S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

19話 そ、それはギガント・ボア!?

 冒険者ギルドで登録を済ませた。
 先輩冒険者に絡まれたので、軽く蹴散らしておいたところだ。

 シルバータイガーの情報を収集するためには、Bランク以上になる必要がある。
 魔物の討伐歴に応じて、ランクアップ査定があるらしい。

「これはどうだ? 近くの山で狩った魔物だ」

 ドシン!
 俺はアイテムバッグからギガント・ボアの死体を取り出し、床に置く。

「なっ! ななな……」

 受付嬢が口をあんぐりと開けて、驚いている。
 確か、ギガント・ボアはA級の魔物だったか。
 あの山の途中で立ち寄った村では、肉を提供して感謝されたことがある。
 栄養や魔力が豊富に含まれているらしい。
 何より、味がいい。

「そ、それはギガント・ボア!? ライル様、どうやってこれを?」

「ん? だから、近くの村で狩ったと言っているだろう」

「ギガント・ボアは、この近くの山には生息していません! 相当な高山でないと……。もしや、『雪原の霊峰』ですか?」

「ああ、確かそんな名前の山だったな」
 
 俺とリリアは、竜化状態の飛行能力で竜王国からここまでやってきた。
 竜が人々に視認されると、大騒ぎになる可能性がある。
 そのため、わざわざ人目につかない高山に降り立ち、竜化状態を解いて下山してきたのだ。

 あの山には、そこそこサイズ感のある魔物がたくさんいた。
 S級スキルを持つ俺や竜王であるリリアの敵ではないが、一般的には苦戦必至な魔物なのかもしれない。

「ギ、ギガント・ボアを倒せる新人……。これは凄まじいですね……」

「どうだ? Bランクに昇格できそうか?」

「い、いえ……。ギガント・ボアはA級の魔物ですので、この功績が無事に認められればAランクすら見えますが……」

「ふむ。なら、早く上げるといい」

 極端に目立つと、ブリケード王国に気づかれて追手を差し向けられる可能性がある。
 とはいえ、いつまでも低ランクでまごついているつもりもない。
 ある程度は成り行きに任せよう。

「い、言いにくいことですが、これだけなら功績が認められない可能性があります」

「なぜだ?」

 俺は受付嬢をジロッとにらむ。

「と、討伐済みの魔物をアイテムバッグから出しただけでは、死体をたまたま拾ったり、他の冒険者から購入した可能性が残るからです」

「ふむ。しかし、そんなことを言い出せばキリがないだろう。完全に証明することなどできはしない」

「ええ。基本的には、死体や討伐証明部位を提出した時点で功績は認められます。しかし、ライル様とリリア様は本日ご登録されたばかりの新人ですので、審査の目が少し厳しくなるかもしれません。買取金額は適正額を提案させていただきますが、ランクアップ査定となりますと……」

 受付嬢が言うことにも、一理はある。
 まずは低ランクや中ランクの依頼をこなして、信頼を得る必要があるということか。

「わかった。買取はしてもらうが、功績の審査は保留でいい。まずは、低ランクの依頼からこなしていくことにしよう」

「は、はい。そうしていただけると助かります」

 受付嬢がほっと胸をなでおろす。
 彼女にしても、俺の実力を心の底から疑っているわけではないのだろう。
 何しろ、目の前でCランク冒険者たちを一蹴したところを目撃したのだから。

 しかし、それを直接見ていない冒険者ギルドの上層部は、話が別だ。
 俺の功績を認めない可能性がある。
 受付嬢にしても、上層部と俺との板挟みで苦しい胸の内だったのかもしれない。

「それで、何かいい依頼はあるか?」

「ええっと……。Eランクの『薬草の採取』や、Dランクの『ゴブリンの討伐』などがいいと思います。ライル様であればもっと高難度の依頼も可能かとは思いますが、なにぶん初依頼ですので……」

「わかった。それでいい。受注の処理をしてくれ」

 俺はそう言う。
 CランクやBランクの依頼をこなしたところで、結局は先ほどのギガント・ボアのようなやり取りが繰り返されるだけだろう。
 それなら、まずは低ランクの依頼をこなしていくべきだ。

 まあ、数日程度こなしてやれば、最低限の信頼は得られるだろう。
 そうなれば、Cランク以上の依頼をこなしていけばいい。
 簡単な仕事だ。

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