ、と珍しく優しい内容だった。もう、あんなフィーバーは二度とないとも知らずに。
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