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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第66話 尊さ災害と面倒な予感


マリーと一緒に神殿を出てきた。

『灯台の都市』のメインオブジェクトである、『灯台』のなかはいくつもの段からなる多重構造で形成されている。

「わあ、すごいわ!」

マリーは神殿を出て、すぐの柵から身を乗りだし『灯台』の内側を見渡した。

俺は彼女のうしろから、あたりを警戒しながらも、この都市の構造に舌を巻いていた。

『灯台』の中央には山が入りそうなほどの大きな穴が開いており、その真ん中をまた巨大な塔が貫いている。

巨大な塔は外壁がほとんどなく、螺旋階段や昇降機が取り付けられた大黒柱のまわりに、ここから見えるだけでも十数階もの″地面″を持っていて、その多くはいま俺たちの立っている『灯台』の内周部分のエリアと多数の橋で繋がっている。

つまり『灯台』の内側は、そこだけでも、中央を貫く巨塔エリアと内周エリアで分かれているのだ。

灯台の端っこは、もう視界限界だ。

遥かなる遠方には青い空が見えず、灰色の壁があるという事が、俺たちが『灯台』のなかにいるのだと唯一教えてくれる手段だろう。

閉鎖感はまるで感じない。
あまりにも大きすぎる。

「それじゃ、マックス、どこからまわろっか!」

わくわくを抑えきれないマリーは、いつもと変わらず、気軽にそう言って、俺の3歩前でこちらへふりかえり、首をかしげてくる。

俺はそんなマリーへ、ピシッとかかとを揃えて、たくさん練習したお辞儀をした。

「マリー様、ここは我らの馴染みの都市ではなく、アクアテリアスでございます。あまりはしゃぎすぎないようお願いいたします」
「え……」

俺はスッと頭をあげて、極力感情が宿ってない目ーーオーウェンからお墨付きをもらったーーで、マリーへそう告げた。

これはマリーが″聖女モード″をもっているならば、俺も俺で″聖女の騎士モード″を待とうという、メリハリとふんべつの問題だ。

マリーには「何その喋り方……嫌だ……」と、とてつもなくドン引かれてるが、これは仕方がないのだ。

いつどこで、誰が、【施しの聖女】のことを見ているのかわからない以上、アクアテリアスにいるあいだは、絶対に気が抜けない。

「マリー様、どうぞ、こちらへ」

「ねえマックス、ずっとそれで行く気?」

「見てください、マリー様、串焼きがありますよ。とっても美味しそうです」

「ねえ、マックス」

「マリー様、見てください、猫がいます」

俺はマリーから寄せられるジトッとした目線に耐えられず、浅い話題をふりまくる。

「はあ。まあいいわ、マックスも悩んで、わたしの騎士らしくしてくれてるんでしょうしね」

「……」

マリーと一緒に通りの端っこを歩きながら、俺は彼女の寛容な心に感謝した。

「あ、本当に美味しそうな串焼きだわ。ここはわたしがおごってあげるわね、マックス。すみませーん、おじさん、そこの串焼きをふたつくださいな!」

マリーは露店の立ち並ぶ通りで、可愛らしく微笑み、柔和な店主に話しかけた。

「あいよ、串焼き2つ……どうはぁ?! なんてべっぴんさんだああ?! あんた。いえあなた様は、もしや聖女様なのでは?!」

店主は目ん玉飛び出すほど驚いて、マリーを頭のてっぺんからつま先まで眺める。

「てへっ、実はそうなんです。『崖の都市』ジークタリアスから来ました【施しの聖女】マリー・テイルワットっていいます。あ、でも、このことはあまり大声で言わないようお願ーー」

「てめぇらぁああああああああ!!!
なにどうでもいい一般人なんかの接客してんだぁあああ! 【施しの聖女】様が店先にご降臨なさってんだろーがあああ!?」

屋台の店主が、となりのとなり、そのまたとなりの屋台まで響き渡る大声で、あたりの屋台の店主仲間たちを一手に集めてくる。

パニックを想定して、気を利かせたマリーの忠告むなしく、凄まじい勢いでさっとうする人間たちに、マリーはあっという間に取り囲まれてしまった。

「【施しの聖女】様だとぉお!?」
「まさか、あの武芸優れ、戦場の華とうたわれる『崖の都市』の戦乙女が、こんな通りを歩いてくださっているのかぁあああ?!」
「尊い! 尊すぎるぅう! こんな地上に降臨なされてくれるなんて、ありがとうございます!」
「なんてお美しいんだ! ありがとうございました、ありがとうございました! もう満足です、死ねます!」
「聖女様あああ! お金はいりませんので、うちのパンケーキを食べてくださいぃい!」
「うぅう……輝いてる、輝いてると兄ちゃん、【施しの聖女】様が尊すぎるよぉ!」
「ああ、弟よ、いますぐに聖女マニアの親父を連れてきてやれぇ……たぶん、ここで尊死することになるが、親父も本望だ……!」
「兄ちゃんは?!」
「俺は、もう、持ちそうにない、ヌッーー」
「兄ちゃぁぁぁぁぁあん?!」

通りはもう大パニックであった。

卒倒する者が次々と現れたり。
聖女の尊さを少しでも感じようと、押しあい、屋台が潰れたり。
風下にして聖女の吐いた息を吸ったとかで、殴り合いの喧嘩をはじめたり。

しまいには、剣と剣がぶつかったり、スキルによる攻撃の撃ち合いがはじまってしまった。

「やばっ?!」

マリーは顔を隠す目的でかぶっていた帽子を深くかぶり、慌てた様子で言った。

なんということだ。

ジークタリアスでは地元だから平気だったが、まさか他の都市では、レア聖女が街を歩くだけでこれほどの大混乱が起きるなんて。

世紀末すぎるだろーが。

「マリー様、お手を!」

俺はマリーを守らなくてはと思い、マリーの手にとってお姫様だっこすると、石畳みに足跡を残しながら、一気に空へ跳躍した。

「【施しの聖女】様ぉああああ!」
「聖女様がさらわれたぞおおお!」
「あのクソカス男を撃ち殺せぇえええ!」

建物の屋根に飛び乗った俺へ、火炎やら、水やら、風の弾丸が飛んでくる。

俺はそのすべてを、指をはじいてポケットに一旦しまい込み、再び高速でポケットを開いて、空中でぶつけあって爆発させる。

「くぬぅあああ?!」
「なんだこれは、熱い?!」
「聖女様ぉあああ!」

火炎と水により、巨大な水蒸気が発生し、それを風の爆風であたりへ拡散させる。

これで時間は稼げるだろう。

「マリー様、行きましょう。通りに出たのがうかつ過ぎました」
「まさか、みんながバトルロイヤルをはじめるなんて……これは、もっと変装したほうが良さそうかなあ……」

俺たちは一旦『灯台』を出て『余剰街』へ向かうことにした。


⌛︎⌛︎⌛︎


『余剰街』ーー『蒼竜慈善団』の宿屋へやってきた。

「あ、マックス先輩!」

宿屋の反対側から声が聞こえた。
デイジーだ。

彼女とオーウェンは、宿屋前にあるコーヒーショップで優雅にブレンドコーヒーを楽しんでいたらしい。

「ブルーアクアテリアス。コクが深い」
「オーウェン、それいくらするの?」
「銀貨1枚だ」

馬鹿高い。
アホじゃねえのか、この剣豪。

「マックスは子どもだからな。もうすこし成長して、大人の味覚がわかれば、これにはそれだけの価値があると理解できるだろう」

「はいはい」

おざなりに手を振って、俺とマリーはデイジーとオーウェンの机についた。

「神殿はどうだった、マリー」
「凄い大きかったわ。わたしの部屋にはお世話係の可愛い女の子もいるのよ。でもね、その子、わたしが話しかけたら『聖女様が話しかけてくれたぁ、ぁ……!』とか言って膝から崩れちゃって」

マリーは豊かな胸を乗せて腕を組み「わたしって、そんなに使用人を蔑ろにする嫌な女に見える?」と不満げに頬を膨らました。

オーウェンは「たぶん、ネガティブな意味じゃないと思うが…4」と抑揚のない声で言って、ブルーアクアテリアスとやらをひと口ふくんだ。

「ところで、ジークはどこ行ったんだ?」

俺は目をつむり、コーヒーの香りを楽しんでるだけで、カッコいい剣豪様へたずねた。

なぜだが、デイジーがピクッと震えて、彼女もオーウェンを見ている。

オーウェンはゆっくり目を開ける。

「実は、目下行方不明だ」
「……」
「奴のベッドにはこんな書き置きがあった」

俺はオーウェンから手紙を受け取る。

「『ちょっと聖女様を見てきます』……これをジークが?」
「ああ」

オーウェンは香りを愉しみながら答える。

なに余裕ぶっこいとんじゃ。

ーーパチン

「あ、」

オーウェンのブルーアクアテリアスを収納して、俺は勢いよくたちあがった。

「あいつは綺麗なモノと、きらきらしたモノがたまらなく大好きなんだ。現に聖女にたいして前科を持ってる」

俺はマリーのほうを見る。

マリーはうなずき「人間状態だとIQ4しかないわ、あの竜」と確信した顔で言った。

「絶対面倒なことになる。ジークを見つけるぞ」
「俺のコーヒーが……」
「めっ! コーヒーはお預け。ジークを見つけるまでダメだからな」

物欲しそうに手を伸ばしてくるオーウェンの手をはたき、俺は彼を立ちあがらせる。

デイジーとマリーは力強くうなずいた。

低知能ドラゴンを回収するクエスト開始だ。








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