記憶をなくした超転生者:地球を追放された超能力者は、ハードモードな異世界を成りあがる!

ノベルバユーザー542862

第214話 狩人協会への要請 その2



「……! どういうことですか?」
「はぁ……本当に自覚がないのね。いい? ゲートヘヴェン卿と知己の中であるし、あの『血脈けつみゃく断絶者だんぜつしゃ』が警笛を鳴らす怪物がいたっていうから、作戦を容認したけど、本当はドラゴン退治なんてするべきじゃなかったのよ。古代竜のなかには、嘘を見抜ける者もいるというわ。アーカムちゃんが魔術師らしからぬ力を世間に見せつけるほどに、古代竜たちも学院も、あなたが狩人である可能性を怪しむのは当然の摂理でしょう。たぶん、もう気づかれてるんでしょうけど。だからね、アーカムちゃん、もしゲートヘヴェン卿と仲良くしてなかったら、あなたきっとドラゴンクランに殺されてたわよ」

言われてみれば、何もかもが正論だった。

当時は、俺のことが気に入っているから、なんでも力を貸してくれる……なんて都合の良いこと考えていたが、それらは『血脈の断絶者』ーーつまり伝説とうたわれる、俺の師匠の名前に裏づけされた脅威が対象だったからなんだ。

一狩人、それも危うい立場の俺。

加えて古代竜の庇護がなければ、あの作戦は成り立たなかった。

今にして思えば、ゲートヘヴェンが人間形態で、よく話しかけ、関わってくれたのも、俺の知らない″何か″へのアピールだったのしれない。

アーカム・アルドレアは、私が贔屓しているぞ、という。

俺は本当に多くの者に助けられていたんだ。

っていう、その脅威を倒せてなかったら、アーカムちゃんの立場も本当に危なかったんだからねぇん」

ペンデュラムはため息まじりにそう言った。

情報が噛み合わない。
記憶はちゃんと改竄されているようだ。

ペンデュラムにもジョン・クラークなんて存在がいた記憶はないし、俺が彼をはめるためにゲートヘヴェンとひと芝居打ったという出来事は、別の形に補完されている。

俺は不誠実な男だと、つくづく思う。
ゲートヘヴェンにも、ペンデュラムにも手伝ってもらえたのにジョンと秘密の同盟を結んだりしてな……。

「はあ、とりあえず反省してるようだから、今回は不問にするけれど、学院からなにか追求があるかもしれない、という事は覚悟しておいた方がいいわね」

ペンデュラムは一通りまくし立てるように言い終えると、柔和な笑みで「本当に気をつけなさいよぉん」と締めくくった。

ひと段落つき、ペンデュラムは机の上に置いた手紙を指でトントンっ、とリズミカルにつつき始める。

「ただ、アーカムちゃんの手に入れた情報はとっても有益でもあるのは、確かよん。狩人協会としては、ある物すべてを有効に使いたいところ。だからね、やっぱりこの手紙は出す事にしたわん」

俺はかしこまりながら、恐る恐る「なんの手紙ですか?」と聞いてみた。

すると、ペンデュラムは笑みを深めてこう言った。

「エールデンフォートの狩人協会本部へ、増援をお願いするアナログな方の通達よん」
「増援? それにアナログ……? 狩人協会は何か大規模な作戦をしようとしてるんですか?」

ペンデュラムは俺の驚きと、矢継ぎ早の質問を予想通りとばかりに楽しそうに微笑んだ。

狩人協会本部という、自分の所属してる組織なのによくわからない所の言葉がでて、興奮気味なのは自分でもわかっている。

だが、どうにも抑えられない。
秘密結社の本部だなんて、カッコイイじゃないか。

「″うぅ〜ん、これは我々が考える以上に、狩人協会は事態をたしかな脅威として認識しているのかもしれませんねぇえ〜!″」
「″それどういうこと? 30文字以内で説明するんだよ″」
「″あーはははっはははっ! はははっ、あっはははははは、あーっははっははは!″」
「″笑い声で30文字使い切りやがった″」

勝手にでてきて、耳元で騒がしくする2人を押し込め、胡乱うろんげな眼差しを向けてくるペンデュラムに、ごまかしの笑顔をむけて、話のつづきをうながす。

「アーカムちゃん、狩人協会だって馬鹿じゃないのよぉん♡ 人類の創成期から存在する秘密結社が、ずっといがみ合って来たドラゴンクランのこと知らないわけないじゃなぁーい」
「それじゃ、もしかして混乱の原因が異空間にあることを突き止めてたんですか?」

ペンデュラムはサイレントで強烈に顔をゆがめてウィンクしてきた。「その通りよぉん!」と言ってるだろうと脳内で勝手に翻訳する。

「どうせゲートヘヴェン卿は気づいてるんだし、彼から『プライドがあってお願いできないから、代わりに狩人協会を動かすのだー!』とかお願いされたんでしょ、アーカムちゃん。あなたって人が良いから良いように使われてるんじゃなぁ〜い? まあ、協会としてはあそこに足を踏み入れて良いっていう大義名分を保証されたようなモノだから最高なんだけど〜?」

ペンデュラムはひどく趣味の悪い、悪党じみた顔になる。いや、悪党か。

「さっ、それじゃあ、いくわよぉん♡ 神の墓を暴きにねぇん!」

物騒なこと言っているのに、なぜだか彼が言うと物事が重大にならずに済むような安心感がある。

ただ、事態が深刻な事にはかわりない。

「ペンデュラムさん、増援は悪魔5体に対応できる人数なんですか?」
「んーん、流石にそこまでヤバいなんて、思ってなかったから、主力のアンバサちゃんを補佐できる狩人、数人呼んだだけよぉん。アーカムちゃんには、さっきあんな言っちゃったけど、本当に助かる情報だった。だから、増援は増し増しでいかないといけないわよねぇ……アーカムちゃん、それじゃ悪魔と実際に戦った所感あたりとか、細かく教えてもらえるかしら? あと他に戦闘は起こったのか、どんなモノがその修道院に潜んでいたのか。もお〜丸裸になるくらい赤裸々に、ネっ♡」

俺はペンデュラムへ、深度2の星騎士団修道院で起こった事を報告しはじめた。

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