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恋の始め方間違えました。

森野きの子

53

 懲りずにもう一度軽いキスをした後、車に乗って駅近くの大通りにある百貨店の小さなサロンに行き、真壁さんの体に合わせながら、ルームウエアとナイトウエアを選んだ。どっちも同じだろうと少し苦い顔をされたけれど、構わずレジで支払いを済ませた。プレゼント用のラッピングをしてもらい、包み紙を受けとるとき、胸がいっぱいになった。好きな人に贈り物ができて嬉しくてたまらなかった。
 アパート近くのコンビニエンスストアにも寄って携帯用歯ブラシセットとコンドームを買い、隣のコインパーキングに車を停めて、真壁さんには少しの間車で待っててもらい、下ろせる荷物を持って急いで部屋を整えた。
 西日が射し込む1DKの部屋。物は少ないし、狭いし、全体的に古い。インテリアにこだわる財力も気力もなかったせいで、侘しさに溢れている。
 まずベッドを整え、窓辺の下着を下げたピンチを押し入れの突っ張り棒に引っかけて襖を閉める。一人用の卓袱台だと刺し盛りでいっぱいになってしまいそうだ。買ってきた惣菜を温めなおして器に入れ替え、一つずつしかないグラスとマグカップと一緒に卓袱台に並べた。とりあえず、刺し盛りは冷蔵庫に。
 気取った黒いワンピースから、ゆるいジャージ素材の部屋着のワンピースに着替えて、髪を耳たぶの下辺りに結び直す。手早くバスタブを洗い、自動湯沸しのスイッチを入れた。これでだいたい大丈夫かな、と、部屋の中を見回す。
 真壁さんを迎えに行くと電話中だった。私に気づいて謝るジェスチャーをしたので、頷いてみせた。
 しばらくして、真壁さんが車から降りてきて、トランクを開けた。二人でお酒を運んで、ドキドキしながら部屋に招く。
「狭くて古くて恥ずかしいんですけど」
「俺だって昔は似たような部屋に住んでた」
「本当ですか? 想像つかない」
 たたきが狭いので先に靴を脱いで上がってもらおうとしたら、こちらに向き直って私を抱き寄せた。重い玄関の扉と厚い胸板に挟まれ、さらに密着するかたちになった。

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