【完結】平凡クラス【槍使い】だった俺は、深海20,000mの世界で鍛えまくって異世界無双する

ノベルバユーザー542862

第48話 深海湾拳闘トーナメント 四


リング上で2人の男が向かい合う。
片やタンクトップを着た黒髪のチャラ男、鋼の肉体をもつ『気まぐれの王』リーシェン。
片やリーシェンの倍近くある、たくましい筋肉を誇る『ザ・モンスター』金田。

どちらも強い強いと噂され、固定ファンがいるほどの拳闘者である。

「へえ、あんたが『ザ・モンスター』なのか、はは」
「ぬっ、何がおかしい」
「いや、ごめん、笑うつもりはなかったんだ。けどさ、君が、金田がモンスターを名乗るなら、アルカディアはモンスター王国になっちゃうと思って。道端で野垂れてるホームレスも含めて」

リーシェンは小馬鹿したように、涼しく笑い、黒い長髪を掻きあげてゴミを縛る。
呑気な挑発に、歳上であり、武闘家としてのキャリアも長い金田がブチ切れた。

「さんをつけろよ、デコ助野郎ォオ!」

金田の筋肉がもりもり膨らむ。
これがモンスターの由縁。
怪力無双の筋力である、
そこから繰り出される重厚な正拳突き。
喰らえば致命傷はまぬがれない。

だが、リーシェンはつまらなさそうにため息をついて、足首の動きだけでかわした。

ありえない、を簡単に体現して見せたリーシェンに、金田の顔が蒼白に染まる。

「大先輩さん、あんた才能ないから、もう武闘家を引退したほうがいいみたいだぜ」
「ふぐあ?! こ、この、クソ若造めが……ッ!」

憤り、激昂した金田は『ザ・モンスター』の真の実力を解放するために、思いきり力む。そうする事で、負担が高くて、ふだんは描けていたリミッターが解除されるのだ。

「あっそ。でも、それって待つ必要ないよね?」
「? な、何を──」

金田のほうけた声。

その瞬間、リーシェンは回し蹴りで、金田の腹筋を鋭く突き刺した。
目を白黒させ、金田は苦しみにかすれ声をもらす。的確に打ち込まれた足は、遠心力に任せて、巨大な筋肉の塊を、ポイッとゴミのようにフェンスの向こう側へと吹っ飛ばしてしまった。
リングの上には体幹をまったく乱れさせず、綺麗に回し蹴りの残心を行う余裕をみせて、静かに息を吐くリーシェンの姿があった。

「モンスターを名乗りたいなら、超能力者くらい倒してからにしたらどうだろう。もっとも金田さんみたいな、才能のないザコには無理だろうけどね」

リーシェン爽やかな笑顔でそう言うと、2階観客席に飛び上がってのぼり、退場した。

「おおぉおー! 流石は『気まぐれの王』、たった一撃の蹴りで勝負をつけてしまったあー!」

司会の実況に、リーシェンファンの女子たちと、荒くれ者たちが大歓声をあげる。

「ラナ、どう思う?」
「……あいつ、超能力者じゃないんでしょ?」
「みたいだな」
「だとしたら……」

ラナはリーシェンの消えていった2階を見つめ、表情を曇らせた。

──その後、第一回戦は着々進んだ

第二回戦が始まる前に、30分ほどの休憩がはさまれた。
その間に事件は起こる。
なんと第二回戦に進んだ者たちが、続々と棄権し始めたのだ。第二回戦進出者は16名だったのに、人数は8人まで一気に減ってしまった。
俺は特に仲良くない、観戦席のおっさんに何が起きているのか尋ねる。

「んなもん、第一回戦の前半戦でハードルを上げすぎたんだろーが。あれのせいでリーシェンもやる気になっちまって、ほかの強豪たちも本気をだしちまった。もうこのトーナメントは″真の強者″しか受け付けない魔境になっちまったのさ!」

おっさんはニヤリと笑い、こんなトーナメントは久しぶりだ、と高ぶりを抑えられないように鼻を鳴らして笑った。

「まあ、決勝戦まで辿り着きやすくなったのは嬉しいが」

普通に考えれば、勝てる相手に連戦するのは非効率だしな。運が良かったかもしれない。

「はははっ、さっすが、あんちゃんだなー! 最初にあんたの背中を叩いて、わかったてたぜ、あんちゃんはほかの連中とは一味も二味も違うってな!」
「そいつはどうも。なんなら、俺に全額賭けておいてもいいぞ」
「あったりめーよ! あんちゃんにオールインさ!」

おっさんは気分良く馬鹿笑いする。

すぐ後、ちょうど30分の休憩時間が終了したらしく、また司会が場を盛り上げるべく声を張りはじめた。
掲示板に表示されたトーナメントカード表を見る限り、俺は第3試合目だ。
では、次の試合は……おや、あの前チャンピオンとか言うクムゴロシと、我が相棒ラナとの戦いではないか。

俺はラナの元により、肩に手を置く。

「何、心配してるの?」
「まさか、全然心配してない……あ、いや、やっぱりしてる」
「はは、なにそれ。わたしなら大丈夫だってば。こう見えてもお姉さんはドラグナイト・プリンセスなんだぜ?」

ラナは歳上の魅力を見せつけるべく。前髪を息で吹きあげ、指を顎にそえてカッコつけて見せる。イケメン過ぎて辛かった。

「はいはい、それじゃ、頑張れよな」

俺はおざならに手を振ってラナをフェンスの向こうに送りだした。

「急遽、大量の棄権者の発生により、はやくも今シーズンのトーナメントが準々決勝に突入してしまいましたー! 今宵はレベルの高すぎるバイパーバトル、誰が今シーズンのチャンピオンに輝くのか最後まで目が離せません!」

司会の解説が場内に響き渡るなか、俺は視線を感じる方へ、さりげなく目線を動かす。
人混みの向こう側に、黒いコートの背中が消えたいくのが見えた。

「やれやれ……面倒だが、変な事される前に片付けておくか」

俺はラナの健闘を祈るため、ソフレト教の聖印を胸の前で切って、人混みの向こう側へと足を動かした。














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