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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第78話 大災害の後


「いったい……何が……」

俺は呆然とするしかなかった。

ずっと遠くで支柱の多くを失い、根本から崩れる『灯台』の姿に、アクアテリアスの崩壊を見た。

「金を錬成したのさ。錬金術師だからな」

あの男の声がすぐ近くで聞こえた。

顔を向けると、白いハットをパタパタとうちわがわりにして砂埃をはらうソラールの姿があった。

彼は手のなかの、灰色の世界でまばゆく輝くわずかな純金を見せてくる。

「もっとも、街ひとつの物質から抽出できるのは雀の涙目ほどだがな」

「金を錬成した……? お前……何してんだよ……たった、それっぽっちの金を作るために、何万の人間を……」

狂気じみた発言に、俺は言葉を失ってしまった。

ソラールは白いハットであおぐのをやめて、涼しげに微笑むと金を握りしめた。

彼が次に手を開くと、そこには1枚の金貨のカタチに形状を変化させられた、先ほどの純金があった。

ソラールは指で金貨をまわして遊ぶと、最後に俺へそれを弾いて飛ばしてくる。

俺は金貨を受け取った。

「10万人の命なんて、金貨1枚以下だ」

ソラールはくだらない事を吐き捨てるような言った。

「ふざけないでよ……! あんた、何のためにこんな事を!」
「マリー、落ち着いて!」

百合の剣を抜き放つ、マリーを制止する。

ソラールは俺とマリーをじーっと見ながら、金色の瞳で何かを見定めんとしてくる。

「限定的な大技だったのだがな……やれやれ、私が狙った人間を殺せなかったのは、これで2度目だぞ? 誇れ、マクスウェル・ダークエコー。運がいいじゃないか」

ソラールは腰をあげて、瓦礫のなかを歩いてどこかへ行こうとする。

「逃すか!」

速攻で指を鳴らして、俺は槍を射出した。

ソラールは振り返ってくるが、特に何もせず、俺の槍はソラールの体を真正面から貫いた。
「っ」

途端、ソラールの体は金の粉となってしまい、槍は瓦礫のうえに転がってしまう。

金の粉塵は、そのまま風にあおがれて何処かへと消えていってしまい、ついにはソラールのいた証拠は、この世界から消滅するかのように、その姿を霞ませてしまった。

「クソ、なんだったんだ、アイツは」
「マックス! それよりも早くみんなを助けないと!」

マリーの泣きそうな声に我に帰り、俺たちは急いで巨大なクレーターへ向かった。


⌛︎⌛︎⌛︎


巨大なクレーターのまわりでは、黄金錬成の爆心地から逃れた人々が、黒い獣たちに襲われていた。

市民たちは逃げ惑うなか、俺やマリーは懸命に戦ったが、その戦力の多さに、すべてに対応できたとは言い切れなかった。

地上に現れた黄金の太陽は、アクアテリアスから多く物を奪っていった。

一瞬で蒸発した都市内外の市民10万人。

その中には、女神の写し身たる聖女も含まれ、『神聖祭』のため、アクアテリアスに駐屯していた『神威の十師団』より、第十師団、第九師団、第八師団、第七師団、第六師団、第五師団にいたるまで壊滅。

神殿も消し飛ばされ、賓客としてパレードのあと、開会式に出席する予定だったソフレト共和神聖国の重鎮達、はては祝祭のために地上に降臨していた女神ソフレトまでもが行方不明となってしまった。

この日、ソフレトから秩序が失われた。

⌛︎⌛︎⌛︎


ーー大災害より10時間後

俺とマリーはクレーター近辺で生き残りの人間を探して、集めて、避難できる一時的なシェルターを作っていた。

「聖女様、聖女様、ありがとうございます」
「気にしないで、こんな時の聖女なんだから、今はゆっくり休みなさい」

マリーは慈愛の微笑みで傷ついた神殿騎士を床に着かせてあげていた。

この緊急事態に、マリーの〔錬成霊薬れんせいれいやく〕は多くの場面で必要とされていた。

何時間にも渡り、スキルを使用し続けたマリーの顔には疲労が濃く溜まっているようだった。

「少し休んだほうがいいよ」

俺は他の人に聞こえないよう、マリーに言った。

ただ、マリーは首を横に振るだけだ。
さっきからずっと働き詰めなのに、まだスキルを使おうとしている。

「マリー、マリー、こっちを見て」
「マックス……」
「マリーのせいじゃない」
「でも……みんなが死んで、わたしたちだけ生き残ってしまったわ……」

マリーは瞳の奥からこみ上げるモノを、必死に振り払うように走りだした。

マリーの後を追いかけると、シェルターの裏手でしゃがみ込む彼女を見つけた。

隣に腰を下ろす。
マリーは黙ったまま、膝を抱えていた。

「わたしのお父さんとお母さん、神殿にいたんだ」

「……」

その一言はマリーががむしゃらに人々を助け続けた姿勢の意味そのものだった。

この都市に来てからマリーの両親とは、何度も会って話をした。

今朝、神聖祭パレードが始まる前に俺にも会った。

それは気の早いマリーが、俺を婚約者として両親にあわせると言ったためだ。

だが、あの快活で、気の良いふたりは、恐らくもう……。

「結婚なんて許さないって言われて……喧嘩して、わたしお父さんの話を最後まで聞かなかった……」

俺はかける言葉を見つけられず、黙ってマリーの手の上に、俺の手を重ねた。

「こんな事になるなら、喧嘩なんか、しなかった……ぅぅ、どうして、最後が、あんな」

感情が溢れだすマリーの肩に俺は静かに手を置いた。


⌛︎⌛︎⌛︎


ーー魔女視点


吹きかける夜風が心地よい高台。

星々が輝く闇のなかで、崩壊した灯台のうえから、その者たちは都市を見下ろしていた。

白髪に黄金の瞳をした美青年が口を開く。

「あれは無理だと思うがな。マクスウェル・ダークエコー……私の≪黄金錬成おうごんれんせい≫を不思議な能力で正面から弾いてみせた」

「失敗の言い訳なら聞きたくないわぁ」

紫髪の少女はいらいらした口調でそう言った。

ソラールは肩をすくめて、それ以上は言葉を発さなかった。

「はあー、高い報酬を払ったのに、このザマなんて……所詮は『七大錬金術師』なんて言っても、魔術師になれなかったハグれ者というわけねぇ」
「何とでも言えばいい。あ、後払いの報酬はいらない。抹殺に失敗したからな」
「当たり前だわぁ、あげるわけないでしょ」
「よかった。リソースの枯渇した私へ慈悲をかけてくれるなんて言いださなくて。あんたはしっかり″魔女″なんだな」

ソラールは薄く微笑み、帽子を押さえて立ちあがり、そう言い残すと、体を金の粒にかえて高台から消えてしまった。

「シェリル、悪いことばかりじゃない。アクアテリアスの崩壊に、君の準備を使うか、マクスウェル・ダークエコーに君の準備を使うか、余力の使い所がかわっただけだ。かの錬金術師の攻撃で今、この都市に戦える者は、ほとんど残されていないのだから」

「いいえ、これは悪い流れだわぁ、ジュニスタ。不確定の崩壊因子だからこそ、こっちも″外側″から助っ人を入れたのに、これでは意味がないわぁ」

「では、どうすると?」

赤と黒の貴族礼服を着た壮年の男ーージュニスタは首をかしげて聞いた。

少女は足元の影から飛び出してくる猫を抱きしめ、撫でながら「そうねぇ……」と思案げに語尾を濁らせる。

「『琥珀のガングルゥ』たちには朝の女神の回収を継続させなさぁい。不確定の崩壊因子はわたしが直々に叩き潰してくるわぁ」

「ならばお供しましょう」

ジュニスタは腰のポーチから魔導書を手にとり開くと、少女のかたわらに立って彼女へうなずきかける。

少女はニヤリと笑ってかえした。

瞬間、空間がねじれ、ジュニスタと少女の姿は高台のうえから消えてしまった。


第七章 琥珀の神聖祭 〜完〜

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