【完結】ロリコンなせいで追放された魔術師、可愛い愛弟子をとって隣国で自由気ままに成りあがるスローライフ!

ノベルバユーザー542862

第8話 硝子屋さん


さまざまな形状のガラスがならぶ棚。

カウンターの奥にひかえる筋骨隆々のにいちゃんが、微笑ましいものを見る目で、レティス、そして俺たちをみてくる。

「はっはっ、これはにいちゃん、可愛いらしい夫婦がやってきたもんだ!」
「軽口たたいてると、あたまをガラスに変えてしまいますよ?」

メイドのアヤノはスッと腰から短杖をぬき、圧倒的バルク誇る兄ちゃんへ、その先端をむけた。

店主はいっしゅん目を見開き……、

「すみませんでしたぁぁぁあーッ!」

全力の土下座で、視界からフェードアウト。
カウンターの下からひょこっと顔をだして、こちらをうかがいながら、プルプル震えている。

「アヤノぉー! なんであのお兄さんガクガクしてるのぉー?」
「お嬢様、それは彼が口先マッチョだったからですよ」
「へぇー! お兄さん口先まっちょだったんだねぇ!」

なにその単語。はじめて聞いたけど。

「お客相手に、あまりナメたこと言わない方がいいです。あいては魔術師かもわからないですから」

アヤノはそう言って店主に忠告すると、杖を腰のホルダーに差しこんだ。
店主もぶんぶん首を振ってるので、金輪際うかつなことは言わないだろう……というか、アヤノさん、そんな怒ることでしたかね?

「サリィ! わたし、この瓶がいいなー!」

レティスの持ちあげたのは、大きなフラスコ。
持ってみた感じ、なかなか重たい。
強度は十分だろう。

「レティスお嬢様、それではこれにしますか」
「ねぇ、サリィ! こっちのも可愛いと思うのぉー!」

次に渡されたのは、蒸留酒などを一気飲みするときに使う、ショットグラス。

たしかに小さくてかわいい。
レティスお嬢様も小さくてかわいい。

よし、買ってしまおうか。

「いいですよ〜」
「あ、サリィ、こっちのも欲しいわぁ!」
「ええ、もちろん、いいですよ〜」
「こっちの棚にあるのぜーんぶちっちゃくて、かわいいー!」
「レティスお嬢様のほうが可愛いですよ〜」
「あの、サラモンド先生……? そんなにいっぱい買っても仕方ないような……エゴスさんから頂いたお金には限りがありますので」

心配そうな顔で、財布の紐をゆるめるアヤノ。
俺はそんな彼女へ満面の笑みをむける。

「アヤノさん……ちょっと静かにしててくださいね〜」
「ぐっ! なんかむかつく……ッ!」

歯軋りするアヤノをすげなく、俺はレティスの欲しがるすべてを、杖をふってカウンターへと運んだ。

会計がおわり、金髪数枚分のガラス容器を買いそろえる。

「これだけあれば十分ねー!」
「あの……お嬢様、これはいったい誰が持つんですか……?」

アヤノが俺とレティスを交互に見つめてくる。

レティスはキラキラした眼差しで、心中おだやかじゃないメイドへ笑顔を届けている。

「俺には護衛の仕事がありますゆえ」
「っ、なんてタチの悪い甘やかし……っ!

俺はアヤノさんに、またしても嫌われてしまったようだ。

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