記憶をなくした超転生者:地球を追放された超能力者は、ハードモードな異世界を成りあがる!
第195話 第二の古代竜
しばらく、中空を落下した。
ーーズダっ!
「ぅ」
絶対に足腰によくない衝撃を、接地面をふやしてうまく前転して逃し、すぐに剣知覚であたりを確認。
ほんのり明るい。
「ん」
遥か上空から落ちてくる大質量の狼姫刀をキャッチして、黒銀の刀身を鞘に納める。
となりを見れば、魔術師3人を器用に背負った、あの白タキシードの青年が顎をくいっと動かしてきている。
俺は一握の警戒を捨て去らず、左手の狼姫刀を抜けるよう意識しながら、彼の背をおった。
長く落下してきたのだから、ここはドラゴンクランの真下にあたる空間のはず。
体感的な落下時間を考慮すれば、第二段層にあるドラゴンクランの一階付近からスーッと落ちて、高度的にはちょうど、第○段層あたりにいるはずだ。
ーーだと言うのになんだ、ここは。
こんなところまで旧校舎が繋がっているというのか?
「″これは、えっと、アーケストレスってすごい建築するよねぇ……じゃ、済まされないかも……″」
「″んぅ〜ですねぇえ〜、もうこの空間自体に違和感がありありでぇえす。えぇ、たぶん、そういうことなんでしょうねぇえ〜″」
ひとりで納得する悪魔に、スリーパーホールドを掛けて、話を聞きだす銀髪アーカム、さっきの一時的な現界に調子づいてるらしく、悪魔はまったく続きを語ろうとはしない。
今、白いタキシードを着た青年を追い、俺たちが眺めているのは、縦横2メートルほどの幅の廊下だ。
ドラゴンクランの旧校舎とおなじ趣を感じさせる造りとなっており、ほんのり青白んでいて、光源がなくても視界の確保にこまらない。
「ここらへんで、よいか。入れ、小さき者よ」
適当な部屋を見つけて、先導してなかへ入る背を追い、霊体たちをしまって、部屋のなかへ。
青い目で注意深く容態を気遣いながら、青年は3人の魔術師を順番に床に寝かせていく。
「これでよい。ここならば、すこしは話が出来るだろう」
青年は納得して、腰をおろして、スッと手を差し伸ばしてきた。
抜刀一閃、腕を斬り飛ばしてもいい。
一瞬だけ殺気をぶつけて、探りをいれる。
「クク、竜が怖いか。それも、よかろう。君は賢い。いや、何も気分を悪くしたりはしない。元来チカラを持つ者として設計されていない人間は、それくらい慎重でこそ、人間味があるというものだ。世の中には竜をまえに、リラックスしきる不届きな狩猟人たちがいたりするが、まるで『怖くない』と余裕を見せるあれらより余程良い」
青年は荘厳な語り口調で、握手をあきらめて、俺に着席をもとめてくる。
応じて座り、狼姫刀を左手足にそって水平に置いておく。
「では、自己紹介が遅れたな。まずは、竜からだ。竜の名はチェンジバース。ドラゴンクランの″竜神会議″に属する古代竜だ」
「″あぁ、どうりで変な一人称してると思った″」
「古代竜、か。それなら、信用できるっていうか、信用したいけど……証拠は?」
「ここで竜体化してもいいが……ふふ、冗談だ。ドラゴン・ジョーク。そうだな、これなら信じてもらえるか?」
金髪青瞳の青年ーーチェンジバースは、スッと白い手袋をした手をだして、そのうえに高密度の純粋魔力の塊を出現させた。
蒼く煌く炎のようで、雷電ようなピリピリとした空気の揺れも感じる。
根本的に、杖をもたずに魔力を扱ってることから、彼が人間でないことは明らか。
そして、落とせばあたり丸ごと蒸発待ったなしの、純粋すぎる魔力の輝きは、それがかつて味わったオールド・ドラゴンのドラゴンブレスと似た物である証だ。
間違いない、この青年はゲートヘヴェンと同じくオールド・ドラゴンに類する者の、人間形態だ。
「んっん、これは失礼しました。ゲートヘヴェンさん以外の、オールド・ドラゴンに会ったことがなかったので、警戒してしまいました」
「よい。礼節のある者は好きだ」
チェンジバースは魔力の塊を握りつぶし、にこりと爽やかな笑顔を見せる。
「それで、チェンジバース卿はーー」
「これ、差別は嫌いだ。ゲートヘヴェンとおなじく、″チェンジバースさん″と呼ぶとよい」
「ぁぁ、では、チェンジバースさん、まずはお礼を。友達を助けてくれてありがとうございました」
「うむ」
「して、あの、なんでこんな所にいらっしゃったんですか? ゲートヘヴェンさん以外の古代竜の方たちって、まだ帰ってきてないとばかり思ってたんですけど……」
「それは間違いというものだな、アーカム・アルドレア。現在アーケストレスには四柱の古代竜が帰還している」
「よ、四柱……。そんなに?」
想像を越えてくる数に、思わず聞きかえす。
「うむ、この数日の間に、皆が緊急事態を嗅ぎつけてもどってきた。すべては古くからの盟約に答えるためである」
「盟約に、ですか。一体それはどういう?」
「よかろう、ゲートヘヴェンが認めた人間だ。すこし長くなるが、竜の話せる範囲で、アーカムに現状、起こっていることを話そう」
チェンジバースはそういって、まずこの旧校舎について話しはじめた。
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