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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第32話 ジークはわりと優しい


審問会が解散となり、街の中央広場に集まっていた人々は徐々に街中へと散開していく。

きっと多くの市民が復興作業に従事するのだろう。

街はドラゴンの襲撃で壊滅状態なため、一刻もはやく都市機能を回復するために、市民全員の協力が必要不可欠だしな。

無期限の執行猶予つきで、オーメンヴァイムの無期懲役の収監が確定したアインとオーウェンは、その後、神殿騎士団の兵舎につれていかれ、そこでいくつかの術式をかけられたうえで、レベルとスキルを返還されて解放となる。

彼らが今後どのように振る舞っていくのか、まだわからない。

だが、少なくとも今までようにはいかない。

『英雄クラン』は間違いなく解散するだろうし、あの2人がこれからも冒険者を続けていく可能性は低いように思える。

「はぁ……新しい仕事を探さないとな」

連行されていく、卵やら肥料やら泥やらで、散々に汚れた2人の背中を見えなくなるまで見送り、俺はいったん自宅に帰ることにした。

太陽が空へ向かってずんずん登る午前のうちに、俺は住処すみかである武器屋にもどってこれた。

「おう、これはこれは『不死身』のマクスウェル様じゃーねぇか! もう審問会は終わったんか?」

俺の顔を見るなり、武器屋の屋根の上から筋骨隆々の、いかつい親父がニヤニヤと話しかけてくる。

武器屋の店主ウィリアム・タングステンだ。

「アインもオーウェンもすんなり認めたから。もろもろの罪状確認して、刑を宣告しておわりーって感じかな。お腹すいたんだけど、なんか作ってる?」

「うちは武器屋だぞ? おしゃれなレストランじゃねぇーんだよ。鉄屑でも食ってろ。こっちは馬鹿ドラゴンのせいで壊された屋根を直さねぇといけねぇんだ」

ウィリアムはおおきくため息をついて「今日帰ってきたら、絶対に手伝えよ」とつげると、屋根に空いたポッカリ穴をふさぐ作業に戻っていった。

おざなりに手を振って、自室にもどる。

俺の部屋。
2年ぶりに見る室内。

昨晩は事情聴取やら、ギルドへの生存報告やらでバタバタしていたせいで結局、この部屋へは帰ってこず、寝ることもできなかった。

俺は自身のベッドに近寄り、そこに″寝ている人物″を見下ろす。

「むにゃむにゃ」

気持ちよさそうにぬくぬくしてるその者。
うっすらと輝く氷のような髪で、寝顔すら人間離れしたほどにイケメンの顔立ちをしている。

「おい、、起きろ」
「フハハっ、僕は、どぅらごぉんだじょ……フハ」

寝言をもらす蒼い青年ーージークは、昨晩のドラゴン事件の関係者……というよりがっつり首謀者である。

俺が神殿騎士たちにアインの身柄を渡している間に、さりげなくドラゴン形態から、人間形態にもどって逃げようとしていたところを、俺がとっ捕まえたのだ。

俺が眠れなかったのは、昨晩のうちに、この超迷惑な人間になったり、竜になったりする、謎の生物が何なのか、本人から話を聞いたりしていたのも理由として多分にある。

聞き取りの結果、このジークと名乗った青年が人間に殺された兄弟の仇を討つために、ジークタリアスを襲ったのだと判明した。

共存できないのであれば、殺すしかないと脅したところ、″人間形態″だったせいか、簡単に俺の配下に加わるといいだしたので、一応今のところは生かしているというわけだ。

ただ、人間の時とドラゴンの時とでは、えらく態度が変わるので、二重人格という本人の弁を尊重して、今日は″大事なお出かけ″のまえに、竜としての彼もこの状態に納得しているのか聞いてみることにする。

「ジーク、起きろ。さもないとぶっ殺す」

耳元で低い声でささやくと、ジークなピクリと体を震わせ、気をつけの姿勢でベッドの傍らに起立した。

「こ、これはこれは、ご主人マスター、すみません、僕ってドラゴンなので寝起きが悪くて……!」
「ジーク、俺は寝起きが悪い人間みなに丁寧に接するわけじゃない。マリーと属性のかぶる言動はつつしめよ。お前、自分の立場めちゃくちゃ危ないのわかってるよな?」

頭をペコペコさげて、なんとも情けない感じのジーク少年。ちなみに、俺よりずっと若く見えるから一応こう呼んでいる、が、実年齢は80歳らしい。

「ここら辺か」

重罪を犯したドラゴンを、俺の眼で見極めるため、彼を連れて街のはずれの雑木林にやってきた。

昨晩は奇跡的にも死者が出ていないから、なんとか許せているが、それでもこいつも罪は重すぎる。

本当なら神殿につきだして、さっさと殺してしまうべきなのだろうが、彼の境遇にも理解をしめしてしまった手前、いまさら突き出すのも忍びない。

最後まで面倒はみよう。

「はぁ、ほんとうに厄介なの保護しちゃったなぁ」
「へぇへぇ! ご主人マスター、今日はどちらへお出かけですか? 僕がどこへでも背に乗せて飛びますよ! だから、お願いします、殺さないで!」
「……お前さ、竜の時はもっと威厳ある感じじゃなかったっけ?」
「そうですけど、竜は自分より強い者に従順な魔物なんです、へぇへぇ。強さにうるさいので、竜の群れなんかは、最強のボスのもとによく統率が取れてるわけでっせ」
「なるほど、ドラゴン本人から聞くドラゴン社会の事情か。つまり、今は俺のほうが強いって昨晩の戦いで認めたから、従順にしたがってると?」
「その通りです! へぇ!」

人気のない軽い雑木林を適当たち歩き、ちょうど良いスペースを見つけた。

俺はうなづき、ジークに竜になるよう命じる。

ジークはペコペコうなづき……急に顔つきを鋭いものに変えると、背中から皮膚をやぶり、思わず眉をひそめるグロテスクな骨格をまず展開しはじめる。

そこから筋繊維などを急速に構築していき、立派な翼をたずさえた蒼き竜へと変貌をとげた。

「昨晩、確認したが、もしかしたら適当に返事してたかもしれないから、ゆっくりチェックしていくぞ。まず、ジーク、お前はなんで人間になれたり、竜になれたりする?」

「フシュルぅ、オレが死にかけの人間の体を乗っ取ったからだ。敵を倒すには、まず敵を知らなくてはいけない。人間になるのは、手段のひとつに過ぎなかった」

ジークの話によると、普段の状態は人間形態がスタンダードであるらしく、そのせいで人間に引っ張られたゆるい性格と、竜本来の性格に近似した本来の性格をあわせもつ、二重人格者になってしまってるらしい。

『表』が残念で、『裏』がドラゴンだ。

人間の体が主であるため、ドラゴン形態になるには相当な魔力を消費するらしく、竜人形態は燃費とパワーの面から考えて優れた発明だとか。

おおまかにジークの謎と、彼が出来ることを頭にいれて、彼が本当に従順な配下になってくれたことに、ある程度の安心を得る。

「で、だ。最初の質問に戻るんだが、お前、復讐がなんとかって言ってたけど、それはもういいのか?」

「フシュルぅ、。オレの兄弟たちを殺した存在には必ず鉄槌をくだす」

「ふむ、それじゃ、やっぱり共存できないかぁ」

ご主人マスター、オレがアンタの配下についたのは、今ではもう″人間は兄弟の仇ではなくなった″、という事と、相手を間違えて襲っていた可能性について大変な責任を感じているという事があげられる。ありていに言えば、すごく反省してる」

ジークは10メートル級の体を小さく縮こませて、しゅんとして言った。

なんだ、彼の兄弟を殺したのは人間じゃなかったのか。
そういえば、って情報を提供したら、何か察したような顔してたけど……それと関係あるのかな。

「フシュルぅ、まあ、そういうわけだ、ご主人マスター。竜に与えられた時間は長く、人の時間はひどく短い。このジークは、ご主人マスターが死するその時まで、付き従い、昨晩の過ちを清算しようとおもっている。改めてよろしく頼むぞ」

「おう。よろしくな、ジーク。えっと、復讐とかするんだったら何か手伝おうか? 敵は人間じゃないんだろ?」
「フシュルぅ、大丈夫だ。オレの読みが正しければ相手も長い時間を生きる存在。いまは気長に時季を見定めようと思う」

となるとジークはジークで、勝手にやるべきことをやるって事か。

「む、ご主人マスター、そろそろ時間なんじゃないか?」

ジークは大きな手のひらに乗せた懐中時計に、竜の眼をギョロっと向けてつぶいた。

昨晩の血溜まりのうえで凶悪に高笑いしていた蒼き竜と、同一人物とは思えない絵面だ。

どっちが、ジークの素なのかわからないが、今の物腰柔らかいジークのほうが俺にはだいぶ好印象だ。

こっちが本来の彼なのかもな。

恨み、辛みがつのると人に信じられない変化をもたらすのは、オレもよく知るところ。ジークは竜だけど。

きっと、ジークも苦しい時間に変貌してしまったんだ。

「ふふ、よろしくな、ジーク♪」
「? ああ、よろしく頼む、ご主人マスター

なんだか、この竜とは仲良くやっていけそうな気がした。


⌛︎⌛︎⌛︎


ーーカチッ

時刻は12時15分。

ジークに貰った懐中時計をポケット空間にしまって、神殿の前で待つ。

「約束の時間のよりずいぶんと早いけど、マックスったら、そんなにわたしとのお出かけが楽しみなのかな?」

背後から聞こえる声に振りかえる。

心地よい春の日差しをうけて陽に染まる黄金の髪。
澄んだ青空に、勝る透明感をもつ蒼翠そうすいの瞳。

いたずらな笑顔をうかべるマリーに、思わず尊死とおとししかけるが、なんとな持ち堪える。

「マックス髪切ったのね! 昔のマックスに戻ったみたいだわっ!」
「まぁ、流石に長かったからね……んっん、聖女様、それじゃ、聖女様の朝起こし係を3ヶ月サボったばつ、全90回のうち最初の一回をはじめよーーーーましょうか」

今回はあくまで罰の一環。

故郷をアルス村にもつマリー・テイルワットの幼馴染ではなく、仕事をさぼった者と、それを罰する聖女という関係だ。

これは決して私的なデートなんかじゃない。

よからぬ噂が立てば、俺は寝首を狙われ、昼時を狙撃に怯え、ジークタリアス中の男に追いかけられ、殺される恐怖に耐えながら生きなくてはならなくなる。

「ふふ♪ まるでデートみたいだね、マックス」
「ゲフンっゲフンっ! ……おたわむれを聖女様」

俺ごときでは、幼馴染という立場をつかっても彼女と対等にはなれない。

だが、ただひとつだけ。

ずっと昔に抱いた気持ちくらいなら、唯一成し遂げようとする事は許されたっていいはずだ。

″俺がマリーを守る″

たとえ、俺が胸の奥に秘める想いが伝わらずとも、ただかたわらで寄り添い、守り続けられればそれで俺は満足だ。それ以上は望まない。望めない。……望んではいけないんだ。

「えー、これはデートだと思うけどなぁ。ほら、だってアルス村にいたころは、よくデートごっこをーー」

「ごほッ、ゴホッゲフゲフン゛ッ! ……さぁ、行きましょう聖女様。パンケーキが逃げてしまいますよ。街はいま大変な状態なので、さっと行って、さっと帰りましょう!」

ぴょんぴょん跳ねて可愛いばかりで、なかなか歩きださないマリーの背中を、恐る恐る手で押す。

こんな時に呑気すぎることだが、聖女が普通にしていることは、それだけでジークタリアスの巨大なエネルギーとなるから、これも立派な復興支援ではある。

俺たちは街のみんなの視線を集めながら、パンケーキ屋を目指し、荒れた通りを歩きだした。

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ドラゴンにところどころ思うところがあると思いますが、許してやってくださると嬉しいです
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