S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

111話 無力な存在というのは愛おしいものよ

「ほう! ライルはそやつとの間に子をなしたのか?」

 村の女たちやサテラと楽しんだ翌日、俺はサテラやサティと共に村を出発した。
 そして無事にストレアに戻り、リリアに状況を報告した。

「ああ。俺も予想外だったが……。こうして見ると、可愛いものだな」

 最初に見たときに殺そうかどうか少し悩んだのは内緒だ。

「それでその子は何と言うのだ?」

「サティだよ。サテラとライルの娘だからな」

「ほう。いい名前ではないか」

「ありがとうよ」

 俺はサティに目を向ける。

「あうー」

「ほらほら、いい子いい子」

 サテラがサティをあやしている。
 今はまだ小さいが、これからもっと大きくなるだろう。
 そう考えると、ちょっと楽しみになってきた。

「ちなみになんだが、リリアはこういうことを気にしないのか?」

「む? ライルが小娘と遊んだところで、余は関知せぬぞ。いずれは余との間にも子をなしてほしいものだがな。今はまだその時でない」

 リリアは竜王だ。
 そして俺はS級スキル竜化を持つ。
 俺たちの子どもは、きっととんでもない才覚を持つ子になるのではないだろうか。

「そんなことより、ライルよ。こやつが増えたことで、シルバータイガーの捕獲作戦は成功率を増したかもしれん。だが、まだ足りんであろう?」

「そうだな。あと何人かは人手を確保するつもりだ」

「それならば、冒険者ギルドに顔を出してやるがよい。例のあの……ええと……」

「うん?」

「あーっと、そう、アイシャじゃ。アイシャがライルを探しているはずだ」

「アイシャ? ああ、ギルド職員のあいつか」

 ギルマスの娘だな。
 俺の盗賊討伐の旅にも同行させたことがある。
 あいつにも”竜の加護”は与えているし、俺に従順だ。
 俺が頼めば――いや、俺が命令すれば喜んで力を貸すだろう。

「よし、わかった。明日、冒険者ギルドに顔を出すことにする」

「うむうむ。それが良いぞ」

「リリアはどうするんだ?」

「余はこやつ――サティの相手をしてやる。サテラと共にな」

 リリアはサティを抱くと、その頬に口づけをした。
 結構可愛がっているなぁ。
 サティの才覚はぼちぼち程度だろう。
 父親はS級スキル竜化持ちの俺だが、母親はただの村娘だからな。
 竜王リリアからすれば、サティなど格下でどうでもいい赤子だと思っていたのだが。

「リリア様、サティを可愛がってくださりありがとうございます」

「うむうむ。無力な存在というのは愛おしいものよ」

 ああ、なるほど。
 リリアがサティに向ける感情は、一般的な人族が子犬や子猫に向けるあれに近いんだな。
 俺はそう理解したのだった。

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