S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

34話 は、速いです! 怖いです!!

 翌朝。
 俺たちは、さっそく盗賊団の根城に向けて出発する。
 メンバーは俺とリリア、それにギルマスの娘だ。

「よう。ずいぶんと早いじゃないか」

「お、おはようございます。ライル様、リリア様。お待たせするわけにはいきませんので、早めに待機しておりました」

 ギルマスの娘がそうあいさつをしてくる。
 ずいぶんと殊勝な態度だ。
 昨日の俺の威圧がそれほどキツかったのか?

「今日は漏らすなよ」

「も、漏らしません! ちゃんと対策もしています!」

「それならいい。……ところで、あんたは何ができるんだ?」

「へ? あ、はい! 私は隠密行動や索敵能力に秀でています。それに、このあたりの地理も頭に入っております。道案内はお任せください」

「ふむ。期待しておこう」

「ではさっそく、こちらの馬車にお乗りください。昨日のうちに御者も手配しておきました」

 女がそう言って、傍らの馬車を見る。

「せっかく用意してもらったところ悪いが、不要だ」

「はい? あの、それはどういうことでしょうか?」

 首を傾げる女を俺は抱き上げる。

「ひゃっ!? ラ、ライル様……。まだ朝ですし、そういうことは早いですよぅ……」

「……」

 何やら勘違いしている様子の女を無視して、そのまま肩の上に担ぎ上げた。

「御者よ。悪いが予定はキャンセルだ」

 俺はそう一声掛けてから、街の外に向けて走り出す。
 もちろんリリアも付いてきている。

「ひぃいいいっ!! は、速いです! 怖いです!!」

「我慢しろ。街の外に行くだけだ」

「そ、そんなこと言われましてもぉおおおっ!!!」

 俺の疾走に、女が悲鳴をあげる。
 それからものの数分で、俺たちは街を出た。
 さらにしばらく進んでいく。

「よし。ここまで離れれば大丈夫じゃろう」

「そうだな。リリア」

 俺とリリアは互いに顔を見合わせ、そう言う。

「な、何が大丈夫なのでしょうか? 街からずいぶんと離れましたが、まだまだ先は長いです。一度引き返し、やはり馬車を利用した方が……」

 女がそう言う。

「だから馬車は不要だと言っているだろう」

「では、どのように向かわれるのです?」

「空を飛んでいくのだ」

「…………。えぇー!?」

 驚く女を尻目に、俺はドラゴン形態へと変身する。
 背中に女を乗せると、空に飛び上がった。
 もちろんリリアも竜化している。
 そして、そのまま目的地の方面に向かって進んでいく。

「うひゃああああああ!! 飛んでる、私、飛んでいます!!」

 女が騒いでいる。
 ヒイヒイ言いながらもかろうじて進むべき方向は示している。

「やはり、飛んでいくのが早いな」

「そうじゃの。街の近くでは飛べんかったからの」

 俺はリリアとそんな会話をしながら、空を進んでいく。
 やがて、前方に目的の場所が見えてきた。

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