【完結】ロリコンなせいで追放された魔術師、可愛い愛弟子をとって隣国で自由気ままに成りあがるスローライフ!

ノベルバユーザー542862

第37話 盗まれた魔導書


魔術大学からパールトン邸へ帰宅した。

制服の黒ローブを壁にかけ、帝国魔法省の長老たちから奪った機密公文書を、貸し出されている私室の机のうえに広げる。

ーーコンコンッ

「ん、どうぞ」

ノックの音にふりかえり、入室の許可をだす。

すぐに聞き覚えのある声で返事が返ってくると、ドアは開から、お盆をもった黒髪のメイドが部屋へとはいってきた。

「本日もお疲れ様でした。サラモンド先生」

「いえ、学校にいかせてもらえている身ですので、お気遣いなく。紅茶ありがとうございます」

机に置かれたティーカップを口元へ運ぶ。

「おや、サラモンド先生、なにしているのですか?」

「ああ、これですか。あんまり大声じゃ言えないんですけど……ちょっと帝国の機密文書を拝見してたんです」

「え、帝国ってゲオニエス帝国ですか? それってサラモンド先生が、いぜん務めていた魔法省がある場所じゃないですか」

「ええ、ちょうどついさっき、まえの職場の人間と会いまして、なんでローレシアを訪れたのか尋ねたのに、教えてくれないんで、自分で調べることにしたんですよ」

アヤノは「それ平気なんですか……?」と、心配した顔でいいつつも、機密だって言ってる公文書をのぞき込んでくる。

秘密の香りがすると、自ら首を突っ込みたくなるのは使用人のさがなのか。

「なんて書いてあるんです?」

「うーむ、見たところ……被害届け、ですかね。あるいは文句を言う非難文書……『うちの魔導書がなくなった! どうしてくれるんだ、ローレシア魔法王国!』という趣旨のものですね」

俺は頬杖をつき、目頭をマッサージ。

「あはは、面白い非難をされるんですね、帝国の魔法省の方たちは。ローレシア魔法王国が、帝国の魔導書を盗んだっていいたいのでしょうかね」

「……えぇ、多分そうですよ。彼らは魔術の発展に貪欲だ。そしてその知識と研究成果の保存と隠匿にもね。他国に流出するようなことは、彼らがもっとも嫌いとするものの一つです」

アヤノはため息をつき、最後に面倒ごとに巻き込まれないよう注意を促してくると、おぼんを抱えて部屋を退出していった。

普通に考えれば魔法王国が、帝国ごときの魔法技術を盗むなんて百害あって一理なしだ。

独特の発展を遂げた知識や、魔法体系はたしかに魅力的だが、ローレシアの教育水準、
そしてその研究者たちの意欲と成果をみれば、魔法界の権威はいまだにこちらに100%傾いているといえる。

もし仮にゲオニエスから魔導書なんて盗みだす奴がいたら、それはきっと変わり者か、気まぐれで行動しちゃうやつだろう。

イスカら腰をあげて、書棚に歩みよる。

「そう、俺のような気まぐれなやつだけだよな……」

本棚にバッチリおさまってる魔導書を手に取って、俺は深いため息をついた。

「チッ……持ってくるんじゃなかった」

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