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【完結】やりこんだ死にゲーに転生、ただし【モブ】です〜ご存知″フロムハードウェア″の大傑作『フラッドボーン 』に転生した件〜

ノベルバユーザー542862

第2話 変わったエドウィン


草原で起こされるなり、俺はマーシーについていって、うわさの塾へ向かうことになった。

道中、この異世界の街並みに、みょうな既視感を覚えた。

まるで第二の故郷のような気分になった。

理由はわからない。

エドウィンはこれまで、あまり物事を知ろうとせず生きてきたらしい。断片的なログインボーナスも相まって、記憶は判然としている。

かわりに変な設定用語ばかり記憶に入ってくる。
なんだこれは? やけに厨二チックだが。

唯一正確にわかるのは、ここは異世界だということ。

あまりにも現実離れした、谷と谷との間に無数の陸橋がかけられた、ファンタジー都市がその事実を教えてくれた。

「あれ、やっぱり、ここ……」
「エド、はやくしないと! また遅刻したらほんとうに塾をやめさせられちゃうよ!」

この街の風景は『フラッドボーン』のメイン舞台″バーナム街″にとてもよく似ている。


⌛︎⌛︎⌛︎


マーシーに連れられ、俺は塾へとやってきた。

塾につくと、みんなが俺のことを見てクスクス笑い出した。

同年代の友達から……いや、知り合いたちにはこのエドウィンは好かれてないのは、彼自身の記憶から把握済み。
特段驚くことはなかった。
頭が悪く、自尊心の塊、こじらせ、ロンリーウルフ。

それが、エドウィンという残念な青年だ。

「よいしょっと」

マーシーが机と椅子を2人分、部屋の角から取ってくる。

机のうえをパンパンっと叩き、ニコッと笑ってくれた。

「一緒に座ってくれるのか?」

俺は記憶をさぐり、これが日常だとしりつつも、つい聞いてしまう。

「当たり前だよ、エドとわたしは″カップル″なんだから!」

カップル。
その言葉に思わずドキッとしてしまう。

普段のエドウィンなら「うざい。俺たちは他人だろ」と彼女の可愛げのあるジョークにマジレス毘沙門天びしゃもんてんしてかえすか、
あるいは無視して、彼女がもってきた椅子に偉そうに座るだけだ。

自尊心が高く、何もしてないのに、何かをできる気でいるアホたれ。

それが、エドウィン青年の記憶を手に入れた俺の、彼に対する評価。

顔だけやたら二枚目なので、さらにナルシストな点も加わって、地元では、誰もエドウィンの相手などしない。

マーシー以外は。

「えへへ、今日は否定しないんだね〜」

にへらっと、笑い頬を染めるマーシー。

エドウィン青年は、まだ厨二病がぬけておらずクールキャラをしたい年頃だってらしいが、俺は違う。

俺はもうそんな暗黒期は、とうの昔に終えている。
44歳をなめんなよ。

「いつも、ありがとな。本当にカップルになっちゃう?」
「え……っ!」

おっさんのセクハラ発言。
本来なら訴訟モノだが、俺の読みが正しければーー、

「えっ、あっと、えぇと……! エド、いきなり、どうしたの?!」
「ぁ、あれ? どっちにしろ、セクハラで片付けられる……?」

しまった、やっぱり俺は馬鹿だ。
エドウィン青年の記憶から、マーシーが俺に好意があるだなんて読み違えてしまった。

うつむくマーシー。
椅子をずいっとよせて、近くから上目遣いで見あげてくる。
頬が赤く染まっている。
彼女から香るいい匂いに、俺は心臓がバクバクだ。

「えへへ、エド、冗談ってわかってるけど、その……すごく嬉しいなぁ! えへへ」

その笑顔が可愛すぎた。
そして、俺は彼女に惹かれてることに気がついた、


⌛︎⌛︎⌛︎


塾で教えられたことは、主に読み書き計算の仕方。

何も難しいことなどない。

遥か遠い記憶で習った、寺子屋てらこやみたいだ。

今日は算数のテストがあったが、特に苦労することなく、簡単に満点を取ることができた。

途中、くしゃくしゃに丸められたカンニングペーパーがマーシーから飛んできた。

エドウィン青年のテストでは、日常茶飯事……というか彼がマーシーにやらせてる行為だ。

生活も、勉強も、ずっとこのエドウィンという男はマーシーに助けられてきたのだ。

ちなみに、マーシーは塾で1番勉強ができる優等生だが、この塾の問題レベルが高いのか、いくつか間違えてたので、訂正して、ペーパーを投げ返しておいた。

紙を見てマーシーは、耳まで赤くなって、潤んだ瞳でこっちを見てきた。

声にもならないちいさな声で「わすれて……っ!」と言っていた。

勉強できるお姉さんキャラを崩したくなかったのか。

どのみち、すごく可愛かった。


⌛︎⌛︎⌛︎


塾はものの2時間かそこいらで終わり、帰宅となった。

まだ日が高く昇っている。

谷と谷にかかる広大かつ、無数の陸橋が見える広場へやってきた。塾を出てすぐの場所だ。

「今日のテスト凄かったよ。エドったら、いつあんなに勉強したの?」

マーシーは愛らしく首をかしげる。

「あれくらいなら余裕だけどな。一応、これでも数学科でてるし……」
「すうがくか……? なんだか、わからないけど、エドも見えないところで頑張ってたんだね。えへへ、でも字書きはいつもどおりだったね!」
「ぅ」

たしかに、この世界の言語についてエドウィンの記憶から受け継いでるが、それはつまり、その分野ではエドウィンとレベルが変わらないということだ。

ちょっと悔しい。

「エドさ、そのぉ……もしよかったら、今日わたしの家で、いっしょに勉強会しない?」

谷面のさくを背に、マーシーはもじもじしながら、思いきったように聞いてくる。

女子と勉強会なんて、なんちゅうイベントだ。
中学生の時以来の、甘い青春の香りに、油で汚れたおっさん脳が清浄化されていく。

しばらく、その美しさにみとれて唖然としていると、マーシーは瞳から涙をぽろりとこぼした。

「……っ、ぁ、ごめん! エドは悪の秘密結社との戦いで忙しいんだよね! あれれ、おかしいな、今日のわたし、こんな変な誘いしちゃって、ほんと……馬鹿みたいだよね、えへへ……」

沈黙を拒絶と受け取ったのか、マーシーは鼻をすすり、目元を覆い隠して走りだす。

俺は彼女の手をとっさに捕まえた。

「っ、え、エド?」
「そんな痛い設定のためにチャンスを逃してたたまるか。マーシー、俺からもお願いだ、勉強を教えてくれないか?」

俺がそういうとマーシーは、ばぁっと顔を明るくした。
感極まったように手を口にあて「エドがわたしの家に来るなんて、何年ぶりだろ……!」と嬉しそう言った。

エドウィンは基本的に馬鹿で厨二病だ。
こじらせすぎて健気に、遊びに誘ってくれる幼馴染マーシーの申し出をすべて拒絶してきた。

ここ最近のマーシーは、エドウィンを誘うことすら、彼からの拒絶を恐れて、出来なくなっていたのだ。

それも、そのはず。

エドウィン青年が気になっている女子は、同じ塾の話した事もない、不良のギャルだったからだ。
つまり、彼にとってマーシーはうっとおしいだけの存在だった。

記憶をさぐれば、この愚かな男が、結局、胸のデカさに釣られたとわかる。
俺は思春期男子の単純さに、頭が痛くなった。

マーシーのほうが、どう考えても可愛いだろうに。

俺はマーシーの瞳からこぼれる涙を、指ですくい払ってあげた。
彼女はうっとりした顔で見上げてくる。

「エド、なんだか凄く変わったけど……すごく、すごく今のわたしは、エドといれて幸せだよ」
「っ……俺もだ」

目をつむり、彼女との未来を心に誓う。

「さあ、マーシー行こう」

俺はマーシーの手を引いて歩きだした。
マーシーは、はにかみ笑い「うん!」と元気にうなずいてくれた。


⌛︎⌛︎⌛︎


マーシーの家は大きかった。
父親がかつて″特殊な武器製作″を一手に引き受けていたらしく、それで大繁栄したらしい。

今はやや勢いが落ちてるが、それでも、大手鍛冶屋として、まだまだ街で多大な勢力を誇っている。

ゆえに、金持ちだ。

「ちょっと待っててね! すぐに部屋掃除してくるから!」
「汚くても、別に構わないけど?」

俺はそう言って、家のなかへ入ろうとする。

「だ、だめだよ! すこし待ってて! ほら、良い子だから来ちゃだめだよ!」

彼女はそういって、俺の頭をおさえる。子犬か。

マーシーは譲らない。

結局、俺は押し通ること叶わず、玄関先ですこし待つことになった。

ひとりになると、自分が本当に異世界に転生したことについて自然と考えてしまう。

この街並み。
まるで、オレがVRの世界で見ていたあのゲームの世界みたいじゃないか。

VRシステムの作りだす世界はリアルだが、肌を撫でる風、昼の陽光、近世で文明が栄えだした世界の香りは、再現しきれていない。

俺の五感が感じている、このすべてはホンモノだ。

「本当に異世界転生したのか…………ん?」

街並み行く人を見てると、変わった人間を発見。

厚皮の黒いロングコート、腰に見覚えのある形状の銃をさげていてーー、

「っ、まじかよ、あれって『銀人ぎんじん』……?」

俺の視界に入ってきた存在。

それは『フラッドボーン 』でプレイヤーが演じることになる『魔獣狩り』の専門家たち『銀人』だった。

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