S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

130話 ダーク・ブレード

「くらえぇっ! 【ネクロ・ジャベリン】!!」

 痩身の男がそう叫んだかと思うと、ゾンビと化したチンピラAとBがこちらに跳躍して突撃してきた。
 まるで投げ槍のように鋭い攻撃だ。
 これはまた、予想外の展開である。

「くっくっく……。まさか、こんな手でくるとはな。面白いじゃないか」

 死体を操るC級の傀儡系スキル。
 なかなか興味深い。

「だが、あいにくだな。俺には死体と戯れる趣味はないし、男と戯れる趣味もないんだ」

 俺はゾンビの攻撃を軽く躱し、距離を取る。
 もちろん殴り飛ばせば一撃だが……。
 死体に触れるには汚いからな。
 火魔法で消し炭にするのもいいが、火魔法ばかりというのも芸がない。
 ここは――

「闇よ……」

 ――ズオオォッ!
 俺は魔法を発動する。
 俺の右手が黒い渦に包まれ、その中から巨大な漆黒の刃が飛び出した。

「なんだそりゃ! そんなもん、見たことがねぇぞ! いったい何のスキルだ!?」

「ふん。敵にネタバレするとでも? お前のようなバカといっしょにするな」

 手の内は隠しておくものだ。
 スキルや魔法の発動を容易にするために、最低限の呪文を唱える程度はいい。
 だが、先ほどのコイツのように、自分の手持ちスキルの名前を明かすなど愚の骨頂である。

「はんっ! せいぜい、下級の魔法系スキルだろうが! 俺のC級スキル【ネクロマンス】の方が強いに決まってる! いけっ! ゾンビ共!!」

 男の命令に応じて、再び襲ってくるゾンビたち。

「【ダーク・ブレード】」

 俺はその全てを斬り払う。
 斬られたゾンビたちは倒れることなく、虚空へと消えていく。

「ば、バカなっ! 何なんだ、そのスキルは!?」

「それを考察するのも戦いの醍醐味ではないか。何でも人に聞けば教えてもらえると思うなよ」

「ぐっ……」

 男が怯えた様子で、俺から少し距離を取る。

「どうした? もう終わりか?」

「うるせーっ!! まだまだだ!!」

 男はそう叫び、今度は懐からナイフを取り出した。
 悪くはなさそうなナイフだが……。

「おいおい。そんなちっぽけな刃物で、俺がどうにかなるとでも?」

「粋がっていられるのも今のうちだ! これには強力な麻痺毒が塗ってある!」

「ほう……それは凄いが……」

 ヒュンッ!
 俺は超高速で動き、男の目の前に立つ。
 そして、ナイフを奪い取ったのだった。

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