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【完結】努力の怪物が指パッチンを極めたら世界最強に〜スキル【収納】の発動を指パッチンに″限定″したら無限の可能性が待っていた〜

ノベルバユーザー542862

第21話 ジークタリアス:異端者と敗走の討伐戦線


凄まじい冒険者に会ってしまった!

ライトとボルディは興奮をかくせず、お互いに顔を見合わせた。

「凄い、ボルディ、あの人は本当に凄いぞ! あんな冒険者がいたなんて知らなかったぜ!」
「ライトは『上とは見上げるものではなく、いつか辿り着くものだ!』って言って、ドラゴン級冒険者でさえ、全員の顔と名前知ろうとしなかったからね。あんな凄い人がいるなんて、やっぱりドラゴン級はレベルが違うよね」

ボルディは背中でスヤスヤ眠るグウェンを見つめホッと息をつく。

ライトはそれを見て、自分達の危機にさっそうと現れた真の英雄の姿を思い起こしていた。

使い古された装備でさえ、貧相という印象はなく、むしろ手練れのベテランというオーラが強かった。

自分もいつか、ああなりたい、とライトは初めて本当の憧れを胸にいだいていた。

「あの『あかけもの』をたった一撃で倒したんだ! なんていう人なのか、名前を聞き忘れちゃったけど、あれだけ凄い人なら、冒険者たちに聞けばすぐにわかるはずだ!」

ライトとボルディは、嬉々としてこの報告をするのを待ちきれないといった風に笑いあった。

「ぉーい、まーー、て、ーーま、てーー!」
「ん?」

ふと、ライトとボルディは背後から聞こえる小さな声に足を止めた。

振り返ると、目を見開き、驚いた。
なんと、あのドラゴン級冒険者が追ってきているではないか。

それだけではない、彼の体が霞のように薄くなってしまっている。

「え!? ど、どういうこと!?」
「これもあの人のスキルなのかな……いったい何の意味が……」

走りながらその男は、なにかを伝えようとしているのだと、ライトとボルディは敏感に察知した。

やがて、彼の姿が完全に霧散して、背景に溶けてしまったあと、大きな声が聞こえた。

「マックスだ! 俺の名前は、マクスウェル・ダークエコーだ!」

「声でかッ!?」

森全体に響き渡るような轟声に、びっくりして2人は尻餅をついた。

目の前で姿を消した男。
そのあたりをキョロキョロと見渡すが、ライトにもボルディにも彼の姿を見つけることは出来なかった。

「マックス、マクスウェル・ダークエコー」

ライトは胸が締め付けられるような、つい先ほど味わったばかりの喪失感を感じていた。

その名前には聞き覚えがあったからだ。

いつだったか忘れたが、数ヶ月前、ジークタリアスには有名な冒険者が飛び降り自殺したとのニュースが流れていた。

ライトたち『キリケリの刃』は、ひたすら上に行くためにクエストを回していたので、あまり多く気を止めなかった事件だ。
だが、その時、自殺した冒険者の名前がマクスウェル・ダークエコーだった、というのは何となく覚えていた。

「ぇ、それじゃ、幽霊が僕たちを助けてくれたのかな……?
「……わからない。とにかく、ここで考えても仕方ない」

ライトは立ちあがり、自分達が今しなくてはいけない事を成すために、ギルドの拠点への帰路を急いだ。


⌛︎⌛︎⌛︎


ライトたちが、ギルドの前線拠点についた時、そこにはもうほとんど冒険者は残っていなかった。

討伐戦線を形成するために皆、出払っているのだ。

ライトたちは『黒いロザリオ』を取ってくるようお使いを頼んだきた、あの男の待つ場所へ向かったが、そこに彼の姿を見つけることは出来なかった。

どこに行ったのか、探してみるとライトたちは、神官数人が、治療用の簡易神殿から出てくるのを見つけた。

「あの! ここら辺を怪我していた人って知りませんか?」

ライトは肩を指差して年老いた神官に問いかける。

「む、もしかして、こやつの事か?」

年老いた神官は、背後にひかえる若い神官へ一言、二言だけ告げると、車輪のついた担架に横たわる、あの男を簡易神殿のなかから連れてきた。

ちょうど、彼をどこかへ運ぶ予定だったらしい。

ライトは笑顔で男のもとへ、駆け寄った。

しかし、おかしな事に気がついた。

「え、あれ……息してない……」

まったく、胸が動いてないことに動揺して、ライトは自分達が遅かったのだと悟ってしまった。

男は、持ち堪えられなかったのだ。

「負傷している彼を、冒険者が報告してくれましてね。″治癒系統のスキル″で癒しを与えたのですが、どうにも回復してくれませんでした。それどころか、、そのまま亡くなってしまったのですよ」
「そんな、治癒が効かなかったんですか……?」

ライトは男がグウェンの〔いやしの詠唱えいしょう〕を嫌がっていたのを思い出した。

「こいうことは珍しいですが、決してない、という訳ではないですね。若い冒険者の方、よく覚えておくといいですよ。女神ソフレトへと信仰が極端に薄い、あるいはとたびたびこのような事が起こったりします」

年老いた神官は、死者へ向けるにはあまりにも冷たい眼差しで、担架で横たわる男を見下ろして言う。

「恐らく、この男は『異端者いたんしゃ』だったのでしょう」
「『異端者』……! そんな、この人が、異端だったなんて。僕、全然、気づかなかったです」

ボルディは怯える眼差しで、眠る男を見つめていた。

ライトはそれを見て、その昔、『拝領はいりょうの儀』で″神官長″から聞かされたありがたいお話を思いだす。

この国を守り、平穏を与えてくれる女神ソフレト。
彼女以外に、真なる神は存在せず、また存在してはいけない。
異なる神を信仰する者がいたとしたら、即刻、神殿勢力へと報告をすること。それは、共和神聖国を転覆させる危険を持つ『異端者いたんしゃ』なのだから、と。

ライトは自分が途端におそろしいモノに関わったと思い、背中から闇に飲み込まれてしまうような、不安に襲われた。

「若い冒険者たち、君たちはこの男と面識があるのかな?」
「っ、い、いえ! まさか、あるはずないです!」

ボルディは怯えた様子で叫んだ。
年老いた神官は、目をスッと細め、ボルディの頭の横にできた、いまだ癒えきらない傷に″右手″を当てた。

すると、ボルディの頭の怪我が、白雷はくらいでおおわれて、瞬く間に再生してしまった。

ライトは、グウェンの〔いやしの詠唱えいしょう〕とよく似たスキルを、年老いた神官が持っているのだ気づく。

でも、手を触れるだけで治癒するなんて、凄い人なんだな……。

ライトは強さにしか興味がないゆえ、この手のスキルにはうとかったが、それでも目の前の神官が熟達の使い手だとは、よく理解できていた。

「ふむ、拒否反応はない……いや、すまないね、傷を癒そうとしただけだよ。それでは、また戦いに戻りたまへよ、若い冒険者たち。女神の祝福があるうちは、与えられた【クラス】ーー役目をまっとうするんですよ」

年老いた神官はそう言って微笑み、背後に控えた若い神官たちを連れて、担架をどこかへと運んで行った。

「ライト、はやくアレ捨てちゃった方がいいよ」

神官が去るなり、ボルディがライトに耳打ちする。

ライトはうなづき、ふところをまさぐった。
しかし、目的の『黒いロザリオ』が見つからない。

異端にかかわる危険な品ゆえ、捨てようと考えたが、どうやらどこかへと落としたらしい。

ライトはそう思い、ホッと息をついた。

「そういえば、必要とする者が現れるとか言ってたけど……」
「ライト、気にしない方がいいよ、あの人は『異端者』だったんだから」
「……そうだな。よし! それじゃ『赫の獣』の討伐報告を一足先にしちゃおうぜ! あの凄い人ーーマクスウェル・ダークエコーが倒してくれたんだって!」
「幽霊かもしれないけど、幻じゃないよね。僕の頭の傷は間違いなく、グレイグにつけられたものだし」

気を取り直すライトとボルディは、拠点に中枢にある司令室へと向かった。


⌛︎⌛︎⌛︎


その日の夕方、ライト達は食堂テントの裏、資材置き場でいじけていた。

「誰も信じてくれないなんて、酷いよ……うぅ」
「ちょっとくらい、取り合ってくれたっていいじゃねえかよな、ちくしょっ!」

ライトは子供の自分たちの話を、まったく間に受けず、話を聞かないギルドに苛立っていた。

石を投げて木箱にぶつける。

グウェンはそんな彼らを見て、申し訳なさそうに顔を伏せた。

「わたし、自分を助けてくれた人のことも覚えてないなんて……マクスウェルさん、きっと本当にいるんだよね?」
「いる! 幽霊でもなんでも、凄い人だったに違いないさ! 少なくともあの『力』のアインより、ずっと英雄らしいよ、だって『赫の獣』を一発で倒しちゃうんだぜ!」

ライトの叫びは、資材置き場に虚しくこだまする。

ーーブゥォォオン

日が沈み暗くなりはじめた頃、討伐戦線の帰還を知らせる角笛の音がライト達の耳に聞こえた。

ライト達は急いで簡易拠点の正門へと向かった。

自分たちは『赫の獣』が死ぬ瞬間を見たんだ。
それを成した、凄い冒険者に会ったんだ。

そう伝えるために、少年たちは駆けたはずだった。

「ッ」

しかし、正門から帰ってきた冒険者たちに会っても、ライトたちの口から一大ニュースが声高に叫ばれることはなかった。

「無理だ、無理に決まってる……あんなの、誰が討伐できるんだ……」
「ぅぅ、パスカル、ぅぅ……」
「『氷結界魔術団』は終わりだな……リーダーが死んじまった……」

暗い雰囲気の冒険者たちは、多くのものが絶望を顔に宿し、ある者は鼻をすすり泣きじゃくり、ある者は失った悲しみを向けてもう次へと思考を向けている。

ライトたちには、初め何が起こったのかわからなかったが、数人の冒険者に話を聞くと状況を飲み込むことができた。

いわく『赫の獣』は群れをなしており、その一体でさえ真正面から戦っても【英雄】ひとりの手にあまるほど強力だということが、今日の戦いでわかってしまったのだとか。

さらに、敗走のためにドラゴン級冒険者の『氷結界ひょうけっかい魔術師まじゅつし』パスカル・プリンシパルが戦死したのだと聞いてしまった。

「グレイグは、たくさんいる……」

ライトはそうつぶやき、皆が疲れ切った顔な理由わけを察することができた。そうすればもう、楽観的に『あかけもの』は倒された、などと喋れるはずもなかった。

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