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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第77話 黄金錬成


「なんだ、この黒いバケモノは!」
「聖女の騎士マルセル様が討たれてしまった!」
「誰か、誰か助けを、呼んでくれ……!」

頭をちぎられて動かなくなった聖女の騎士のまわりで、パレード隊を護衛していた神殿騎士たちは黒い獣を取り囲んでいた。

「強すぎる……!」
「こんなの、どうすればいいんだ」

「俺は、俺はこんなところで死にたくない! うわああ!」

ガタガタと震える騎士のひとりが剣を投げ捨てて走りだした。

「グガァア」

瞬間、黒い風となって走り出した騎士の後を何かがが追いかけて先回りしてしまう。

そこに立っていたのは黒い獣であった。

まるで遊び殺すように、ひとりも逃さずその獣は邪悪に笑い、牙をのぞかせてくる。

「っ、まったく見えなかった……?」

黒い獣を包囲していた騎士たちは、黒獣のもつ驚愕の運動能力に冷や汗を滝のように流して、引きつった声をもらした。

皆が恐怖に耐える中、最初に逃げ出した騎士の頭が黒い獣によって簡単に砕かれる。

「なんなんだよ、何が目的なんだよ!」
「どうして、こんなバケモノがいきなり……!」

狼狽する手段騎士たちは泣きながら、女神の助けを祈った。

ーーバゴォン゛ッ

「っ、なんだ!?」

圧倒的な強者をまえな恐怖に怯えていると、神殿騎士たちはまた強烈な爆音を聞いた。

さっき、馬車が爆破された時と似た音であった。

爆破は連鎖するように、数秒に一回のペースで遠くからも、近くからも聞こえてくる。

「聖都が、アクアテリアスが、破壊、されてるいるのか……?!」

神殿騎士たちは『余剰街』のあちらこちらから登る、黒い煙柱に、この戦いが巨大な崩壊のはじまりだとさとる。

「グガァアアア」

「くっ、ここで引いてなるものか! 我らは誇り高き神殿の騎士だ! 女神ソフレトにあだなし、国家転覆をなす不吉の獣め! 討ち滅ぼしてくれるわ!」

神殿騎士のなかでも、もっともたくましい精神力を持つその壮年の騎士は、まわりで怖気付いた仲間たちを鼓舞した。

彼に続き、皆が覚悟と戦意わ思いだし、黒い獣と真正面から戦った。
















「あーあ、まったく見てらんないわぁー」

紫髪の愛らしい少女はそういった。

彼女は地上で果敢に戦う神殿騎士たちを嘲笑うかのように『灯台』の最上階から、地上を見下ろしていた。

「ねえ、レドモンド、あと弾は何発残ってるわけー?」

少女はかたわらの線の細い青年ーーレドモンドへ問いかける。

「ざっと起爆可能なのは、5万といったところでしょうか」
「そぉ、それじゃ、全部爆破しちゃっていいわよぉ」

少女はつまらなそうに言った。
それを受けてレドモンドは顔をしかめる。

「申し訳ございませんが、進言させていただきます。ここで全余力を使い切るのは悪手かと」
「いいわよ、どうせ″黄金錬成″するんだし」
「いえ、しかしですね……」
「何、私の言うことが聞けないわけぇ?」

少女はレドモンドのほうへ不満そうな顔を向けた。

レドモンドはしかめていた顔を爽やかな笑顔にもどすと「目標は必ず達成します」と確かな口調で言った。

少女は鼻を鳴らして、ふたたび地上を見下ろすと「あなたに任せるわぁ」と気怠げに言った。

「まあ、適当にやっても勝てるしねぇ……うふふ、それだけの準備をしたんだからぁ」

少女は楽しげに笑う。

「過信はよくない、シェリル」

レドモンドと少女の背後から、壮年の男が現れて言った。

黒と赤の貴族礼服を着た彼は、片手に分厚い魔導書を開いたまま歩いて、少女のとなりまでやってきた。

「わかってるわぁ、ジュニスタ。不確定の崩壊因子、でしょ? マクスウェル・ダークエコー……あれだけは、別途対策を用意したんだから、安心しなさぁい」

「それがよろしい。完璧な準備をした時こそ、最後の詰めはコマをひとつずつ動かして検証するのがよいのだから。その一手としてあの錬金術師は最高の″詰め″だ」

「ふふふ、流石は元ドラゴンクランの魔術師ね」

「どちらかと言えば魔術協会の『黄昏』と呼んで欲しいものだが」

壮年の男、ジュニスタはニコリと薄く笑い、眼下の燃える都市を見つめる。

「ああ、レドモンドよく見ておきなさい。あれが破壊の到達点のひとつだ」

ジュニスタは空を飛んでいく、人影を指差して熱っぽさすらはらんだ眼差しを向けた。

「はい、先生。そろそろ始まりますね……かの錬金術師による≪黄金錬成おうごんれんせい≫が」

レドモンドはそうつぶやき、天空でピタリと静止したその影を見つめていた。


⌛︎⌛︎⌛︎


ーーマックス視点

「ふん!」
「グガァアア!」

黒い獣の振り下ろしを避けて、太い首を剣先でつらぬく。
怯んだところへ、指を鳴らして槍を四方八方から展開することで、穴だらけにしてトドメを刺す。

「ん、黒い獣たちが引いていく?」

依然として続くパニックにより、阿鼻叫喚の地獄とかわった大通りには、たくさんの市民らがいる。

しかし、彼らを惨殺していた黒い獣たちは、もう殺害に飽きたとばかりに壁や屋根をつたって、どこかへ逃げていってしまう。

そこには、明らかに統率された意志を感じた。

何者かが操っているのは間違いない。

「マックス!」

屋根上からマリーの声が聞こえて、すぐさま彼女のもとへ戻る。

「マリー、平気だった?」
「わたしは平気だってば。それより、マックス、あれを見て!」

マリーの指差す先は空だった。

白雲がおよぐ爽やかな蒼穹。
そのまん中にひとりの人間が浮いている。

「ほう、お前が、マクスウェル・ダークエコーか」

男は遥かな天空からこちらを見下ろして言った。

白く装飾華美かつ重厚なロングコートをなびかせるその美青年は、さらさらの白髪と金色の瞳が、雄大なオーラを醸し出している。

その男は、洒落たハットを抑えながら、鋭い目つきでこちらを見てくる。

ひと目見て、只者じゃないとわかった。

「お前は何者だ」

俺はマリーを背後にかばいながら問いかける。

「わたしは″黄金の錬金術師″と呼ばれている。名はソラール、短い間だが、よろしくな」
「聞いたことがないな。【錬金術師】のクラス。空を飛んでいるのはお前のスキルというわけか」
「さてな、企業秘密というやつだ。にしてもそうか、知らないか。この国の外側だとそれなりに有名なのだがな……まあいいか」

ソラールは肩をすくめて、薄い微笑みを浮かべると、左手をかるく持ちあげた。

何かする気だと思い、身構える。

「そんなに怖がるな。左巻きの魔女から、報酬をもらう分、全力のチカラを使う予定だ」

ソラールは首をかしげ涼しげにそう言うと、手の中に赤い光の球をつくりはじめた。

巨大な力の奔流を感じる。

その赤い球はみるみるうちに大きくなり、スイカほどの大きさに成長すると、やがて黄金の輝きを放ちはじめた。

「さあ、見せてやろう、マクスウェル。これは君のための霊薬、君のための葬式、君のための偉大なるバッドエンドだ」

「っ」

俺は目の前の人間の危険さに、背筋に電撃がはしり、全身に鳥肌がたつ感覚をおぼえた。

この男……マズすぎる。

ーーパチン

俺は本能に従い、間髪入れず指を鳴らした。

撃ち出す巨大な丸太。
無限のエネルギーによって加速されたそれは、真っ赤に燃えあがり、対象を破壊し尽くすオーバーキルを約束する一撃だ。

しかし、

「おっと! それは喰らうわけにはいかないな!」

ソラールは俊敏な動きで身を翻すと、左手にもつ黄金の球体で『巨木葬』を受け流してしまった。

俺の放った必滅の一撃は、空の彼方へと飛んでいき、白雲を吹き飛ばして、天空を完全な青空にかえるだけに終わる。

瞬間、ソラールはニヤリと微笑み、くるっと宙空で回転すると手に持つ黄金の球体を投げつけて来た。

「見たまえ、錬金術の到達点だ」

「マリー! 離れろ!」
「マックス、逃げて!」

俺は叫び高速でせまる黄金の球体へ、指を連続で鳴らして『巨木葬』を連射した。

覚醒された高い集中力。
研ぎ澄まされた感覚が生み出す時間。

それは俺に、今まで最速の指パッチンを可能にした。

いつからか、すべての脅威を指を鳴らすだけで排除できたが、これは本質的に違う。

久しく忘れていた。
危険に立ち向かう覚悟。
大いなる困難との相対だった。

「ぐぅ!」

撃ち出す『巨木葬』を加速させるための乱気流の余波で、あたりの建物がメキメキと音を立てて割れて、衝撃に吹き飛ばされていく。

しかして、その成果はあった。

合計10発もの『巨木葬』を撃ちだし、俺はソラールの放った黄金の球体の軌道を変えることに成功したのだ。

「なに? 私の≪黄金錬成おうごんれんせい≫から逃れるのか……?」

ソラールはハットが吹き飛ばないようおさえながら目を見開き、驚いているようだった。

「残念だったな、お前の必殺技は不発だ」

俺は内心の冷や汗を顔にださずに、ソラールへ向き直る。

「ふむ。だが、マクスウェル。どちらにしても君が勝ったわけじゃないな。ほら、見たまえよ、可哀想に……変な方向へ攻撃をずらしたせいで、この国の崩壊ははやまったぞ」

ソラールの手が指し示す方角を見て、俺は自分のうかつな行動を思い知った。

遠くのほうへ、放物線を描いて飛んでいく黄金の星が見えたのだ。

あれは俺が今しがた弾いた、ソラールの攻撃だ。

「よく見ておけ、太陽の現出だ」

ソラールはそう呟くと、指を鳴らした。

途端、黄金の球体が落下した『灯台』方面で途方もない″ヒカリ″が生まれた。

「きゃっ!」
「マリー、見ちゃだめだ!」

俺はとっさにまぶたを閉じて、マリーを抱きしめて光の現出からその身を守った。

一瞬遅れて、膨らむ激熱の空気が俺の背中を力いっぱい叩いて、いともたやすくマリーを抱える俺の体を浮かせて、遥か彼方まで飛ばしていってしまう。

「うがっ!」

鼓膜が破れるほどの重たい爆音。
失われた視界のなか降り注ぐ瓦礫。

すべてが収まるのには、じつに数十秒もの時間をようした。

「ぁ、ぅ、ま、マリー……? 大丈夫?」

俺は痛む背中にうめきながら、腕のなかのマリーを見る。

「なんとか、ね、マックスも平気?」
「ああ、俺は大丈夫だよ」

マリーが顔をあげてきたのを見て、心底安心する。

「瓦礫に埋まっちゃったわね」
「すぐに出してあげるよ」

俺はかるく指を鳴らして、スキルの発動ではなく、その音の反響具合から瓦礫の積み重なり状態を把握した。

どの瓦礫から収納して、どかしていけば崩れずに済むか、プランをいっしゅんで組み立てて、俺はそれを実行に移した。

ーー数分後

俺とマリーはようやく、瓦礫の外へと出られた。

「っ、マックス……あれ……」

マリーはハッと息を呑んだ。
俺もまた目を見張り、ソレを目撃する。

俺たちの見たもの。

それはアクアテリアスの真ん中にポカンと空いた途方もない空洞と、そのなかへ崩れて落ちていく全壊した『灯台』の無残な姿であった。

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