記憶をなくした超転生者:地球を追放された超能力者は、ハードモードな異世界を成りあがる!

ノベルバユーザー542862

第148話 ドラゴン退治にいこう


ーー2日前

ゲートヘヴェンとの極秘会談の翌日、俺がむかったのは冒険者ギルド第三本部だ。

正確にいえば、第三本部の地下、ということになるだろうか。

ローレシアの第四本部とおなじく、地下につくられた狩人協会のための施設。

そこでは、初対面であった途端から、舐めまわすように俺のことを見つめてくる男……うん、男がいた。

「あら、ぼうやがアビゲイルの言っていた最年少狩人のアーカムちゃんね♡
ほんの子どもなのにいい体してるじゃない〜、ショタも守備範囲に入れちゃおうかしら、もうえっちな体してぇえ〜!」
「……」

俺は狩人協会の施設で出会った男ーー第三本部のギルド顧問、インファ・メス・ペンデュラムに大歓迎されてしまったてしまっていた。

好きな色はなにか、どこの出身なのか、流派はどこなのか、だれが師匠か、彼女はいるのか、腕を触っていいか、
腹筋を触っていいか、足を触っていいか、先っちょだけならいいかーーとにかく悪夢のような質問責めを受けつづけた。

あの出会いは衝撃すぎて、今ではもうよく思いだせない。

ただ、思い出さなくてもいい気がするので、無理に思いだす必要はないと思う。

うん、精神衛生のためにも、彼女、いや、彼との出会いに関しての、これ以上の回想はやめようか。

とにかく俺は、あまたの試練をのりこえて、やっとこちらのお願いを話しだせるようになった。

「なるほどねぇん、アーカムちゃんはつまり、その言葉の通じなかった危険な人型怪物を再発見したってことねん。
知ってるわよん、1年くらい前に狩人協会総本部に戻ってきた伝説の狩人がつたえた、う・わ・さ♡」

「っ、それ、僕の師匠のテニール・レザージャックですよ! 師匠はやっぱりちゃんと本部へ行ってたんですね。
いっこうに町に帰ってこないものですから、途中で事故死でもしたのかと、不安に思ってたんです」

師匠の生存報告を聞き、俺はようやく1年間にもわたる、師匠失踪事件のモヤモヤを晴らすことができた。

これは僥倖ぎょうこうだった。

役に立たないうちのギルド顧問、アビゲイル・コロンビアスからは何も聞けてなかったので、
ギルドにも情報は届いていないと、諦めていたが、思わぬところから、望んでいた情報がでてくるものである。

「それで、ペンデュラムさん、師匠はどこにいるんですか? なんで町に帰ってきてくれないんでしょうか?」

興奮していた俺は、すぐに師匠のことを聞きかえした。

「残念だけど、それはわからないわねぇん。彼、古巣にかえってくるなり、すぐにまたどこかへ行ってしまったのよん。
狩人の何人かは、彼に協会の工作員育成学校で、指導してほしいって、頼みこんでたらしいけどぉ……彼、すげなく協会に復帰するチャンスを断ったらしいわよぉ、クールよねぇ〜!」

師匠の生存はわかった。
しかし、彼の所在までは掴めなかった。

師匠がなぜ帰ってこないのか気になるが、俺は本題に戻ることにした。

「へぇ、つまりアーカムちゃんはあのポルタ級冒険者のジョン・クラークこそが、伝説の狩人が警戒をうながした『怪物』だっていうのねぇん」
「そうですとも。あいつは最大級に危険な怪物です……いや、まだわかりませんけど、その可能性は十分にあります!」
「ふぅん、それでぇ根拠はどれくらいあるのかしら?」

上目遣いで、くちびるをつきだし聞いてくるペンデュラム。

「顔が似ています!」
「ふむ、なるほどねぇん。ほかにはぁ〜?」
「え、ほか? …………以上です」
「……え゛?」

ペンデュラムの口からえらく低い声が漏れた。

まさかそれだけでこの国の有力な冒険者を、狩り殺そうとしているのか、とペンデュラムは遠回しに言ってきていたのだ。

事実、そのとおりだった。

「アーカムちゃんの言葉を疑うわけじゃないけど……それだけじゃ、この街の狩人を動かすわけにはいかないわよぉん〜」

俺は狩人協会の力を借りることは出来なかった。

だが、ペンデュラムが俺のことを、あわれんでくれたのか、冒険者ギルドでいくらか根回しをしてくれると約束してくれた。

俺が、最近話題のドラゴンクランの古代竜の助力も得ているとつたえると、
ペンデュラムは、艶めかしいウィンクを飛ばしてきて、なおのこと俺に対して協力的になってくれた。

いろいろ恐怖を禁じ得なかったが、彼の助力は作戦のためには不可欠なので、俺は苦笑いして愛想よくして、押し倒されることなくやりすごす事にした。

「それじゃねん、アーカムちゃんの方で作戦の指揮は取りなさぁい〜。冒険者ギルドは、ジョン・クラークちゃんが必ずクエストに行かなければならない、
ぶ・た・い……だけ、整えてあげるわん。ジョンちゃんはお気に入りだけど、アーカムちゃんも好みだから、わたし頑張っちゃうわよん!」

危ないギルドエージェントと長きにわたる交渉は、とても危険な橋だったが、俺は冒険者ギルドの協力を得ることに成功したのだった。

ーー現在

「よぉーい、よぉー! ドラゴン退治だ、ドラゴン大事ダァああ!」

雄叫びをあげる毛むくじゃらの男ーー「魔鉱まこう射手しゃしゅ」のドゴランは、
大杖を振り回して、第三本部の前に集まった冒険者たちを鼓舞している。

「おい、見ろ! 『無敵要塞むてきようさい」のジョン・クラークだぞ!」
「最高にクールな男がドラゴンを倒しに腰を上げたぁぁああ!」
「古代竜が帰ってきたばっかなのに、ドラゴンを平気で倒しにいく度胸! そこに痺れる、憧れる〜ッ!」

ジョン・クラークの登場に、湧き立つ冒険者ギルドまえのおおきな広場。

当の本人は、やや気遅れしてるようだが、そんなものは関係ない。

俺はジョン・クラークの横にたち、彼の袖をひいた。

「ジョンさんの戦いを見せてください!」
「……あぁ、まぁいいだろう。皆ッ! 私たちで竜を仕留めるぞっ! 私の戦いをみるがいい。さぁ、いくぞ、冒険者たちよ!」

『ずおぉぉおおおおーっ!』

数日前から掲示板に貼られた緊急クエストに、集まったのは総勢100人もの威勢のいい冒険者たち。

ポルタ級冒険者パーティが、2パーティ。
オーガ級冒険者パーティが、3パーティ。
熊級冒険者パーティが、5パーティ。
そして猫級冒険者パーティが14……と。

皆が皆、アーケストレス南方の森で見つかったとされる、危険な竜を倒そうとして集まってきたものたちだ。

俺はいちおう冒険者に興味のあるだけの、猫級の冒険者として参加させてもらっている。

正直にポルタ級として参加するといろいろ面倒だ。

あいにくとこの都市には、アーケストレス魔術王国の誇る、最強のドラゴン級冒険者パーティの2つは駐在していないので、
必然的にジョン・クラークのパーティや、ドッケピのパーティが最高戦力ということになる。

冒険者たちの指揮を取るジョン・クラークとそのパーティは、いさましく集団を先導していく。

俺たち討伐隊は、ドラゴンの彫刻がたちならぶギルド前広場を出発した。

ジョン・クラークのやつ、だんだん気分が乗ってきたのか、なにやら「ドラゴンに逃げ場を与えるな!」とか叫んじゃってるな……あわれなことだぜ。

このクエストこそが、ジョン・クラークを討つための、逃げられない罠だというのにな。

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