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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第59話 翡翠の英雄 後編


向かってくる長槍のごとき大杖。

ーーパチン

投じられるソレをしっかり目で捉えて、ポケットを開き、極小時間のあいだに収納する。

「収納できないだと?」

予想外の事実に、目を見張る。

俺はすぐに身をひいて、大杖をかわした。

背後の建物が、一投で倒壊しはじめる。

なんて衝撃力をかねそなえた杖なんだ。

わずかな動揺を抱え、今度は投じられる大剣へ向けて指を鳴らす。

今度は、ふつうにポケット空間へ収納が出来た。

大杖と大剣。

この二つには、何か差がある。

だが、両者とも似たような気配を感じる。
どちらもアインのスキルによって召喚されたものなはずだが……。

でも、なんで今さら杖なんて召喚できるようになるんだろうか?

俺がアインを分析するなか、アインもまた俺の手元を穴が開くほどに凝視してくる。

しかし、どうやら俺の限定法を観測することは出来なかったらしく、イライラして彼は叫び出した。

「くそ、見えねぇ! 何かしてる気がするが、なんて速さなんだ……っ、てめぇのスキルは〔収納しゅうのう〕だったよな! まさか、一瞬で開いて、一瞬で閉じてるか? だったら、まだ甘いぜ。また召喚すればいいだけのことだろがッ!」

アインは手のなかに緑の魔力を粒子を集めはじめた。

俺のポケット空間からも召喚できるのか。

となると、俺の〔世界倉庫せかいそうこ〕にはパスカルみたいな″アンチスキル″能力がないってことか……。

だが、どの道、召喚させる時間なんかやらないけどな。

三度目の指パッチンはアイン自身を狙った攻撃だ。

ーーパチン

「ガバッ!?」

魔剣アインの召喚が中断され、俺のポケット空間から移動しかけていた大剣がそのままになる。

口から血の大量に吐きだして、吹き飛ばされ、建物に体を突っ込ませていくアイン。

彼の影を見失う。

今の一撃はドラゴン形態のジークを無力化した攻撃に近いものを再現したわけだが……今の彼なら、まだ耐えられるかもしれない。

俺は背後の倒壊した建物を見やった。

ーーガラッ

建物がわずかに傾いて、瓦礫の山が崩れる。

なるほど。

「大杖を再召喚したか。あっちの杖も魔剣アインみたいに召喚可能なのか」

やっぱり、魔剣アインとかなり似た性質をもってると見える。

トリックはわからない。
だが、アインがまだ戦闘能力を有しているのは確かだ。

全部、受け止めたうえで、

「……叩き潰す」

雨音だけが聞こえる通りで、俺はつぶやく。

憤怒ふんどの熱をおさえこみ、最後の優しさで彼に付き合う。

チョロチョロと建物の隙間を飛び回ってるのは見えている。

どうやら俺の視界に入らない作戦らしい。

確かに、有効ではあるだろう。
よく考えたものだ。

どこにいるか分からない視界外の相手にポケットから攻撃を放ってぶつけるのは、それなりに難しい課題点ではあるしな。

「そこか」

視界の隅っこが捉えた、わずかな影の揺らめき。

ーーパチン

むかってくる大杖を狙い、指を鳴らす。

大杖ならば俺に収納されないと読んでの、投擲攻撃だろうが、これくらいならば、他にいくらでもやりようがある。

ーーギィンッ!

ポケットから剣をだして、ブロックしてもいい。

あたりの瓦礫を回収して、何重にも構えて盾にしてもいい。

乱気流で射線をコントロールするのもいいだろう。

そして、単純にーー。

「掴み取ることだって出来るぞ、アイン」
「っ、クソ!」

ギルドの屋上。
そこで、手を振り終え、驚愕の表情でかたまるアインを見上げて言ってやる。

「ん」

手のなかの大杖が、緑の魔力粒子となって消えていく。

また、杖を召喚し直したか。

「後ろ」

今度は背後からせまる気配。

特に見ることもなく、指を鳴らして乱気流をぶつけて軌道をそらす。

場所さえわかれば、視界の外でもポケットから攻撃を当てられる。やりにくいだけだ。

ーーその後もアインの影からの投擲はつづいた。

しかし、何回も続けば、もういい加減飽きてくる。

……これ以上は無駄だな。

「アイン、もういいだろ。お前は俺に勝てないーー攻撃を受けてやるのは、次が最後だからな」

あたりの建物を、俺に見られないよう慎重かつ高速に動きまわるアインへの警告。

攻撃の間隔が途端に長くなった。

「……」

雨の音がざあーざあーと聞こえ続ける。

しばらくした後、変化が起きる。




次の一撃は毛色が違ったのだ。





巨大なチカラの波動を感じる。
肌がピリッと焦げる、渾身の予感。

彼の声が聞こえた。

「≪アイン・ファイナルギフト≫」

光を見た。

雨を蒸発させ、あたりに小魚のように泳ぎ逃げる雷たちが、無数に空へ散開する光景。

光のまばゆさが、建物の間を縫うような、無数の隙間から、こちらを狙ったアインの姿を、俺はたしかに見た。

これが、最後の一撃か。

空気の壁を幾層も突破して、超高速で全霊のひと刺しが飛んでくるのがわかる。

正真正銘、最後……。

アインの全力の魔力放射により強化された必殺。

数百メートル先の建物から狙撃してきた、彼と目を完全に合わせて、せまっくる一撃に俺はそなえた。

そしてーー指を鳴らした。

ーーパチン

俺の〔世界倉庫せかいそうこ〕上空を吹き荒れる嵐がもつ、無限の大気エネルギーで加速され、撃ち出される『巨木葬きょぼくそう』。

普段ならオーバーパワーすぎて控えがちな、大質量の発射だがこの一撃には答えてやらねばなるまい。

「俺だって本気だぞ、アイン」
「ッ!?」

大杖の威力と、俺の崖下産の丸太が正面からぶつかりあう。

力は拮抗することなく、俺の丸太はまっこうから大杖を打ち砕いて、突き進んでいった。

刹那ののち

久方ぶりな解放された我が本気『巨木葬』は、ジークタリアス冒険者ギルドを跡形もなく吹き飛ばして、何百メートルにもわたる長大な破壊跡をつくりだしてしまった。

雨雲すら『巨木葬きょぼくそう』の一撃にはふんばれず、空の彼方へと吹き飛び、雲の向こうには、静かな夜が、顔をだしている。

あたりには天気とは不釣り合いすぎるびしょびしょに濡れた街並みが、ちぐはぐに残るだけだ。

俺は右手をゆっくりさげて、胸の奥からこみ上げてくる感情をぐっと堪えた。

晴れ渡る夜空のした、俺は破壊跡をおって歩きだす。

「ぅ、く、ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ……」

破壊跡の終わりにアインの姿を見つけた。

左肩から先を完全に失い、赤い血がとめどなく溢れている。

顔色が蒼白のアインは、うつろな目で俺を見上げてきた。

アインのそばに寄って膝をおる。

彼の腕を見下ろすと、それが乾き、しわだらけの、まるで寿命を終えて、死ぬ間近の老人のような手なのがわかった。

「はぁ、はぁ、ふぅ、ふぅ……俺の、魔杖は魔力放射に加えて、吸収やら蓄積やらが、出来るらしくてな……俺は、生きるだけでも、大量の魔力を吸収しつづけないと、いけない体質になっちまってるんだ……ふぅ……」

アインは「喉が乾いて、乾いて仕方がないんだぜ……」いい、口を開けて、もう降っていない雨で喉を潤そうとした。

「雷を受けてたのは、エネルギーを補給するため、か?」
「ぁぁ、定期的に雷を呼べば、ある程度、活動できる魔力がまかなえる……だが、雨がやめば、それも出来なくなる……どのみち、俺は雨の時期が終われば、必ず死ぬ運命にあるんだ……」

アインのみるみるうちに生気を失っていく顔を見て、俺はこいつの命が枯れつきようとしているのだと理解した。

「なんで、なんで、ジークを殺したんだ」
「……あの、蒼いドラゴンのことか…………ドラゴンだから、だ。英雄はドラゴンを殺す。そういうものだろう、なぁ、マックス?」

ふざけるなよ……ジークが死ななくちゃいけない理由なんて、ありはしない、だろ。

「ジークは悪いドラゴンじゃなかった。お前と戦うことになったのは、お前がマリーを攫おうとしていたからだったはずだ。まず、お前が悪いじゃないか、違うか?」

「悪い、ドラゴンじゃない…………そうだな、あいつは、悪い、ドラゴンなんかじゃ、なかったかも、しれない……。家族思いで、兄弟が大好きで、そいつらと幸せに暮らして、一番上のお兄ちゃんだからって、お腹が空いた時は、弟や妹たちに優先的に食べ物を分けてやって、そうやってひっそりと生きてた、良いドラゴン、だったのかもな……」

アインは無情の顔のまま、俺ですら知らないジークを語った。

「俺は、心優しいドラゴンを、殺したんだ……でも、だからなんだ? マックス、俺は何か間違ってるか……? 間違ってるのは、ドラゴンのくせに、良い奴になろうとした、あいつの方だろう? 選ばれた人間は、ドラゴンを殺す権利がある。だから、殺したんだ。なのに、あのクソガキはーー」

骨と皮の手で俺の肩をつかみ、自身のおこないは間違っていないと、いまだに言葉を撤回しないアインの姿に、俺は抑えていた怒りが再び燃えはじめるのを感じた。

拳を握り、俺は大きく手をふりあげる。

「ヒィ……!」

喉を引きつらせるアイン。

「ぐっ、くそが!」

俺は拳をアインにぶつける事ができず、地面を思いきりぶん殴った。

震源を足元に発生させ、それによって引き起こされた地震が、あたりで崩れかかっていた建物を壊してしまう。

「アイン、俺はお前を、さばかない……!」

俺がアインの傍らに置いてある砕けた魔杖の先端を、俺自身の手のひらに突き刺した。

「ぐっ!?」

体内の魔力が急速に失われていく感覚。
身も心も形をうしなって、全てが無に還る。

俺は、アインの腕が驚異的な回復力で止血され、顔色がある程度戻ったのを見計らって、杖の破片を手から抜いた。

そして、間髪かんぱついれず、そのムカつく顔にポケットからはなった気圧球をたたきつけた。

前歯を数本砕き、顔のいたるところから血を吹きだして、アインは痛みにあえぐ。

「マリーの場所を今すぐに教えろ」

俺はアインを締めあげて、彼女の居場所を吐かせた。

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