S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ
7話 希望/竜王リリアとの出会い
ふと目が覚めると、知らない天井が目に入った。
「ここはどこだ……?」
俺は状況の把握に務める。
俺の最後の記憶は……。
よく思い出せない。
「目が覚めたか。少年よ」
俺が思考を巡らせているとき、横から声が掛けられた。
女性の声だ。
俺は声がした方向に目を向ける。
20代くらいの妖艶な美女がいた。
「あなたは?」
「余はリリアじゃ。リリア・バルバロス・ルイガンハルド竜王三世と言えば、人族にも伝わるかの?」
俺の問いに、女性がそう答える。
「竜王だって? 嘘はやめてください。人知を超えた竜たちの王が、なぜ人の姿をしているのです?」
「ふふ。それはもちろん、余が【人化】のスキルを持っているからじゃ。さほどめずらしいスキルではないからのう。余の配下にも、数名は持っている者がおるぞ?」
確かに、彼女にはどことなく竜の気配がある。
頭には、立派な角が生えているし、体から立ち上る闘気と魔力は竜王のそれと言われても納得できるものだ。
「それで、その竜王様がなぜ人族である俺を助けたのです? 竜族にとって、人族など取るに足らない存在でしょうに」
俺はそう言う。
竜は、人族が束になっても敵わない超常の存在だ。
そして、その竜たちの王である竜王ともなれば、なおさらである。
俺は彼女にずいぶんと失礼な口を聞いているが、竜王であるらしい彼女が本気になれば、俺などは一瞬のうちに殺されてしまうだろう。
「お前さんに興味が湧いたからじゃ。お前さん、もしや【竜化】のスキルを持っているのではないか?」
「ええ……。確かに、俺は竜化のスキルを持っていますが」
なぜ知っているのだろう。
俺はまだ竜化のスキルを使いこなせていない。
それが原因で、ブリケード王家から追放されてしまったぐらいだ。
「やはりそうか! 竜化状態で暴れ回るお前さんを見ておったぞ。パワーだけならば余に引けを取らんぐらいであった。相手の人族が哀れに感じるぐらいにはな」
「竜化状態で俺が暴れ回った……? あ、ああああぁっ!!!」
その瞬間、俺は全てを思い出した。
俺は、ルーシーを失ったのだ。
それだけじゃない。
ダストン、ツルギ、ヤエ。
ルーシーの両親、村長、ヤエの両親。
そして、他のみんな。
彼女たちは、ガルドによって殺されてしまった。
もう生き返ることはない。
そして、ガルド自身も俺が息の根を止めた。
もはや復讐相手すら残っていないというわけだ。
俺は、胸にぽっかりと穴が空いてしまったかのような空虚な気持ちに襲われる。
「ぐっ。ううっ……」
「ふむ……。やはり、あの場所で大切な者を失ってしまったようじゃな。詳しい経緯は知らぬが、状況からある程度は察せるわい。復讐のために力を使い果たしたお前さんを、余がここまで運んできて介抱してやったというわけじゃ」
リリアがそう言う。
「ど、どうして……」
「ん?」
「どうして、あのまま死なせてくれなかった! 俺にはもう帰る場所がない! 生きる意味も希望もない! こんな世界、生きるだけ無駄だ!」
俺はそう叫ぶ。
竜化状態を解除して力尽きたまま放置されていれば、今ごろは魔物に襲われたり衰弱したりで既に死んでいた可能性が高い。
ルーシーたちとともに、俺も眠らせてほしかった。
リリアに非はない。
彼女は、倒れた俺を介抱してくれただけなのだから。
しかし、俺はこの激情をぶつける相手がほしかった。
「そう言うな、お前さんよ。生きる希望はあるぞ」
「生きる希望!? そんなものはない! あると言うのなら、それが何か言ってみろ!」
ブリケード王国に平和と繁栄をもたらすために、俺は必死に勉学と鍛錬に励んできた。
しかし、父上によって第一王子の身分を剥奪され追放されてしまった。
ルーシーの村にたどり着き、そこで平民として第二の人生を歩むのも悪くないかと思った。
しかし、第二王子であり俺の弟であるガルドが村を襲撃し、ルーシーたち村人は皆殺しにされてしまった。
「それは余じゃ。余がお前さんと結婚して、伴侶として導いてやろうぞ」
「ふざけているのか!?」
何が伴侶だ。
「いや失敬。気が早かったか。……お前さんは、最上級の氷魔法がどのようなものか知っておるか?」
「……知らん。中級のアイシクル・スピアや、上級のエターナル・ブリザードなら知っているが」
俺自身は氷魔法を使えないが、座学として知識だけはある。
「最上級の氷魔法は、アブソルート・ゼロという。全てを凍らせる強力な魔法じゃ。一説には、時間さえ止めるという」
「それがどうした。俺の生きる希望とやらと、関係があるか?」
俺はそう言う。
「この世には、エリクサーという最上級の回復薬がある。死後数日以内の者であれば、死者すら蘇らせる回復薬じゃ。材料は入手困難なものばかりじゃがの」
「…………! つまり……」
「ようやく察しがついたようじゃの。余のアブソルート・ゼロにより、あの地は時が止まっておる。あとは、何とかしてエリクサーを手に入れれば、お前さんの大切な仲間を蘇生できるやもしれぬ」
リリアがそう言う。
希望を見出して、世界に色が戻ってきたように感じられた。
「希望が見えてきた。俺はそのために生きていくことにする。……しかし、リリアさんはなぜ俺のためにそこまでしてくれるのです?」
「それはもちろん、お前さんのことが気に入ったからじゃよ。まあ、竜化スキルの所有者から得られるであろう利益に対する打算もあるがの。……あと、余のことは呼び捨てでよいぞ。敬語も要らぬ」
リリアがそう言う。
思い返せば、彼女には八つ当たり気味にいろいろと乱暴な言葉を投げつけてしまった気がする。
反省しないと。
俺の生きる目的は、ルーシーたちを蘇生させて再び人生を歩むことだ。
そのためには、エリクサーが要る。
エリクサーを調合するためには、何やら希少な素材がたくさん必要らしい。
これから、いろいろとがんばっていかないとな。
そして、恩があるリリアの要望には、できる限り応えていきたい。
忙しい日々になりそうだ。
「ここはどこだ……?」
俺は状況の把握に務める。
俺の最後の記憶は……。
よく思い出せない。
「目が覚めたか。少年よ」
俺が思考を巡らせているとき、横から声が掛けられた。
女性の声だ。
俺は声がした方向に目を向ける。
20代くらいの妖艶な美女がいた。
「あなたは?」
「余はリリアじゃ。リリア・バルバロス・ルイガンハルド竜王三世と言えば、人族にも伝わるかの?」
俺の問いに、女性がそう答える。
「竜王だって? 嘘はやめてください。人知を超えた竜たちの王が、なぜ人の姿をしているのです?」
「ふふ。それはもちろん、余が【人化】のスキルを持っているからじゃ。さほどめずらしいスキルではないからのう。余の配下にも、数名は持っている者がおるぞ?」
確かに、彼女にはどことなく竜の気配がある。
頭には、立派な角が生えているし、体から立ち上る闘気と魔力は竜王のそれと言われても納得できるものだ。
「それで、その竜王様がなぜ人族である俺を助けたのです? 竜族にとって、人族など取るに足らない存在でしょうに」
俺はそう言う。
竜は、人族が束になっても敵わない超常の存在だ。
そして、その竜たちの王である竜王ともなれば、なおさらである。
俺は彼女にずいぶんと失礼な口を聞いているが、竜王であるらしい彼女が本気になれば、俺などは一瞬のうちに殺されてしまうだろう。
「お前さんに興味が湧いたからじゃ。お前さん、もしや【竜化】のスキルを持っているのではないか?」
「ええ……。確かに、俺は竜化のスキルを持っていますが」
なぜ知っているのだろう。
俺はまだ竜化のスキルを使いこなせていない。
それが原因で、ブリケード王家から追放されてしまったぐらいだ。
「やはりそうか! 竜化状態で暴れ回るお前さんを見ておったぞ。パワーだけならば余に引けを取らんぐらいであった。相手の人族が哀れに感じるぐらいにはな」
「竜化状態で俺が暴れ回った……? あ、ああああぁっ!!!」
その瞬間、俺は全てを思い出した。
俺は、ルーシーを失ったのだ。
それだけじゃない。
ダストン、ツルギ、ヤエ。
ルーシーの両親、村長、ヤエの両親。
そして、他のみんな。
彼女たちは、ガルドによって殺されてしまった。
もう生き返ることはない。
そして、ガルド自身も俺が息の根を止めた。
もはや復讐相手すら残っていないというわけだ。
俺は、胸にぽっかりと穴が空いてしまったかのような空虚な気持ちに襲われる。
「ぐっ。ううっ……」
「ふむ……。やはり、あの場所で大切な者を失ってしまったようじゃな。詳しい経緯は知らぬが、状況からある程度は察せるわい。復讐のために力を使い果たしたお前さんを、余がここまで運んできて介抱してやったというわけじゃ」
リリアがそう言う。
「ど、どうして……」
「ん?」
「どうして、あのまま死なせてくれなかった! 俺にはもう帰る場所がない! 生きる意味も希望もない! こんな世界、生きるだけ無駄だ!」
俺はそう叫ぶ。
竜化状態を解除して力尽きたまま放置されていれば、今ごろは魔物に襲われたり衰弱したりで既に死んでいた可能性が高い。
ルーシーたちとともに、俺も眠らせてほしかった。
リリアに非はない。
彼女は、倒れた俺を介抱してくれただけなのだから。
しかし、俺はこの激情をぶつける相手がほしかった。
「そう言うな、お前さんよ。生きる希望はあるぞ」
「生きる希望!? そんなものはない! あると言うのなら、それが何か言ってみろ!」
ブリケード王国に平和と繁栄をもたらすために、俺は必死に勉学と鍛錬に励んできた。
しかし、父上によって第一王子の身分を剥奪され追放されてしまった。
ルーシーの村にたどり着き、そこで平民として第二の人生を歩むのも悪くないかと思った。
しかし、第二王子であり俺の弟であるガルドが村を襲撃し、ルーシーたち村人は皆殺しにされてしまった。
「それは余じゃ。余がお前さんと結婚して、伴侶として導いてやろうぞ」
「ふざけているのか!?」
何が伴侶だ。
「いや失敬。気が早かったか。……お前さんは、最上級の氷魔法がどのようなものか知っておるか?」
「……知らん。中級のアイシクル・スピアや、上級のエターナル・ブリザードなら知っているが」
俺自身は氷魔法を使えないが、座学として知識だけはある。
「最上級の氷魔法は、アブソルート・ゼロという。全てを凍らせる強力な魔法じゃ。一説には、時間さえ止めるという」
「それがどうした。俺の生きる希望とやらと、関係があるか?」
俺はそう言う。
「この世には、エリクサーという最上級の回復薬がある。死後数日以内の者であれば、死者すら蘇らせる回復薬じゃ。材料は入手困難なものばかりじゃがの」
「…………! つまり……」
「ようやく察しがついたようじゃの。余のアブソルート・ゼロにより、あの地は時が止まっておる。あとは、何とかしてエリクサーを手に入れれば、お前さんの大切な仲間を蘇生できるやもしれぬ」
リリアがそう言う。
希望を見出して、世界に色が戻ってきたように感じられた。
「希望が見えてきた。俺はそのために生きていくことにする。……しかし、リリアさんはなぜ俺のためにそこまでしてくれるのです?」
「それはもちろん、お前さんのことが気に入ったからじゃよ。まあ、竜化スキルの所有者から得られるであろう利益に対する打算もあるがの。……あと、余のことは呼び捨てでよいぞ。敬語も要らぬ」
リリアがそう言う。
思い返せば、彼女には八つ当たり気味にいろいろと乱暴な言葉を投げつけてしまった気がする。
反省しないと。
俺の生きる目的は、ルーシーたちを蘇生させて再び人生を歩むことだ。
そのためには、エリクサーが要る。
エリクサーを調合するためには、何やら希少な素材がたくさん必要らしい。
これから、いろいろとがんばっていかないとな。
そして、恩があるリリアの要望には、できる限り応えていきたい。
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