忠誠をささげた騎士団に斬り捨てられた雑用係は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で最強となり成りあがる
第29話 捕獲作戦 その3
「その力、知っているぞ。魔術師だな貴様」
ガレットは剣を手にとると、強気な口調でゆっくりと間合いをはかるように歩きはじめた。
俺は扉をしめて、足元の氷を移動させて出入り口を完全にかためる。
これですこしは時間が稼げる。
「俺が不死鳥騎士団第二隊伍長騎士ガレット・ハリケンとわかっての狼藉か。答えろ、魔術師」
「お前の罪を焼きにきた」
俺は射程にとらえるために歩いて近寄る。
ガレットは「騎士を舐めるな!」と気合いといれた雄叫びと共に鋭い突きをはなってきた。
俺は足元の氷を移動させて、ガレットの踏み込んだ足を凍らせる。
そして、2歩下がることで剣の間合いから紙一重で離脱した。
「なっ!? 魔術とは詠唱が必要なのではないのか! こんなに素早い展開能力聞いてないぞ…!」
「魔術師にもいろいろいるというだけだ。同じような騎士でも、誇りを抱く者と、弱者をなぶることを趣味とする鬼畜がいるようにな」
ガレットは膝までのぼってくる氷に焦りの表情をうかべる。
彼はそのまま「ええぃ!」と声をあげて、氷の根本を剣で叩ききった。
彼は片足を膝から下凍らされた状態で、俺から間合いをあけて本棚に寄りかかった。
されも、剣先だけはむけて来ている。
「子どもなのに、なんたる威圧感……これが魔術師だとでも言うのか……」
ガレットは半ば戦意喪失してるようだった。
「いいや、だが、こんな所で殺されるわけにはいかん。魔術師、貴様の望みを言え! いったい何の恨みがあってこんな事をする!」
「罪を焼きに来たといってるだろう」
俺は2年と半年前、ガレットが不死鳥騎士団の雑用係を斬り捨てた事実を言い当ててみせた。
「……っ、そんな、まさか、あの事件を知っている、というのか?」
「ああ。密告者がいた」
当然、嘘である。
「ミラーか? クベイルか? まさか、団長? いや、だが、そんな事をして何の得がある……?」
ガレットは冷や汗をながして、頭をフル回転させているようだ。
「俺は正義の執行者だ。お前たちの悪逆非道を焼きにきた」
俺がそう言い、手のなかにたもっていた火炎の球を投げるべく腕をもちあげる、
すると、ガレットは「待ってくれ!」と地面に頭をこすりつけてきた。
「違うんだ! あの頃はたしかに私も未熟だった! 自分の身勝手のせいで、感情にまかせて、献身的な働きをしていた雑用係を殺してしまったかもしれない!」
かもしれない?
何言ってんだよ、こいつ。
「だが、私は変わった。見てくれ、今では私はハリケン家の当主なんだ! 私はたくさんの騎士見習いたちを訓練をして、使用人たちの生活も支えてる!」
「ほう」
「心を入れ変えたんだ! 私の妻を見ただろ? 先々月結婚したばかりだ。彼女は平民の身だが、私はミラーやクベイルとは違って彼女を劣等な人間だなんて思ってない!」
ガレットは頭をあげて、涙を垂れ流しながら懇願してくる。
「頼む……! 彼女のお腹には子どもいるんだ! 私には家族がいるんだ、家がある! 今さらそんな昔のことを持ち出されても、どうしようもないじゃないか!」
「……死んだ者の痛みは? お前が殺したあの奴隷はいまも地獄で呪っているかもしれないぞ」
「死者は痛みを感じないだろう? 確かに殺した。だが、それで終わりだろう? 不正を暴きたいなら、いいだろう。認めるさ。だが、反省してるし、後悔もしてるんだ。許してくれよ。そもそもお前には直接的に関係ないだろう……!」
ふざけんな。
「それは、お前の都合だろうが」
完全にブチギレてしまった。
どこまで身勝手なんだ。
あれだけよ理不尽をおかして「もう終わったことだろう?」だと?
俺は膝を折るガレットの顔面に、火炎球を押しつけてそのまま地面に張り倒した。
「アァ、アアア゛、ア゛ァア!! 焼けるぅう、ぅう!、ぁがあああ、」
ガレットの顔を焼き、俺は残酷な衝動をそのままに剣を拾って片口に思いきり刺した。
金属の剣身をつたって、冷気を送り込み、傷口を内側から凍らせて凍傷をおわせる。
そうして、しばらくいたぶってやるとガレットはすぐに「ごめん…なさい、許してください……」と泣くだけの人形にかわった。
扉の外が騒がしくなって来た。
これ以上は長居できない。
俺はそう判断してボロボロのガレットを連れて、窓を突き破り屋敷をあとにした。
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