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恋の始め方間違えました。

森野きの子

30

「いつも二人でつるんでたし、楽しそうだったよな。お前たち。それでさ、あの騒動のあと、三伴の都市開発プロジェクトの独占契約と、経理課社員の横領が発覚して会長に呼ばれたんだよ。ちょうど益子といたからダメ元で声かけてみたんだ。まさかデートより上司のむちゃぶり優先するなんて思わなかった」
「あー、まぁ、はぁ。そうですね、普通」
「それにあいつ、お前の使うだろう泊まりセットとコンドーム用意してたんだぞ。お前はお前で益子に彼女がいるからって腹いせに俺に来たりするし」
「え、違いますよ。益子は関係ないです。むしろ応援してくれてたんですよ。私の好きな人は」
 真壁さんですからと言いかけて、焦った。いや、過去形でしょ、ここは。
「別にいましたから」
「俺だろ」
 ごまかしたつもりが図星を突かれて心臓が跳ねた。
「いや、俺だった、んだよな。当時もそうなんじゃないかなって思ったりもしたけど、自惚れか願望かわかんねえからどうしようもなかった」
 真壁さんは瞼を伏せて自嘲する。なにを言い出すの、この人。
「俺はお前を抱くつもりだったよ。でも、自棄になって処女を捨てるくらい益子のことが好きなのかって勘違いしたからさ。抱けるわけないじゃん。正直益子に負けたって思ったし、思っていた以上にお前のこと好きだって思い知って混乱した。色恋沙汰であんなに苦しかったこと、あとにも先にもなかった」
 なんてことだろう。私はショックで言葉を失った。あの時、私が変に迷わず素直な気持ちを伝えていたら、こんなことになっていなかった。
「あの頃、忙しすぎて、朝も晩も日付も曜日も曖昧だったけど、お前が、朝のコーヒー入れて起こしてくれるから、なんとか感覚が狂わずやっていけたんだよ。思い返せば結婚失敗した後も、妙に吹っ切れたのお前がいたからだ。あまりに傍にいたから、気づかないようにしてたんだ。お前は俺が手塩にかけて育てた大事な部下だったから」
 彼の口から語られる過去は、自ら行動しなかった私への罰だ。

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