恋の始め方間違えました。
48
パサージュの中央にあるオープンカフェの一席で、緑の炭酸水の瓶を弄ぶ真壁さんがいた。
「お待たせしました」
私を見ると軽く頷きながら応えた。
「待った甲斐があった。何にする?」
ウェイターがグラスに入った水を運んできたが、すぐに出たいことを告げて注文は控えさせてもらい、私は真壁さんに向き直った。
「これは、同伴?」
真壁さんが先に口を開いた。
「いいえ。プライベートです」
「オーケストラでも聞きに行くのか?」
「いいえ。お葬式です」
「誰の?」
「後で教えます。あの、これ」
バッグからリボンのかかった箱を取り出し、彼の手元に差し出すと、嬉しそうな、不思議そうなクリスマスの朝の子どもみたいな表情を浮かべた。
「開けていい?」
もちろん、と頷くと、さっそくリボンをほどいて、箱を開け、表情を曇らせた。
「……なにがしたいんだ?」
「買い物です。本当に欲しいものを買おうと思ったんです」
「というのは?」
「今夜一晩、真壁さんを、百万円で」
彼は、眉間に手を当て、ため息をついた。
「どうしてこんなことを?」
「だって真壁さん、いらないっていっても受け取ってくれないですし、私がこれを出された時、どんな気持ちだったかわかってほしくて」
彼は私を見て、ハッと視線をさ迷わせた。
「貴方が身を粉にして得た大事なお金を私のために惜しげもなく使ってくださってありがとうございました。でも、私はそれより、キスや愛撫やさっき電話で言ってくれた言葉の方が嬉しかったんです」
彼は、なにか言いたげに、苦しげな表情を浮かべた。
きっと彼のことだから謝ろうとして、それだけでは済まされないと思って、何も言えなくなっているのかもしれない。
「お待たせしました」
私を見ると軽く頷きながら応えた。
「待った甲斐があった。何にする?」
ウェイターがグラスに入った水を運んできたが、すぐに出たいことを告げて注文は控えさせてもらい、私は真壁さんに向き直った。
「これは、同伴?」
真壁さんが先に口を開いた。
「いいえ。プライベートです」
「オーケストラでも聞きに行くのか?」
「いいえ。お葬式です」
「誰の?」
「後で教えます。あの、これ」
バッグからリボンのかかった箱を取り出し、彼の手元に差し出すと、嬉しそうな、不思議そうなクリスマスの朝の子どもみたいな表情を浮かべた。
「開けていい?」
もちろん、と頷くと、さっそくリボンをほどいて、箱を開け、表情を曇らせた。
「……なにがしたいんだ?」
「買い物です。本当に欲しいものを買おうと思ったんです」
「というのは?」
「今夜一晩、真壁さんを、百万円で」
彼は、眉間に手を当て、ため息をついた。
「どうしてこんなことを?」
「だって真壁さん、いらないっていっても受け取ってくれないですし、私がこれを出された時、どんな気持ちだったかわかってほしくて」
彼は私を見て、ハッと視線をさ迷わせた。
「貴方が身を粉にして得た大事なお金を私のために惜しげもなく使ってくださってありがとうございました。でも、私はそれより、キスや愛撫やさっき電話で言ってくれた言葉の方が嬉しかったんです」
彼は、なにか言いたげに、苦しげな表情を浮かべた。
きっと彼のことだから謝ろうとして、それだけでは済まされないと思って、何も言えなくなっているのかもしれない。
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