恋の始め方間違えました。
20
「ううん。気にしないで。それより、税理士試験の勉強は大丈夫なの? 貴重な時間だよ無駄にしちゃだめ」
「それって、拒否られてます?」
「そういうわけじゃないけど」
「……なんか、俺ばっか、必死こいてますね」
真くんが少し体をずらす。このまま彼の心がもっと遠ざかっていきそうで怖い。
「あのね、聞いて。私ね、優先順位を間違ってほしくないの。せっかく真くん勉強頑張ってるのに」
「子供扱いやめてください。俺、弟ポジションとか、絶対嫌なんですけど」
少し硬質な声が氷柱のように胸を刺す。
「そんなつもりじゃないよ」
「じゃあはぐらかすのやめてください。今夜、俺の部屋に行くって言ってください」
「……うん。わかった。お店終わったら連絡する」
「違う。それじゃだめ」
下を向くと、真くんが額を合わせるように頭を寄せてきた。鼻の頭を彼の柔らかな髪の毛がくすぐる。
「……お店終わったら、真くんの部屋に行く」
鼻の頭から頬にかけてやたら熱い。三十も過ぎて本気で赤面してカッコ悪い。恥ずかしくて真くんの顔が見れない。
「じゃあ、いつものファミレスで待ってますね」
花が綻ぶようないつもの可愛い笑顔が戻ってほっとした。
「うん」
真くんを見送りに外に出ると、雨が降っていた。
それぞれの看板の灯りが濡れたアスファルトに映り、寂れた路地裏がさらに猥雑な雰囲気を醸している。
表通りまで送って、嫌がる彼に押しつけるように傘を渡した。真くんは二回振り向いて笑顔で手を振ってくれた。
おでこぶつけるとか、にやける。唇を噛みながら踵を返すと、目の前にスーツの胸があってぶつかりそうになった。
「すみませんっ」
半歩下がり、慌てて見上げると、その人の傘の中だった。雨の音も喧騒も胸が弾む気恥ずかしい喜びも消えた。
「それって、拒否られてます?」
「そういうわけじゃないけど」
「……なんか、俺ばっか、必死こいてますね」
真くんが少し体をずらす。このまま彼の心がもっと遠ざかっていきそうで怖い。
「あのね、聞いて。私ね、優先順位を間違ってほしくないの。せっかく真くん勉強頑張ってるのに」
「子供扱いやめてください。俺、弟ポジションとか、絶対嫌なんですけど」
少し硬質な声が氷柱のように胸を刺す。
「そんなつもりじゃないよ」
「じゃあはぐらかすのやめてください。今夜、俺の部屋に行くって言ってください」
「……うん。わかった。お店終わったら連絡する」
「違う。それじゃだめ」
下を向くと、真くんが額を合わせるように頭を寄せてきた。鼻の頭を彼の柔らかな髪の毛がくすぐる。
「……お店終わったら、真くんの部屋に行く」
鼻の頭から頬にかけてやたら熱い。三十も過ぎて本気で赤面してカッコ悪い。恥ずかしくて真くんの顔が見れない。
「じゃあ、いつものファミレスで待ってますね」
花が綻ぶようないつもの可愛い笑顔が戻ってほっとした。
「うん」
真くんを見送りに外に出ると、雨が降っていた。
それぞれの看板の灯りが濡れたアスファルトに映り、寂れた路地裏がさらに猥雑な雰囲気を醸している。
表通りまで送って、嫌がる彼に押しつけるように傘を渡した。真くんは二回振り向いて笑顔で手を振ってくれた。
おでこぶつけるとか、にやける。唇を噛みながら踵を返すと、目の前にスーツの胸があってぶつかりそうになった。
「すみませんっ」
半歩下がり、慌てて見上げると、その人の傘の中だった。雨の音も喧騒も胸が弾む気恥ずかしい喜びも消えた。
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