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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第60話 贖罪と執行 前編


アインに聞きだした、マリーの監禁場所へといそぐ。

地下扉を蹴りあけて、はいった先に俺は手枷をかけられた聖女様を発見した。

「マックス、来てくれたのね! アインの奴に、いろんな場所たらい回しにされて、もうくたくただったわ!」
「ぁ、ぁぁ」

壁際に繋がれて、へたりこんでいたマリーが立ちあがって笑顔で言った。

もうその姿を見ただけで、俺は安心してしまい、力が抜けてしまう。

「よかった……マリー、本当によかったぁ……なにも、されてない? 怪我は、大丈夫?」

安心の次にやってくるのは、またしても心配だった。

俺はマリーのそばにより、気丈に振る舞うクセのあるアルス村の姉御の顔を、ぺたぺた触って確認する。

黙ったまま、目を見開くマリーのおでこは熱かった。

「っ、マリー、すごい熱だよ?! まずい、まずいよ、きっと噂に聞く病気なんだ! はやく病院にいかないと……ッ!」

俺が慌てだすと、マリーはだんだん力なくなっていき、膝をついてしまった。

やはら、マリーは弱っているんだ。

「えへへ……そうね、わたし、ちょっと病気みたいだから、もうちょっとこうしてて欲しい、かも♪」

マリーはそう言って、俺の手に頬をすりすり擦りつけて来た。

ああ、まずい。
なんか、俺まで熱くなってきたぞ。

でも、マリーは調子が悪いから仕方ない事だし……むぅ、ここは耐えるしかないか。

俺は緩みそうになる頬を、自分でたたいたりして、だらしなくなるのを抑えながら、マリーにすりすりされ続ける。ありがたや。

しばらくして、マリーは「あっ」と声を上げる。

「アインは、どうなったの? あの体、とてもまともには見えなかったんだけど」
「マリー、安心して。アインがなにをしてあんな風になったのか……道中、ゆっくり話すから」

俺はそういって、マリーを繋ぐ鎖を、指パッチンで破壊して、歩きだす。

手枷をつけたま破壊すると危ないので、今は我慢してしてもらう事にする。

「ねえ、マックス。わたし、手枷がついたままだと、歩きづらいから、マックスにお姫様抱っこを所望しょもうしたいんだけど」

俺はドキッとして、聞きかえす。

「……それって合法? あとで神殿に怒られるの嫌なんだけど……」

すべては高度なブラフだ。

本心は、

嘘です、ぜひ抱っこさせて欲しいです。

と言ったところか。

俺が演技派の顔でしぶると、マリーは豊かな胸をずいっと張って「ご・う・ほ・う♪」と気分良く言うのであった。

うん、合法なら仕方ないな。


⌛︎⌛︎⌛︎


マリーを抱っこして神殿にもどり、案の定、めちゃくちゃ嫌な顔を神官たちにされたのち、俺はアインを彼らへ引き渡した。

無気力な様子のアインは『沈黙の聖鉄』がはめられ、完全に抵抗力を奪われた状態で、神殿の地下牢へと連れていかれた。

俺とマリーほ、ちいさくなる彼の背中を見送った。

「マリー、実は言っておかないといけない事があるんだ……」

首をかしげるマリーを連れて、俺は神殿の裏の共同墓地へとむかった。



















⌛︎⌛︎⌛︎










ーーバギィン






ーーアインの視点

星々が綺麗に輝く夜空のした。

破壊され尽くした街で、うっすら光る白髪と翠瞳すいどうをもつ青年は唖然として、瓦礫に背をあずけていた。

「……」

青年はうつろな瞳に、ひかりを取り戻す。

「……………………あの影はいったい……『沈黙の聖鉄』も腐り落ちてるな……」

アインは神殿地下の暗室に幽閉された直後の、不思議な体験を思いだす。

暗闇のなか、女性の声が聞こえたかと思うと、すぐに″黒より暗い影″が自分に覆いかぶさって来たのだ。

目が覚めると、オーメンヴァイムへ直行が約束されていた運命が嘘のように、アインは荒れた街のど真ん中に戻ってきていた。

「……」

アインはいつの間にか、手のなかに握っていた『黒いロザリオ』を、困惑しながら眺める。

こんな不吉なモノ、絶対に持ち歩いたりしていなかったはずだ。

アインはそう思いながらも、異質なロザリオに、穏やかな神性を感じとってしまい、信仰を旨とする民のひとりとして、それを投げ捨てることができなかった。

とにもかくにも、アインは黒いロザリオをポケットにしまう。

彼は沈黙と共に、夜空を見上げた。

そうして、どれだけ黙っていただろうか。

「……疲れたな」

彼は、ふいに、つぶやいた。

逃げることは出来る。

だが、生きていくアテがない。

……いや、正確にはある。

マックスにはああ言ったが、人を魔杖で突き刺せば、いくらでも魔力の補給は可能なのだ。

これまでのアインなら考えてきた。

英雄が生きるためならば、それも許されるのではないか、と。

100万の民を、危機から救える者がいるなら、民の100人や1000人の命を使って、生きながらえたっていいはずだ。

命の優先度は【英雄】が一番なのだ、と。

しかし、今のアインは少し考えが変わっていた。

先ほど猛烈な頭痛。

流れこんできた、匂いのあるビジョン。

それに、鮮やかな感情、記憶の熱、濁流だくりゅうのようにおしよせる経験とイメージの増加。

マックスから莫大な魔力の供給を受けたときに得た、彼の生々しいまでの肉体的精神的体験たちが、アインの思考にひとつの提案をしていたのだ。

「……はぁ」

アインは腰をすえて、頭を抱える。

クソカスだったのに。
ただの【運び屋】だったのに。

彼は目を閉じて、マックスの経験した、巨大な困難と、それと向き合った彼の感情を思い起こす。

どれほどの狂気に身をまかせたか。

全てをけて、保証のないーーいや、保証がないよりタチが悪い、負け戦になる可能性のほうがずっとずっと高いギャンブル。
見えない目標のために、ひたすらに積み上げた、純粋な不安との2年間の孤独戦争。

ずっと昔の記憶も見た。

アルス村で幼いマリーとオーウェンと共に過ごした幼少期だ。

マリーは得意げに馬にまたがり、羊飼いだったマックスとオーウェンは羨ましそうに彼女のうしろを、徒歩でついて行っている。

この男が『拝領の儀』でマリーとともに輝かしい未来を期待し、女神にそれを裏切られ、そのとき、どんなに気持ちでいたのか。

悔しかった。
悲しかった。
自分だけどうして。

それでもなお、″彼女″のことを守りたかった。

本当にそれだけが原動力。

ただ一念をいだいて、狂気的努力を救われない絶望のなかで続けられる人間が、いったいこの世界にどれだけいるっていうんだ?

あの男はーー本当に、すごい奴だった。

「……アホ、だったか。こんな傑物に、勝てる要素がない……何が、俺が一番大切にできるだ……何が聖女は英雄と結ばれる運命にあるだ……笑い話にもならねぇな……」

俺は死ぬほど、恨めしい、あの男が。

【英雄】だった、俺を遥かに越えるとんでとない奴だった、あの平凡な奴が羨ましい。

そうか……そうだな、そうかもしれない。

認めてやるよ、マックス。

凄い【運び屋】はいるのかもしれない。
それに、嫉妬していただけのダサい【英雄】がいただけなのかもしれない。

心優しい竜を殺した直後の、あの少年の言葉がアインの頭をよぎる。

″お兄さんは、可哀想な人なんだね″

″いろんなことが起こるから、せかいは面白い″

「俺は間違っていた……だが、同時に正しかったんだ……迷宮の果てに逃げて、隠れて、仲間を蹴落としてそれは、英雄なんかじゃないって心のどこかで思ってた……だけど神が【英雄】って言うのなら【英雄】をやろうって……だけど、俺は″英雄″だった。それだけで、よかったんだ。豪快を気取る必要なんて、自身の欲を解放し、まわりを手懐けることなんて、なにも必要なんてなかった。大事なのは【英雄】であることじゃない、どんな″英雄″になるかは、自分で決めればいい。クラスは関係ない。あの男が、そうしたように……」

アインは閉じていた目を開き、魔杖を右手に召喚し、再生した左手に魔剣を召喚して立ちあがった。

空は晴れた。

もう雨は降らない。

深呼吸をする。

俺はいまでも、マックスは気に入らない。
だが、奴は″片鱗″に気づかせてくれた。

「これが、俺に与えられた、最後の時間。……マックスがくれた最後の時間か」

アインの体を緑雷がほとはじる。

彼はつい先ほど、のぞいたマックスの記憶から、今ジークタリアスが″凶暴化した市民″によって危機に瀕していると知っていた。

最後に何をするのか。
自分が何になるのか。

アインは答えを求めるように、星々が輝く夜空へ飛び上がった。


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