【短編】知識の崩壊
知識の崩壊
持ち歩く金属の箱。
たったひとつでも、言語というアクセスキーを持っていれば、地球上どこでも世界図書館に繋がれる。
閲覧できる情報は無限大、貸出期間はありません。
かつては足を運び、膨大な紙媒体をあさっていた人類もこんな便利なシロモノがあれば使うだろう。
聞けばすべてを教えてくれる知の番人。
誇張抜きでWalking Dictionaryなスマートなやつ。
はて、こんな強記憶な友人を片手にもつ私たちに、知識を保有しつづける役目は残っているのだろうか。
世界はおぞましい速度で知識を殺していく。
今も、この1秒も……あぁ、また知識の息が細くなった。
窒息した知識、ありもしない価値を見つづける人。
必要なのは知ではなく、用法なのだと何故気づかない。
30年も前からわかってた。
知識の崩壊。
人はもうじき暗闇への執筆から卒業するだろう。
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