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恋の始め方間違えました。

森野きの子

45

 翌日、お昼時を狙って、真壁さんに貰った名刺に記してある携帯番号に電話をかけることにした。私の電話番号は変わった。もしかしたら、出てくれないかもしれない。
「はい。真壁です」
 三回目のコールであっさり繋がった。
「お疲れ様です。真壁さん」
「ああ。織部か。昨夜は世話になった」
 名乗る前に声だけでわかってくれるとことか、昨夜はって、フレーズだけでドキッとしてしまう。あ、でもこの人、空でお客さんの顔と名前と家と携帯の電話番号が完全に一致する人だ。そりゃ声ぐらい。
「こちらこそ、ご馳走さまでした。あの、お忙しいとは存じますが、近々お会いできませんか」
「どうした? 大人の階段昇った記念に靴でも欲しくなったのか?」
「何をおっしゃっているのか全くわかりません」
「他の男と処女喪失した翌日に俺に営業かけてくるなんて大した女になったな。セカンドバージンでも恵んでくれるのか?」
「してません! なんてこと云うんですか!」
「してない? 嫉妬して嫌味まで云ったのに拍子抜けだ」
 と嬉しそうな笑い声が漏れてくる。
「酷いです。私が傷つくとか考えないんですか?」
「思いきり罵倒して二度と顔を見せるなと言って電話を切ればいい。それに、傷ついても慰めてくれる相手がいるだろ?」
 彼の言葉が胸を刺さる。でもだからってあんな言い方はないと思う。思うけど、怒れない。私は抗議を諦める。
「……昨夜も、やはり眠れなかったんですね」
「眠れると思うか? 嫉妬と寂しさで気が狂いそうだったよ」
 心臓が止まるかと思った。息が詰まってくらくらと頭の中が揺れた。

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