S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

120話 重要拠点に突撃

「アイシャ。怪しい場所ってのはここか?」

 俺はアイシャと共に、スラムにやって来ていた。
 そして、とある建物の前でそう確認した。

「はい。違法奴隷商はアジトを頻繁に移していますので、確証はありませんが……。少なくとも重要拠点の1つだと思われます」

 アイシャは自信ありげに答える。
 見た感じ、民家にしか見えないのだが……。
 冒険者ギルドの上級職員である彼女が言うなら、それなりに信用できるだろう。

「よし」

 俺は建物のドアの前に立つ。
 そして――
 ドガッ!
 思い切り蹴破った。
 それから中に踏み入り、「よぉ」と言いながら手を挙げる。
 すると、中にいた男たちがわめき出した。

「なんだてめぇは!」

「俺たちが誰だか知ってるのか?」

「なめてんじゃねぇぞ!!」

 などという言葉を無視し、俺は室内を見渡す。
 特に変わった様子はない。
 人の姿もなく、物陰に隠れているということもないようだ。
 俺は大きく息を吸い込んで、宣言する。

「ここは制圧した! 抵抗は無駄だ! 大人しく投降するなら、命だけは助けてやろう!!」

 静まり返った。
 あれ?
 なんか思ってた反応と違うぞ……。

「ぎゃはははは! こいつ、バカじゃねーのか!!」

「何が制圧だよ! ただ入ってきただけじゃないか!」

「おい兄ちゃん、悪いことは言わないから帰った方がいいぜ」

「へへへ。でないと、痛い目を見ることになる」

 4人の男が武器を手に立ち上がる。
 どう見ても無法者だな。
 アイシャの情報は正しかったようだ。

(しかし、こいつらの言うことにも一理あるな。S級スキル竜化を持つ俺からすれば、建物に足を踏み入れた時点で制圧したようなものだが……。確かに外から見れば、ただ入って来ただけに過ぎない)

 仕方がない。
 ちょっと脅すか。

「はぁ……。やれやれ。俺がせっかく警告してやったというのに、なぜそんな態度を取るんだ? まあ、いいだろう。それなら、痛い目をみてもらおうかな……」

「ほざけ!! 死ねええぇ!!!」

 1人が飛びかかってきた。
 同時に、残りの3人も一斉に襲ってくる。
 だが――

(遅い! 遅すぎるっ!!)

 俺にとって、彼らの動きはスローモーション映像のように遅く見えた。
 俺は軽く腕を振る。

 バキッ!
 バキィッ!!
 たったそれだけで、男の身体は木の葉のごとく吹き飛んだ。
 2人目、3人目の男もそれぞれ壁に叩きつけられる。
 4人目に至っては、天井に頭をぶつけて埋まっている。

 無事な者はいない。
 全員が意識を失っているようだ。
 適当に起こして、さっさと情報を集めようか。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品