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恋の始め方間違えました。

森野きの子

33

「嫌だ」
 鼻先で胸を覆っていた布をずらされ、その拍子でヌーブラがめくれた。ハッと息を吸うと同時に乳首を口に含まれた。
「ん……っ」
 私は背中を弓形にして彼の肩を掴んだ。突き放すこともせず、むしろ、押しつけた。甘噛みにも応えられる程乳首は固くなっていて、舌先で弄ばれると、さらに熱くなった。両足の間の奥がつんと痛く疼く。
 音を抑えつつ、舌と甘噛みの責めは容赦なかった。私は喘ぎをなんとか吐息で逃がし、後先考えず彼の愛撫に耽溺した。彼の手が内腿を撫で回す。指先が濡れた下着の上から押し当てられ、軽い絶頂を迎えた。声を我慢するため、わななきながら逞しい肩をきつく握り締めた。ようやく理性が目を覚ます。ぼやけた視界には悪い色気を帯びた微笑があった。新鮮な空気よりぬめる温かい舌が欲しくてたまらなかったけれど、それを乞うのもなんだか癪でやんわり身体をずらすと、腕から解放された。密着していた身体同士に隙間が空いてその間に涼しい風が流れる。
「酔わせ足りなかったか」
「これ以上酔えません」
 私は呼吸と衣装を整え、髪を撫でつけた。
「そうだな」
「上着、お預かりしましょうか?」
「じゃあ頼む」
 真壁さんは上着を脱いで手渡した。ネクタイを外し、ボタンを二つ外した。その下の鍛えられた肉体を私は知っている。でもそれは過去のもの。
「彼氏が待ってるんだよな」
 ふと呟き、私の手の中の上着を取り戻すと、はだけたシャツの上から羽織る。
「え?」
 今、そんなことをいうの? あんなことをした、あなたが。
 面喰らっている私を置いて身支度を整える。
「あ。そうだ。これやる。セクハラの慰謝料にでもしといてくれ」
 さっき机に放った帯のかかった百枚の新札を目の前に差し出される。

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