恋の始め方間違えました。
12
「座れば? あ。待て。ほとんど帰ってないから埃してるかもしれない」
といいながら真壁さんはハンドモップで黒革のソファを撫でてくれた。
「いいよ」
「すみません。失礼します」
「いやいや、固い固い」
「すみません。でも、どうしたらいいのかわかりません」
言ってから益子の言葉を思い出した。でも、尊敬してる上司だもん。いきなり部屋に来てくつろげない。
「益子の部屋の方が良かったんじゃないか?」
「え?」
「それに悪かったな。こっちから誘ったのに二時間も遅れた。」
「それは仕事ですし、なにより私がミスしなければその残業はなかったんですよね。すみません」
「別にいいよ。まぁ、益子のデートがキャンセルになったから代打頼んだんだけど正解だったかな」
「すみません。潰されてしまってお恥ずかしい」
「あいつ、飲ませるのものせるのも上手いんだよな」
「お褒めに与り光栄でーす。ボーナス査定よろしくでーす。ところで本命のカノジョから呼び出しかかったんで、失礼します」
「え?」
「は?」
ドアから顔を出した益子の言葉に私と真壁さんの声が重なった。
「あと、真壁さん」
益子がちょいちょいと手招きをする。
二人がドアの向こうへ消えた。ちょっと待って。嘘でしょ? あいつ、なに企んでるのよ。ソファからドアの側に行くと声が聞こえた。
「織部どうすんだよ。せめて駅かタクシー拾えるところまで連れて帰れよ」
「本命のカノジョのとこいくのに他の連れて歩けません」
「ちょっとそこまでだろ」
「真壁さん、どうせ独りでしょ」
「いや、そうだけど、それは違うだろ」
「よろしくっす。織部を女にしてください」
「なにいって……」
私が部屋のドアを開けるのと僅差で玄関のドアがしまり、そこにはビニル袋を提げた真壁さん一人。
気まずい沈黙の中、真壁さんと視線がぶつかる。
「あの、私、か……」
咄嗟にでかかった帰りますの一言を飲み込む。真壁さんに帰れと言われたら話は別だけど、ここで私から言うのは駄目だ。せっかくのチャンスは逃したくない! ……いや、待って。ミスったその日に誘惑すんのってありなの? 不真面目なやつって嫌われたりしない? これってどうなの?
っていうか益子アイツ、織部わたしを女にしてくださいって何様よ。でも、まぁ、私からもお願い申し上げたいところだけれど。
といいながら真壁さんはハンドモップで黒革のソファを撫でてくれた。
「いいよ」
「すみません。失礼します」
「いやいや、固い固い」
「すみません。でも、どうしたらいいのかわかりません」
言ってから益子の言葉を思い出した。でも、尊敬してる上司だもん。いきなり部屋に来てくつろげない。
「益子の部屋の方が良かったんじゃないか?」
「え?」
「それに悪かったな。こっちから誘ったのに二時間も遅れた。」
「それは仕事ですし、なにより私がミスしなければその残業はなかったんですよね。すみません」
「別にいいよ。まぁ、益子のデートがキャンセルになったから代打頼んだんだけど正解だったかな」
「すみません。潰されてしまってお恥ずかしい」
「あいつ、飲ませるのものせるのも上手いんだよな」
「お褒めに与り光栄でーす。ボーナス査定よろしくでーす。ところで本命のカノジョから呼び出しかかったんで、失礼します」
「え?」
「は?」
ドアから顔を出した益子の言葉に私と真壁さんの声が重なった。
「あと、真壁さん」
益子がちょいちょいと手招きをする。
二人がドアの向こうへ消えた。ちょっと待って。嘘でしょ? あいつ、なに企んでるのよ。ソファからドアの側に行くと声が聞こえた。
「織部どうすんだよ。せめて駅かタクシー拾えるところまで連れて帰れよ」
「本命のカノジョのとこいくのに他の連れて歩けません」
「ちょっとそこまでだろ」
「真壁さん、どうせ独りでしょ」
「いや、そうだけど、それは違うだろ」
「よろしくっす。織部を女にしてください」
「なにいって……」
私が部屋のドアを開けるのと僅差で玄関のドアがしまり、そこにはビニル袋を提げた真壁さん一人。
気まずい沈黙の中、真壁さんと視線がぶつかる。
「あの、私、か……」
咄嗟にでかかった帰りますの一言を飲み込む。真壁さんに帰れと言われたら話は別だけど、ここで私から言うのは駄目だ。せっかくのチャンスは逃したくない! ……いや、待って。ミスったその日に誘惑すんのってありなの? 不真面目なやつって嫌われたりしない? これってどうなの?
っていうか益子アイツ、織部わたしを女にしてくださいって何様よ。でも、まぁ、私からもお願い申し上げたいところだけれど。
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