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恋の始め方間違えました。

森野きの子

36

「仕事以外で女から金を受けとりたくない」
「お金を粗末にしたら後で泣きを見ますよ。っていうか私のお金じゃないですから!」
「お前、私の金って言っただろ」
「もう! 屁理屈こねないでください! 仕事のし過ぎでおかしくなってるんじゃないですか? 心療内科とか行ったほうがいいですよ」
「そんなに金それ貰うのが嫌なら仕事しろ。お前が俺を癒せ。まったく。お前もホステスの端くれだろ? “私が癒しますよ”くらい言え」
「うう。なんか納得しづらいぃ」
「ほらほら仕事仕事。可愛げ見せろ」
「私が癒して差し上げますよ、真壁さん」
「おう。頼む」
 と、私の肩に側頭部を当て、一息ついた。変わらない香水の匂い。私の大好きな匂い。ドキドキするのに安心する。
「でも、こんな大金もハイブランドのドレスもいりませんからね!」
「大丈夫。お前が気にすることはない。俺が勝手に貢ぐ愉悦に目覚めつつあるだけだから」
「全然大丈夫じゃないです!」
「いいから黙って仕事しろ。それに無報酬でいいのか? 恋人でも夫婦でもそれなりの応酬はあるぞ? お前は俺のなんなんだ?」
「わかりました。わかりました。少し頭をあげてくださいます?」
 私は横にずれて真壁さんに頭を太ももに乗せなおすように促した。
「オプションいくらだ?」
「そうですね。五千円? くらいですかね?」
「安いな。十倍出したら添い寝頼めるか? いかがわしい行為はなしで」
「えー。考えておきますー」
 さっきの行いのあとに、いかがわしい行為なしなんて言葉信じられない。
「ここ何年も眠れなくなってるんだ。睡眠薬は貰ってるんだけどな」
「え」
「どれだけいい寝具を試してみても駄目だ」
「そんな……。」
 ファミレスの看板が見えると、まだもう少し先なのに、真壁さんは身体を起こそうとする。
「膝枕ってのはなかなかいいもんだな」
「真壁さん。いつもの時間まで、だいたい三時間あります。ちょっと遠回りしてこのまま少し寝てください。眠れそうならの話ですけど……」
 真壁さんが起き上がり、じっと私を見下ろす。
「いいのか?」
「だってこのままじゃ百万円も貰えません。さっきのも、別に、気にしません。子供じゃないんですから」
「……そうか。なら、お言葉に甘えようかな」
 と、電話をかけ始める。
「藤和の真壁と申します。これから二名で空いてますか? そうですか。それではお伺いします」
 電話を切って、運転手に新たな行先を告げる。急な行き先変更だったが、ちょうど信号に捕まり停車したので、運転手さんは後ろからついてきている同僚に行き先変更の電話をし、改めて発進した。


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