【未完結】魔弾の狙撃手〜怪物ハンターは漏れなく殺そうとした美少女たちに溺愛されていきます!〜

ノベルバユーザー542862

第6話 オオカミ少女と錬金術師


明るい街道のまんなかで、肩で息をしながら背後から追ってくる気配をさぐる。

我ながら情けないくらいの全力ダッシュだった。
けれど、これは仕方ない。吸血鬼だもの。

「ふう、どうやら追っては来てない、な。よかった、なんとか助かったか」

安心して一息つく。
手にもった歪んだサーベルを支えに、汗をぬぐい、髪をかきあげる。

いやはや、それにしても町の近郊に吸血鬼が潜んでいるとわかったのは、ある意味では幸運だった。

そして、あの個体が素晴らしい美少女だとわかったのも幸運だった。

「悲しいが、吸血鬼相手には手加減などできない。次あった時は、必ずどちらかが死ぬだろう」

呼吸を整えて、森の奥をいちべつ。
出没地点をさりげなく脳裏に刻んでから、駆け足でマラマタへの帰路をはしりだした。


⌛︎⌛︎⌛︎


ーー錬金術師ローグの視点ーー


あの若造、大丈夫だろうか。
急ぎの様子でいたと思ったが、まさか重傷の仲間がいたとはな。それも、混血の娘。

「痛い、痛いよ……がぅ」
「ふん……ほら、干し肉じゃ。これでもしゃぶって気を紛らせておけい」

寝台で眠る混血の娘が、目を煌めかせ、尻尾をやかましく振りみだして、おおきく口を開いた。

「ぎゃああ!? これこれ、馬鹿者、わしの手を噛むな! ぐ、おぬし、ついに本性をあらわしあったか?!」
「がじがじ、ぁ、そっか、もう人間食べちゃダメなんだ。ごめんなさい、お爺さん、許してワン。がう」
「もう……? むぅ、不穏ないいまわしじゃが預かるといった以上は、追い出すわけにもいかん。いい、許す。じゃから、もうそこでゆっくりしておれ」
「うんうん、そうする! がうがう!」

ふん、やはり、野生のけだものよな。
あんなに幸せそうに、肉にがっつきおって。

ふん、ふん、ふーん。

「ぷはぁ、美味しかった、がうがう♪ ……ん、これなんだろ。あーッ!! これ、これ、お爺さん、これご主人と同じやつだーッ!」

寝台のしたから箱を取りだし、混血の娘は興味深そうになかの物をとりだした。

「こらこらこら、何もするなと言ったじゃろうが! 大事にしまってあるんじゃから、もう」

本当に余計なことしかせんクソガキじゃな。
あの銀人も銀人なら、その従者も従者ということかの。

「お爺さん、すごく優しい目だね。がう。それ大事なものなの?」
「ん、優しい目、か。わしは今はそんな目をしておるか?」
「うん! ご主人はそれ持ってると死んだ目するんだけど、お爺さんは優しい目をするんだね! がうがう、人間って面白いがう!」

そうか、そうか、わしは優しい目をしていたか。
こんなわしにもまだそんな瞳が残っていたんかの。

手入れの行き届いた綺麗なバレルを指でなぞる。
かつての思い出の一部を回想しながら、を再び大事に箱にしまった。

「ふん、キナコ二世、とか言ったか。馬鹿げた名前のおぬしへの同情じゃ。工房で火を起こしておるから、何か作ってやる」
「つくる? 作るって何つくる、がう?」
「おぬしにとって良い物じゃ。いいからそこで待っておけい。せいぜい、あの銀人の無事を祈っておるんじゃな」

ーーガチャ

そう言った途端に帰ってくるから間が悪いの。

カウンターに出て、店先から入ってくる息を切らした偉丈夫の青年を見あげる。

「ふん、なんじゃ、生きておったか、銀人。夜更けにはほど早いが、ちゃんと薬草は取ってきたんじゃろうな?」

銀人は汗をぬぐい、草汁が染みる布袋をどさっとカウンターに置いた。

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