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恋の始め方間違えました。

森野きの子

19

「あの、涼子さん」
 真くんの神妙な態度に、お金貸してって言われたりして、なんて考えが過ったけれど、それはそれで、まぁいいかと思った。彼の存在は唯一の癒し。失うなら数万円くらいなくなっても惜しくない。
「終わったら俺の部屋に来ませんか」
「へぇ?」
 予想外の言葉に思わず間抜けな声が出た。
「いつもマンションの前でバイバイするから、涼子さんの部屋がだめなら、俺のアパート、狭いし、ボロいけど、ここで会うと涼子さんにお金使わせることになるから……。時間とかお金とか気にしなくて一緒にいられるでしょ? だから……」
 仔犬を彷彿とさせる眼に胸が苦しくなるくらいときめいた。
「……ダメ、かな」
「ううん。ダメじゃないよ」
 悲しげに伏せられた仔犬の眼に慌てて、彼の手を握った。
 思いの外ごつごつした感触にどきりとする。こんなに可愛いのにやっぱり男性なんだ。
「やーん。凜花さん、だいたーん」
 背後からユカリちゃんの声がして、たまらなく恥ずかしくなって手を引っ込めた。
 モデルのようにスレンダーな体つきにダークブラウンのロングヘアとエキゾチックな顔立ちが大人っぽい。二十歳。結愛ゆなちゃんより人気が高い、うちのナンバーワン。
 もし私がこの子だったら、こんなに気恥ずかしく思わなくて済むだろうな。
「俺、ここ好きじゃないんです。涼子さんがいじめられてるみたいで」
「あはは。違うよ。そういう役割なの。ね、たまには飲んだら? 赤ワイン?」
「……いいです。烏龍茶が好きなんで」
「またまたー。そんなわけないじゃない。いつもあそこで赤ワイン頼んでるじゃない。持ってくるからちょっと待ってて」
 立ち上がろうとした私の手を、真くんが強く掴む。
「いいです。涼子さんに迷惑かけたくないです。だからこれからはうちに来てください」
「真くん……」
 直視できないほど真摯な眼差しを向けられる。私は困惑して彼から目をそらした。
 部屋に行くってことは、遠からずするかもしれないってことよね? ゲイじゃない限り彼とセックスする可能性はゼロではない、はず。
 処女であることに負い目を感じているが、こだわるつもりはない。でも、彼とのセックスが想像できない。でも、彼は私となんてしたいと思ってないかもしれない。そうだ。草食系というやつという可能性のほうが高い。彼から性的な空気を感じない。

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