【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜
第44話 霧街の孤影 中編
暗い。
ただ暗かった。
ーーパチン
見えない視界のなか、さっき男が立っていただろう場所の、距離を思いだして、あてずっぽうに嵐を召喚する。
「……」
風が一瞬だけど吹き抜けていくのみ。
静かだ。
当たっていない。
というか、まわりに人の気配が感じられない。
「オーウェン。……オーウェン?」
声をかけるが、すぐ近くいたはずのオーウェンからの返事もない。
「ん、明るくなったな」
困惑していると、突如として炎の明るさが視界にもどってきた。
暖色に照らされるあたりを見渡すと、ここがさっきまで俺がいた桜の木の植木部屋ではないとわかった。
四方を無骨で無装飾な壁に囲まれている。
扉は見当たらず、また天井を見上げてもどこかに入り口があるようには思えない。
密室、って奴だろうか。
「というより、設計ミス? 出入りには壁でも叩き壊せってことか?」
誰ともない誰かへ問いかけると、声が返ってくる。
「やぁやぁ、待たせたね、申し訳ない」
さっきの男だ。
目を離した隙に俺の背後数メートル先に、ぽんっと姿を現していた。
「どうしても時間差が出来てしまうのは仕方ないことでね。ーーだが、これで必要は満たした。今から殺すが、恨まないでくれよ?」
男はさわやかな笑みを浮かべて、細身の剣をぬいた。
⌛︎⌛︎⌛︎
「どういう手品だ?」
一瞬の闇から解放された時、オーウェンはすかさず現れた男へとたずねていた。
その男は、髪が長くボサボサで、身体が細く、死人のような印象を見るものにいだかせた。
扉のまえに立つ、そんな幽鬼は、ニヤリと微笑み「さぁ?」と答えると、腰の剣に手をかける。
オーウェンは隣からマックスと、ジークの姿がなくなっていることを気にしながら、ほかに何か変わった事がないかさりげなく確認。
変化がマックスたちの消失だけだと確かめ、男へと向き直る。
「実はね、この部屋の門番を務めさせていたのは、それなりに腕のたつ者たちだったんだよ。それなのに、まるで争った形跡なく、狭い廊下で2人とも無力化されてる。君たちには手応えのない戦士だったかもしれない……どうだい、少しは褒めてるんだが、名乗ってみてはくれないかな、アッパー街の剣士さん?」
「名を尋ねるなら、自分から名乗れ」
オーウェンは表情を変えず、淡々とかえす。
「ふむ、言われてみれば確かに、それが礼儀か。いやはや、犯罪者とわかってるだろう私に礼儀など……しかしてそれも一興か」
男は剣を抜き放ち、体に染みついた作法にのっとり、剣を縦に立てて持った。
「私の名はドゥア。この街では『孤影の騎士』とも呼ばれてる。二つ名のとおり、かつては神殿につかえていたこともあったが……もうずっと昔のことだ」
「ドゥアか、覚えた。うえに戻ったらお前の顛末を神殿に届けるのもいいだろう。ボトム街の濃い霧のなかで、魔剣のオーウェンに切り捨てられたと」
「っ、まさか貴様がオーウェンか。変わった剣を持っているとは思ったが、てっきりかの例の剣士のマネをしてるだけかと……にしても若いな。ん、いやはや、失礼した、戦いに年齢など関係あるまい。こんなところで『剣豪』と殺し合いできるなんて、光栄のいたりじゃないか」
ドゥアは綺麗にお辞儀をして、剣を脱力した片手にもって力なくさげた。
(両手で持たない……血鬼流を修めている剣士か。珍しいな)
オーウェンはかつて戦った″血の剣士″たちとの記憶を呼び起こし、その特有の苛烈なる早業を思い出す。
2人の剣士のあいだを揺れる松明の炎が照らす。
影がおどり、桃の花びらゆったりと重力にまかせて、地に向かう。
桜を背後にしたオーウェンと、扉をふさぐドゥアが動きだしたのは同時だった。
「ハッ!」
「スゥッ」
床を蹴ってせまるオーウェンが、下段に構えていた刀を素早く斬りあげる。
対してドゥアは、突進の速さを乗せた、高速の突きを中断。オーウェンの速斬りに警戒したのだ。
咄嗟に『剣豪』の斬撃予測線に刃をはさんで、オーウェンの初撃を凌いだ。
(この若造、速い)
ドゥアはオーウェンを″本物″だと判断する。
斬りあげを刃を弾き、一歩引こうとするドゥア。
「逃がさない」
オーウェンはすかさず一歩詰めて、刀の切っ先を勢いよく突きだした。
ドゥアは首をふり避けるが、耳が半分ほど吹き飛ばされ、完全な回避とはいかない。
後退を諦めたドゥア。
脱力した腕をしならせて、鞭のような剣撃を、オーウェンの首筋に走らせる。
オーウェンは若干の猶予をもってガード。
ある程度の相手の剣の感触をつかんだあたりで、一旦仕切り直すべく、大きく間合いをあけた。
ドゥアは息をひとつ吐いて、剣を持つ手を切り替えた。
(両利きか)
オーウェンは頭のなかで思い描いた、ドゥアの可能な動きを一度バラして、組み立て直す。
右利きだけの剣士と、両利きの剣士では、繰り出せる技の数が根本的に違うための思考だ。
ドゥアが口を開く。
「強いな、流石は『剣豪』オーウェン。我流といわれながらも万人に力を認めさせた英雄だ。……いや、違ったか、今はただの″罪人″、そして私たちの仲間かな?」
「……」
剣先をさげ、ドゥアは敵の闇へと踏み込むことにしたようだ。
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たくさん更新したいので、1話あたりの文字数を少なくしてみることにしました。
実験的処置なので、続けるかはわかりません。ちなみに今日はあと2話くらい投稿しようと思ってます。
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