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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第81話 魔導王


オーウェンの作り出した次元の裂け目はほんの3歩ほど歩いただけで向こう側へたどり着けた。
黒い光の先は、ジークタリアスの建設中の冒険者ギルドの屋根の上だった。

「ここは平和だな、普段となにも変わってない」
「まだアクアテリアスでの騒ぎが伝わっていないんだ。当然だな」

まだ朝早い時間。
早朝のジークタリアスは静まりかえっていた。
さっき、水平線から上がってくる太陽を見たばかりなのに、薄暗く静かな街を見ていると、なんだか不思議な気持ちになる。

「まだ、魔女の香りは遠いな……となれば、移動役が準備をしてるところか」

オーウェンはぶつくさ言いながら、アクアテリアスの方角を見つめる。

「なあ、オーウェンは、ずっと魔女の存在を知ってたのか? ジークタリアスの崖下の世界にあの紫髪の少女がいるって」
「知ってはいた。ただ、姿までは把握してなかった。パニック事件の時に出会って、大体のことを察したというべきか」
「……魔女を倒したいなら、もっと早くに、それこそ『神聖祭』がはじまる前に決着をつければよかったんじゃないのか?」
「そうかもしれない」

オーウェンはごくごく当然の帰結を淡白な表情で肯定して、屋根上から飛び降りた。
俺もあとに続く。

「なんだよ、そうかもしれないって。空間を斬り裂くほど強いなら、魔女くらい倒してくれよ」
「アダムはそれは出来ないと言っていた。歴史を運ぶターニングポイントは、切り替わる分岐点を必要とする。もう定まった運命の切り替えには、時期を見計らう必要があるんだ」
「定まった運命なんて、どうやってわかるんだよ」
「……そうだな、例えばその″運命を経験した人間が存在してしまう″とか」
「それ、誰のこと言ってんだ?」
「さてな。誰のことだろう」

オーウェンに続いて歩くと、俺たちは『大螺旋階段』にやってくる。

「あれ? 『聖女の騎士』マクスウェルに、『剣豪』オーウェン!? ど、どうして、アクアテリアスに行っているはずでは?!」
「しーっ」

俺は口に指を立てた。
騒がれたら面倒だ。

「失敬」

オーウェンは見張りの衛士の首裏を手刀で打ち、あっというまに気絶させた。
手が出るのが早いって。

「オーウェン、おまえ、なんか開き直った感じがするな」
「そうか? まあいい。先を急ぐぞ。魔導王の空間跳躍のポイントはこの先だ」

オーウェンと一緒に『大螺旋階段』を降りる。

「マックス、その顔は魔導王って誰だって顔だな。いいだろう、教える」

俺は肩をすくめて、先を促す。

「魔女の配下たち、俗に″枯れた指″と呼ばれている10人いる幹部たちうちのひとりだ」
「枯れた指、な。変な名前だな」
「魔女の指と自分の指を交換することで、魔女側から支援を受けられるらしい」
「なにそれ、怖っ……」
「魔導王はその結果の能力かわからないが、どうにも空間を自在に行き来する能力を持っているらしい」
「オーウェンの上位互換ってことか?」

ちょっと冗談を言ってみる。
すると、オーウェンは俺の顔を見て「下位互換」とだけ言った。

「魔女の手勢はこの魔導王を使って、長距離をごく短い時間で移動してる。だから、まずはこいつを叩く」
「そんな大事な役割をもってるなら、手厚い護衛がついてるんじゃないのか?」
「長距離移動の際には、さきに現地にひとりで現れて、場を整える、とアダムが言ってたから、たぶんさきにやってくるんだろう」
「またアダムか。なんだ、オーウェンってやっぱり、占い師と仲良いんだな」

俺の何気ない発言。
オーウェンは足を止めた。

「マックス」
「ん?」
「それだけはない」
「……おう」

オーウェンの重苦しい声に、俺は思わず気圧された。何か因縁めいたものを感じる。

「まだ、下まで時間がある。昔話をしようか」
「それよりも、どうして俺を崖から突き落としたのか、さきに教えてくれるか?」
「いいだろう。理由は明白。マックスには崖下から持ち帰ってきて欲しかった」
「? なにか持って帰って来たっけ……」

俺は指を鳴らして〔世界倉庫せかいそうこ〕の中を確認する。

「その能力、いや、あえて強さと言おうか」
「……俺が強くなるとみこんで、崖から突き落としたって?」
「すまない。別にライオンの親子を演じたわけじゃない。仕方なかったんだ、だって、アダムが突き落とせっていうから……」
「は? え、なに、俺を突き落とすように言ったのあの占い師なの……?」

俺はオーウェンの手前にまわりこみ、申し訳なさそうな彼の顔を見る。

「本当はアインにするつもりだった」
「? 突き落とすのを?」
「違う、突き落とすことから離れろ。今、ここにいる俺ともう一人の人間のことだ」

オーウェンは仔細を説明してくれた。

どうやら、オーウェンとアダムは『ジークタリアスの夜明け』なる歴史のターニングポイントで、未来に起こる悲劇を回避するために″強い相棒″を求めていたらしい。

第一候補はアインだった。
しかし、オーウェンすら知らない理由で直前になって「あいつだめっぽいわぃ」とアダムはオーウェンに弱音を吐いたらしく、オーウェンはセカンドプランを取る必要が出てきた。

「そこでだ。アダムは自分の〔よるひとみ〕を使って、再度、未来を観たんだ。そうして、新しい可能性を見つけた」
「それが俺、か。…………ん? あれ、たしか〔夜の瞳〕ってもう使えなくなったんじゃなかったのか? ほら『拝領の儀』くらいで遠い未来のビジョンを見るためにって」
「そうだな。俺の〔夜の瞳〕は10歳の頃に正式な効果は失効してる。だから、言ってるだろ──アダムの〔夜の瞳〕だって」
「へえ……たまたまスキル、じゃなかった……ミステリィが一緒だったんだな」
「そういう事もあるさ」

結局のところオーウェンは俺が死なずに強力なチカラを得て帰ってくることがわかっていたから、遠慮なく崖から突き落としたということらしい。

幼馴染の命を、よくわからないインチキ臭いジジイの謎の弱音に応えてあげる形で、死の危険に晒した、わけだ。
本当に最低な幼馴染である。

「マックス、おまえの気持ちはわかる。けどな、俺は気持ちを共有したかったんだ。脱出できない世界で、己を鍛え続けるしかない苦痛を」
「オーウェンって友達に不幸をばらまくタイプだったか」

俺とオーウェンが益体のない話に花を咲かしていると、ようやく『大螺旋階段』を下りることができた。

「げっ、マクスウェルとオーウェン、どうして──」

『大螺旋階段』の見張り番が、上の衛士とまったく同じ反応をして来たので、オーウェンが手刀で静かにさせた。
彼の案内で俺は、例の魔導王とやらがやってくるというボトム街はずれの共同墓地にやってきた。
話によればここで待っていれば、魔導王がやってくると言うことなので、しばらく待つことにする。

「にしても、空間跳躍するなんてどんなスキルだよ。そのなんだっけ、じょるじょ、なんとかって」
「ジュニスタ・アドラニクス。外国の魔術師だ。ホンモノのな。俺たちの世界で呼ばれているパスカルやプラスミドのような、魔術っぽいスキルをもってる、なんちゃって魔術師とは違う」
「それ絶対に本人たちの前で言うなよ」
「善処しよう。外国の魔術師とは、魔力をエネルギーとしてもちいて、魔術式をつかい不可思議な『現象』を誘発させるホンモノの神秘の学徒たちのことだ」
「全然想像つかないな。本読んだり、紙とペンで勉強するだけで、そんなことできるようになるのか? 空間跳躍だなんて」
「魔女がわざわざ外国から連れてきた助っ人だ。魔術師のなかでも、かなりの実力者なのだろうさ」
「はえ〜魔術師ねえ……。外国って凄いんだな」
「ふん。俺も大したことはないが、一般的なソフレト民よりかは、知識を仕入れている。……マックス、これが終わったら一緒に外の世界にいってみないか?」
「なんか、人が死ぬ香りがする」
「外国じゃ死亡フラグと言う。最先端の言葉だ」

オーウェンと俺は、お互いにクスクスと笑いあった。
濃い霧の蔓延する墓地だというのに、おかしなものだ。

談笑していると、やがて、オーウェンの目つきが変わった。
同時に俺の知覚も異変をとらえる。

俺とオーウェンの視線の先。
共同墓地のなかでも広くなっているスペースの真ん中に、空間のねじれとも言うべき穴が出現した。
それは、瞬きの間にぎるるっと動き、中からひとり壮年の男が排出された。
手には分厚い本を開いたまま持っており、赤と黒の貴族礼服が、無条件に高貴なイメージを見るものに抱かせる。

「出現地点、問題なし。…やれやれ、連続長距離移動は骨が折れますね……」

壮年の男はぶつくさ言いながら、本をペラペラめくり、何か小言で唱え始めた。

「あれが『魔導王』ジュニスタ・アドラニクス」

俺の声にジュニスタは、呑気にこちらへ振り向く。まだ何もわかってない顔だ。

「ん、あなた方は誰ですか──って、貴様はアクアテリアスでガングルゥとウェルアンを殺った剣士──?!」

ジュニスタは目を見開き、驚愕していた。
おそらくオーウェンにビビっていたのだろう。
彼は即座に、背後に空間のねじれを発生させて別の場所へ逃げようとする。

俺はただ黙って見つめていた。
なぜなら、オーウェンがアホみたいな、もはや瞬間移動に等しい踏み切りで神速の突撃をしたからだ。

俺の隣の地面が、オーウェンの脚力で大爆発を起こし、その瞬き数十分の一回の時間のあと。

すべての決着はついた。

「あ、あれ?」

ジュニスタ・アドラニクスは体の自由が効かなくなっていることに気がつく。

「まずはひとり目。翼をもいだ」

オーウェンはジュニスタの背後で、刀をゆっくりと納刀する。
彼の魔剣でもなんでもない、ただの凄い業物の刀が鞘におさまると同時のことだ──ジュニスタの肩から上が非現実的な切断面をもって、ずるりっと滑って石畳の上にべちゃっと移動したのは。

ジュニスタは自分が死んだことにようやく気がつき、声も出さずに、死に絶えた。

「俺、必要? 掃除でもしてろって?」

俺、出番がない。

「……次はマックスに任せよう」
「ふん」

俺は「こんなんならマリーの側にいたかった」と文句をいい、ふてくされながら、ジュニスタの死体を〔世界倉庫せかいそうこ〕にしまって証拠隠滅をした。

魔女との戦線は好調な滑り出しだ。

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