虐げられてきた俺、実は世界最強の【剣豪】だったらしい〜『防御力無視の刀』で無双旅〜

ノベルバユーザー542862

第16話 サイボーグ化の秘密


サムスの調べるべき事項のひとつに右腕のことがある。
サイボーグ化された科学の右腕だ。
サムスは常々考えていた。もし仮に自分が最初にサイボーグ化手術を受けたのなら、それはアルカディアしかありえないと。

どうして右腕はなくなったのか。
いつから右腕はなくなったのか。
どうして義手にしようと考えたのか。
いつから義手だったのか。
あと高周波ブレードのことも詳しく知りたい。

サムスは『樹園』帰りの道で考えていた。

「アルウ」
「ん、どうしたの、サムス」
「サイボーグって知ってるか」
「もちろん、知ってるよ。ここはアルカディアだから、サイボーグは身近なモノなの」

アルウはこっそり目線をむけて、遠くの青年を示す。その青年の足は少し錆びている機械だった。

スラムでも部分的にサイボーグ化した人間は珍しくないという。
それもそのはず。体を欠損した人間のための医療として、アルカディアでは、ここ数年サイボーグ技術が急速に発達していた。
サムスは感心するようにうなずく。腕や足をなくした人間にとって、これは素晴らしい希望だ。

(だが、医療目的か……。俺のコレは戦闘用とか言ってたが)

サムスは頭を悩ませる。
彼は新しい疑問を抱えることになってしまった。

──しばらく後

サムスとアルウは『ジャンクカレッジ』に帰って来ていた。

ガレージにランドルフ・スカンナの姿はなく、アルウの案内でサムスはガレージ裏の鉄屑山にむかった。
緑あふれる自然の中、錆びた端材が積み重なっていた。
ランドルフはそんな鉄屑の山をあさって、使えそうな部品を待ってガレージに向かってくる。

「ん、さっきの『ガーディアン』じゃねーか。ははは、結局ビビって戻って来たんだな」
ランドルフは馬鹿にしたように言う。

サムスは腕を組み、ガレージへ戻ろうとするランドルフの行く手を阻むように壁に寄りかかる。

なら終わった。思うに、楽勝で満点だ」
「は……? もう『樹園』の魔物倒したって言うのかよ」
「ああ」
「全部だぜ?」
「ああ」
「本当の、本当に、全部だ! そこらじゅうにいたクモぜーんぶ倒したって言うのか!?」
「……1匹や2匹は残ってるかもな。だが、見つける方が難しいくらいには殲滅した」
サムスの自信に満ちた瞳に、ランドルフは唖然とする。

サムスが行く手を阻むのをやめて、彼をガレージのなかへ通した。

すぐに、ガレージの表側から若い男が走って来る。
彼は真偽を掴み損ねているランドルフに、サムスの発言が本当だと裏付けをしてくれた。抜群のタイミングだ。

「そうかよ。へえ、やるじゃねーか、お前」
ランドルフはサムスに笑いかける。

「スラム街にはお前みたいな奴にしか解決できない仕事もたくさんあるからな。仕事の斡旋あっせんはしてやるとしよーか」
「俺は安くはない。そこだけ覚えておけば手を貸してやる」
ご機嫌のランドルフに、サムスはブレない態度で告げた。

ランドルフは渋い顔をし「なんて生意気な態度だ…」とため息をついた。
それから、彼は裏からとってきた鉄屑と、工具で何か作業をしはじめた。

『ジャンクカレッジ』を立ち去ろうとするサムスは見慣れない光景に、何をしているのか、とランドルフ尋ねる。
ランドルフは「見てわかるだろ」と前置きしてから「俺はバイクをいじるのが趣味なのさ」と告げた。
彼がガチャガチャと手を加えるマシンは、身の丈の半分ほどもある、巨大なタイヤのついた大型バイクだった。
サムスはバイクについて、ひと通りの知識をランドルフに尋ねた。

既製品で最大速度250km/h
シャープなメタルボディとワイルドなタイヤ。
荒野を駆けぬける男のロマン。

もろもろ聞いた。
その結果、

「どうやったら手に入る……?」
サムスはバイクが欲しくなった。

「こいつはゴーグル社のバイクを改造したもんだ。そもそもの本体は、スラム街で偶然見つけた。頑張ったって手に入れられるモンじゃねーよ」
「そうか…」
サムスは少し落ち込んだ。

「うーん、製品を見つけるのは難しいよね」
アルウは膝を抱いて思案する。

「あ、そうだ。スラムの知り合いたちに、バイクのパーツを見つけたら報告してもらうようお願いしてみるね!」アルウは提案してみた。
「そんな事できるのか?」聞き返すサムス。
「今はまだ難しいかもしれない、でも、サムスがみんなの役に立てば、きっと協力してくれるよ」

アルウの穏やかな笑顔に、サムスは希望を見出す。
スラムの人間たちに協力したいと思わせる、そんな人物評価を獲得すること、それがサムスの当分の目標となった。

──しばらく後

サムスとアルウは『ジャンクカレッジ』をあとにして、とある人物のもとへ向かっていた。
ランドルフから斡旋された依頼のためだ。

「アルウは付いて来てて平気なのか?」
サムスは馬上でルゥを片手に遊ぶ幼馴染に問いかける。

「わたしの塾が開くまでまだ時間あるから、気にしなくて平気だよ。それより、サムスが人とちゃんとお話しできるかが心配」
「なんだ、その心配は、俺は子供じゃないぞ」
「そう? ならよかった。昔のサムスって、その、あんまり話す子じゃなかったじゃない?」
「……」

アルウの迷い混じりの言葉にサムスは黙った。
サムスは自分がどんな子供だったのか、覚えていなかったからだ。
羊小屋の裏。青い空の下。サムスはアルウに、それなりにハキハキ喋っていたようにもおもえる。
その感じからすれば、対人関係を心配されるほどではなかったように、サムスには思えていた。

「サムス、着いたよ」
アルウは言った。

「ここが『サイボーグ工房』ね」
「どうして、サイボーグが散乱してるんだ?」
サムスは足場に困るほど捨てられた機械部品を見て言った。

アルウは「うーん、なんでだろう」と返答に困っている様子だ。少し可愛かった。

「ん、なんじゃい、アルウ」

怪しげな工房のなかから、老人が出てくる。
この人物が自称:天才エンジニアだと、サムスは思った。名前は知らない。みんな彼をそう呼ぶらしい。

老人にここへ来た理由をつげて、サムスとアルウは『サイボーグ工房』へと入っていった。

「実はアルカディアの東側にあるマナハウス付近に、おかしなロボットが出るという噂があるんじゃ。このロボットを倒して部品をかっさらってきて欲しい」
「討伐依頼か。新しいサイボーグ開発のためか?」
「サイボーグ開発? そんな大層なことはできんさ。わしに出来るのは直して、くっつけて、解体して、組み換える。そんな二次的製作だけじゃ」
「……それでも、サイボーグに関して深い知識がないと出来ないことだな」
「? まあ、その通りじゃな」

サムスとアルウは依頼を受けて『サイボーグ工房』を出た。
アルウは腕時計を見て、サムスへ話しかける。

「サムス、そのちょっといいかな?」
「ん、なるほど、そろそろ時間か」
「ごめんね、そろそろ、アルカウィルの支度をしないといけなくて」
アルウは申し訳なさそうに言った。

そのままレント二世から降りて「仕事頑張ってね!」と言い残し、アルウは行ってしまった。

「わふゥ」
「ブルルゥん」
「なんだお前ら、不満そうだな」

たった1日で、幼馴染に懐柔された相棒たちにサムスは不機嫌になった。好感度とは難しいものだ。
サムスは踵を返して、サイボーグ工房へと戻る。

「ん、なんじゃ?」
「聞きたいことがある」

出ていったばかりのサムスの帰還に天才エンジニアは目を細めた。
サムスは右腕を天才エンジニアのまえに、音を立ててドンッと置く。

「ほほう。おぬしもサイボーグだったか」
「ああ。少し調べてもらいたいことがあるんだ」

サムスは天才エンジニアに、自分がサイボーグ化手術を受けた記憶がないことを明かし、自分がいつから義手をつけているのか調べて欲しいとお願いした。
天才エンジニアは「どれ、ちょっと見てみるか」といって、繊細な工具と電子機器をつかい、サムスの右腕を調べはじめた。

「ん? なんじゃこれは……ずいぶんいかめしい様相かと思ったら、こんな造り見たことがないわい……」
天才エンジニアは額に汗をかいて、手元を必死に動かしている。

「ぐっ、プロテクトが掛かってある。技術の流出を防ぐためじゃな。こりゃ無理だわい」
「え?」

工具を投げ出し、諦めた様子の天才エンジニアに、サムスはほうけた顔を向けた。

「サムスと言ったか」
「ああ、何かわかったことはあるか?」
「確かな事が二つ。まずひとつ目が、サイボーグ化手術を行なったのは、ここ数年ということ。ふたつ目が、そのサイボーグ義手はゴーグル社のサイボーグ義手のなかでも極めて特別だと言うこと」

サムスは天才エンジニアの言葉に、アルドレア家の地下で録音音声と喋った会話を思いだす。

「戦闘用らしい、この右腕は」
「戦闘用……つまり、それは医療目的で作られたサイボーグじゃない。ふむ、やはり、わしの考えは正しかったようじゃな」
「あんたの考え?」
「そうじゃ。ゴーグル社が医療事業として打ち出した近年のサイボーグ開発。それは、めぐりめぐって結局のところ、戦争の道具になっていたというわけじゃ」
「機械のパワーは、人間より強い。必然的にそうなるだろうな」
「ところがどっこい。実は医療用のサイボーグ義体には大きなパワーが出せないよう『ロック』が掛かっておる」
天才エンジニアは、たばこをふかしながら、サムスの右腕を指差す。

「本来なら人間の脳を守るためのシステムじゃ。しかし、戦闘用となると、つまりその『ロック』が解除されていることになる。だとしたら、高精度のマシンのパワーを制御できない人間の脳は無事なのか?」

サムスは考える。

機械のパワーを、人間にとりつけるだけでは不足ということか。
そのパワーをコントロールする脳の負担を、なんらかの方法で和らげるなりしないといけない、と。

サムスは自分の頭をおさえる。

「……俺はなんともないけどな」
「そこが不思議なことじゃ……。うーむ、サムス、お前さんの体にはもしかして──」
天才エンジニアはたばこをくわえたまま固まった。

数秒の沈黙が2人の間に舞い降りる。

「なんだ?」サムスは耐えられず問い返す。
「………………いや、なんでもない」

天才エンジニアはたばこを灰皿に擦り付けて「さあ、行った行った。はやく暴走ロボット退治してこい」とサムスを追い払うように言った。

サムスは悶々とした気持ちを抱きながらも、サイボーグ工房をあとにする。





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